《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百九十二話『平和の世へと』

______小さき頃、父上へと聲明した意思表示。

我ながら齢八歳にして大膽な事をしたと思う。間違った事柄は正さねばならない。未來のエン・グレイス、そして世界を安寧の世へとうためにも。

今思えば若さ故の正義だったな、と失笑が出てしまう。

あれから妾は十と言う年月を和平のためにいてきた。しかし事態は解決されない。我妹であるエルミアや臣下である親衛隊達は我が意に賛同し共に行をしてくれていた事は救いだったと心底思う。

「人間と我らが共存出來ぬと分からぬか、エレンミアよ。」

「城でのうのうと過ごす父上には分からぬよ。」

戦場にて幾ばくか仲裁を努めた。そのおかげか両方はを流さずにすんだ戦もあった。

「戯けた事を申すな。其方が行っている事は國賊と同じ事ぞ。娘だからと見過ごしてはいたが、貴様は行き過ぎた。辺境にて頭を冷やせ。エルミアよ、お前もだ。」

「妾がその指示に従うと?」

するとグリフィズ王は片手を上げる。すると、王の尖兵達がエレンミア達を囲むように剣を向けた。

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「お姉様、」

エルミアは腰に差すレイピアの柄へと手をおこうとする。

「待て、エルミア。父上、此れはどう言う事だ?」

「見ての通りだ。其方らの活躍は度が過ぎたのだ。人間側にも貴様らを支持する組織が出來ていると聞く。いずれ、第三の勢力として戦爭へと加わる危険がある事が分からぬ程、貴様は戯けではなかろう。それだけはエルフの長として阻止せねばならぬのだ。」

父、グリフィズの言わんとしている事は分かる。しかし、止まらぬわけには行かないのだ。グリフィズ王の言うとおり、なからずだが同志が集っている。これはひとえに此れまでの果がした結果だ。

「阻止とは何を言っているのですか?妾らは戦爭を止めるべくしていている。民達を傷つけ、兵達を戦場にて無闇に散らせるなど言語道斷。平和の世に戦ごとなど不必要。何故、其れが分からない。」

「ならば武を捨て、人間の元へと丸で和平を結ぼうと申すか?たちまち我らエルフは人間による武力支配をけ、數多の同胞達が奴隷の立場へと墮ちる事となる。」

グリフィズ王こそが正論なのだろうが、其れでは前進しない。戦國の世を終わらせるにはきっかけが必要なのだ。

「だからこそ、妾らが中立を取り、和解の席へと両國を立たせてみせる。」

グリフィズ王は鼻で笑うとエレンミア達を尖兵達により拘束させる。

「お前の掲げる理想とやらは聞き飽きた。これ以上場を掻きされては敵わん。辺境の地まで連行しろ。」

兵達へと連行させられるエレンミアとエルミア。間の外にて待機をしていた親衛隊も共に辺境行きの馬車へと連れられる。

「お姉様、良いのですか!」

エルミアは縄にて防がれていた口を無理やりとこじ開け、エレンミアへと問う。エレンミアは目を閉じ、首を橫に振った。

「言い訳がなかろう.......しかし、妾の我儘で妾に付き従う臣下の家族を巻き込みたくはないのだ。」

自分に付き従う騎士達にも家族はいる。彼処で暴れる事は可能だった。しかし、其れを行えば臣下の一族はもろとも処刑とされることとなるだろう。

「我らはエレンミア様に付き従う騎士!正道を進むには犠牲は付きだと心得ております。エレンミア様の描く夢の為ならばこの命、我らはとうに捨てる覚悟は出來ております。」

周りも一人の騎士の意見に賛同し、心臓へとを當て、エレンミアへと真なる忠誠を誓う事を宣誓する。

「馬鹿者が、」

エレンミアは極まって涙を流しそうになる。しかし、を抑え皆へと告げる。

「妾の為に命を捧げるな。お前達は何の為に戦う。妾か?名譽か?其れとも己自の為か?違うだろう。妾らが手を取り救い出すべきは民達の尊厳と戦爭からの解放だ。」

すべてを一からやり直す。さすれば人とエルフは分かり合える。それに人間側にも同じ志の者達も存在している。このを理解できる者達が未來に増えるのであれば、平和の世は近い。

(年老いた老害どもを一掃すれば、事は足りる......しかし、それを行えば反を買い戦が両國で起きる。)

最善の策は時を持ち、より同士の者達の拡大を図る事にほかならない。それから妾らは馬車に揺られ、二週間と言う日日が立った。その間、魔力による拘束が掛けられてはいた。もちろん、食事や不浄の為に馬車を止め休息もしたのは言うまでもないだろう。

「エレンミア様、お降りください。」

魔力による拘束が外される。馬車の乗り手を務める國王直屬の部下が我らへと降りるようにと催促した。

「急かすでないわ。エルミアよ、行くぞ。」

「はい、お姉様!」

此処が辺境の地と言う訳だ。

「この地の名は何と申す?」

「エルフの地、そして人の地が最南端、“ヘイヴン”で座います。」

わざわざと位置の報を知らせるとは、妾達も隨分と舐められたものだ。

「お逃げなされる事は構いません。しかし、その時が親子との縁を別つときだとグリフィズ國王にけたわっております。」

つくづくと妾らの行を妨害したいと見える。

「ヘイブン、良き名前ですね!」

エルミアはエレンミアの心などいざ知らず、田舎の町である“ヘイブン”へとキラキラとした目で見渡していた。

(まだまだ、子供である事には変わらぬか。)

エルミアの姿を見て優しい笑みを見せる。そして親衛隊達を連れ、村へと訪れるのであった。

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