《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第二百話『霊使い/竜宮の乙』
私こと『蚩尤』をカテゴリーに分けるのならば、戦神に分類されるだろう。そして中國の神話にて初めて『反』を起こした人として記されているはずだ。
(格は邪悪とも記されていたな。私はそこまで嫌な格はしていないと思うのだがね。)
古代中國の帝であった黃帝から王座を奪う。その一點にのみに私の存在意義がある。切なる願い。王冠に託すみだ。
「どいてくれませんかしら、裏切り者の『蚩尤』。」
「そもそも君たちの陣営ではなかっただろう?」
「陣営、即ち『義理』と言う責任が生じる筈です。それを破り未知數の陣営へと味方した貴方を裏切り者としないで何と言う?」
ウォフ・マナフの危機を視認し、エルミアは加勢に行こうとした。だが、その剎那、蚩尤が城の壁を破壊し、エルミアへと奇襲を仕掛けたのだ。
「男児ならば正々堂々と決闘をするべきではなくて。」
鍔迫り合いの最中、二人は會話を広げる。城は戦いの影響から大きな被害をけていた。
(未だにこの城が崩壊していないのはあの人間の為を思ってか)
完全に両陣営が本気を出せば城もろともこの國は崩壊へと繋がる。下手をすれば大陸すらも怪しいほど被害は広がるだろう。
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(まだその時ではない、という事か。だが......私は君たちとは違う。)
全力でこのエルフ娘の命を刈り取る。橫目でルキフェルとエレンミアの戦闘を確認するが、天使側が押されている。
(ならば天使がやられる前にこの娘の命を奪うまでだ。)
エレンミアと同時顕現したエルミアを殺せばこの戦いは我らの勝利と言っても過言ではない。すでに即死の魔眼を保有するバロールは倒れた。恐るものはエレンミアを除いてはいない。
「勝利こそが全てだ。そこに正義も悪もない。」
レイピアを弾き、二槍による突きをを放つ。
「甘いっ!!」
腕につける鎧、籠手を巧みに使い雙撃をけ流す。そして蚩尤のへと蹴りをれ距離をとるエルミア。
「私と君は凡人だ。けれども一つだけ違いはある。」
槍の構えをとり鎧の奧底で小さく嗤う。
「人と神という絶対的な差だ。」
しかしエルミアはそのセリフを聞き冷酷な視線で蚩尤へと告げる。
「神は人に殺されるものですよ。」
魔を行使する為にレイピアとは反対の手を下へと向ける。そして詠唱を口にしつつ蚩尤へと向け走り出した。
「風のよ、我このに風の加護を與えたまえ『シルヴェストル』」
レイピアの鋭い一撃が蚩尤へと襲う。しかし蚩尤は上半を後ろへと倒し、それを完全に避ける。だが、
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「その程度でッ!」
前方へと向いていた筈の一撃が不自然に軌道を曲げ、避けた先、すなわち蚩尤の頭部を追跡するようにレイピアの剣先が襲いかかったのだ。
(風の加護、厄介なっ!!)
頭部を即座に右へとズラし直撃を紙一重で避ける。
「まだっ!!」
地面へと突き刺さったレイピアを力ずくで蚩尤の方向へと持っていく。
「舐めるなッ!!」
蚩尤は迫り來るレイピアの攻撃を巨大な剣を二人の間に出現させる事で防ぐ。蚩尤の固有能力である武生の権能だ。
「『ウンディーネ』」
巨大な剣に亀裂ができる。そして水しぶきと共に巨大剣は散した。
(霊の力ッ)
エルミアの特は魔法騎士に近い質を持ち、剣を振るいながら魔の行使を可能とする。
(奴が史実通りにバーサク狀態となれば、厄介な事になるな。)
魔力を無盡蔵に周囲から吸収する。そして稼働限界を超えた筋繊維の暴力。
「早々に葬り去る。」
バックステップを踏み、後部へと數百と超える剣群を出現させる。エルミアは驚愕に満ちた表と共に此方へと向かってくる。
「貴様に耐えられるか。」
手をエルミアへと翳すと同時に背後に構える數百と言う武群が全出される。
「く、私を殺せるとお思いにならぬ事ですッ!!」
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一本目をレイピアにて弾き飛ばす。そして二本三本と高速の剣戟によりはたき落としていく。
「っ、」ザシュ
(くっ、流石の私でも限界はありましょう!)
一振りの剣ではたき落とせる限度はある。事実、左肩へと撃ちらした剣が突き刺さる。
「『サラマンデル』ッ!!!!」
炎の加護を発させる。
「炎の柱だと.........一幾つの屬霊と契約を結んでいるのだ。」
延々と続く剣の応酬を弾き飛ばすかの様に地面から複數の炎の柱が上がる。
「だが、」
二槍を消し、五兵のの『戈』を裝備する。
(『戟』は傷の回復の依り代として失った。そして『矛』は賢狼に奪われている。殘る主武裝は三。これ以上は無駄には出來ない。)
炎の柱を無理やりと発をした為に息を荒くするエルミア。其れを見逃す蚩尤ではない。
「________逆も然り。」
先程の臺詞、”神は人に殺されるもの”というエルミアの妄 言を切り捨てる様に『戈』にて火柱を切り裂く。
「なっ!?」
驚きの表。しかし蚩尤のきは止まらない。
「神が人へと死を與えるのだ。」
エルミアの腹部へピッケル狀の長柄武『戈』が深く抉りこむ。
「ぐはっ......................容赦が、ありません、ね」
腹部を貫き、蚩尤は壁際までエルミアを叩きつける。
「非常であらねば戦ごとには勝てぬさ。」
エルミアの口からが流れ出る。そして皮げにこう口にした。
「..................貴方、格が悪いとよく言われるでしょう?」
エレンミアが去ってから隨分と外が騒がしい。
(ディアーナの気配が微弱だけどじられる。)
監されている部屋は綺麗な裝飾品や外裝などが施され比較的には暮らしやすい生活空間を作り出していた。しかしそれどころではない。
(ルキフェル達が來た。)
幾度と瘴気の短剣を用いて扉の破壊を試みるが破壊出來なかった。
(彼奴らが全てを終わらせる前に止めないとダメだ。)
エレンミアを仲間へと引き込めるかも知れない。無駄な戦闘を避けらるかもしれない。
「おい!頼む!ここから出してくれ!」
何処かで聞いているかも知れないエレンミアに対しぶ。
「クソ、」
音や揺れが加速する現狀をどうにかして打開しなければならない。しかし自分にはそれを行える程の実力は持ち合わせていない。
(どうすれば......)
椅子へと腰掛け、思考する。
ガラァ
扉が開く音。
青年は顔を扉へと向け、警戒の勢をとる。
「良かった。此方のお部屋であっておりましたか。」
薄い水の髪を持つが室してきた。青年は即座に立ち上がり瘴気の短剣を右手に顕現させる。
「そう警戒なさらずとも良いですよ。」
ニコニコとした表で此方へと近づいてくる。後ずさりながら短剣を向ける。
「やはり怖がらせてしまいますか。ですが安心して下さい。貴方に危害を加えるつもりはありません。ただ、人質となって貰うだけですので。」
「被害を與える気満々じゃねぇかよ。」
目の前のは信用ならない。そう直が告げている。
「はぁ、大人しく私の側に來なさい。あまり手荒な真似はしたくありません。」
著の裝飾品としてつけられている鈴の音が歩くたびに鳴る。
(..........あの扉から抜け出すしかない。)
彼の背後に存在する開かずの扉、正確には彼自の手により外側から開けられた扉から逃げようと言うのだ。
「無駄な真似は慎んだ方がよろしいと思いますよ。」
ルキフェルより學んだ高速歩法でこの場からの離を図ろうとする。しかし目線の先に気づいたのか辭めておけと警告をける。
「________行かせて貰う。」
扉の先へと出た青年。は殘念そうに振り返りこう告げた。
「優しさはここまでです、愚かなる人間。忠告を破った償いは貴方のでけて頂きますよ。」
先程までの顔付きとは違うに対し寒気をじる。
(あのからは得の知れない何かをじる。)
即座に長廊下を駆け出す。早くあの存在から離れた方がいい。
「誰が逃げていいと言いましたか?」
「ぐっ!?」
四肢が何かに縛られ一歩たりともその場からけなくなる。
「龍宮城の王である私から逃げようとするなど笑止千萬。一人間に遅れをとる程、この私、乙姫は落ちぶれてはおりません。」
顔をかし己のを確認すると水で出來た鎖により拘束をされていた。
(っ、この鎖の束縛.........)
瘴気の運用は多のコントロールならばできる。
バシュッ
「チッ、弾き飛ばしても直ぐに戻るのか、」
瘴気の波にて水鎖を弾き飛ばすも直ぐに再生し、拘束へと戻る。水故の特。
「貴方は貴重な人質です。先程も言いましたが、あまり貴方へとは危害を加えたくはありません。」
更に縛りに強さが増す。青年は勢を崩し、その場へと倒れた。
(クソッ、本當に役立たずだな、おれ、)
如何にも弱そうな創作にこうも容易く手玉に取られてしまう。自分の不甲斐なさに嫌気がする、
「さぁ、戦場の間からいち早くと離れましょうか。」
手を前へと翳す乙姫。
「何を言って、」
「其れはもちろん、龍宮の城へと隠遁をするのですよ。」
乙姫の全面が水面となり、そこから煌びやかな門が姿を現わす。
「ふざけるな!」
門が開門し、乙姫が自を引き摺る様に鎖を引く。
「安心なさい。しと時間を過ごせば直ぐに現世は數十と言う年月が経ちましょう。」
「ふざけんじゃねぇ!!離せッ!!」
浦島太郎の伝説で有名な通り、龍宮と地上では時の流れが違う。その為、引き摺り込まれれば最後、乙姫という人の勝利枠が確定する。
「味しい食事、宴でもてなすのですよ。何を不満に思うのです?」
「不満しかないな。俺を浦島太郎にでもするつもりか?」
しでも時間を稼がなければならない。皮気味にそう言い放ち、顔を上げると、
「っ....」
鬼の形相。れてはいけないものへとれてしまったと後悔する。
「.......」ガシ
「なにをっ、あがっ!?」
両腕、そして両足が水圧により完全に切斷される。
「うぐっ、」
表が歪む。あまりの痛さに意識が一瞬飛んだ。
「.....その名を口にしたな、人間。許さぬ、許さぬぞ。男故に丁重な人質として扱おうとしたが、やめだ。お前には家畜以下の洗禮を我が居城にてけて貰う。」
口調が崩れ、ゴミを見るように自の存在を見下す乙姫。
「.......なんだ、図星かよ、くく。」
瘴気の短剣を解除し、四肢が徐々にだが再生しつつある。
「お前のみは大方歴史の改変か元の世界への帰還なんだろ?特に前者の方になると浦島太郎との邂逅を無かった事にしたいとかだろうしな。」
乙姫の表が更に暗くなる。
「にる発言ですね。その全てを見かしたかのような妄言。あの人間もそうだった。貴様の様に自の視點が全てだと信じている愚者。実に不愉快です。」
乙姫は水鎖をり青年を立たせる。
「そうだ、言い忘れていた事がありましたね。」
完全に再生した四肢が再び弾け飛ぶ。
「うがああああああああああ!!」
側からの破裂。尋常ではない痛みが襲う。
「ふふ、再生出來ない様、特殊な技法用いますね。」
糸を引く様に片手で何かをる仕草をする乙姫。
「うっ、ああっ!」
裂けた四肢から水飛沫が舞う。再生がされると同時に再生先が破壊されるのだ。
(クソ、これじゃあ延々にこの痛みを味わされるっ!!)
「それでは行くとしましょうか♪」
鎖を引き門を通る為に歩き出す。
(萬事休すか.......)
を引きずらせ、目を閉じる青年。
「__________吾輩の同志を置いて逝け、下郎。」
助けが................間に合った。
「遅い、ブランチェ。」
ブランチェはその臺詞を聞くと鼻で笑い、こう告げた。
「英雄とは必ず遅れて登場するだと吾輩は學んだぞ。」
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