「………………よし、大丈夫……いいよ、おいで」

「う…うん……」

先に曲がり角から顔を出し、廊下に誰も居ないかを確認したお姉ちゃんはそのまま廊下を見張りながら大丈夫と僕に手招きをする。

そしてそれを見た僕は尾や翼をに寄せ、バレないようにして足音を忍ばせて千紗お姉ちゃんの元まで走る。

そんな事を何回も繰り返しているうちに、僕達はやたらと厳重な扉の前へとたどり著いた。

「ロック解除するから、そこの柱の所に隠れて待っててね」

「分かった、隠れとく」

お姉ちゃんに指示を出され他僕は、柱のに隠れる。

翼とか尾出てないよね？……もうちょっと寄せとこう。

そしてそんな僕をよそに、お姉ちゃんは扉の橫にあるパスワードを打ち込む場所へと走り、々と認証を始める。

「カード通して……暗証番號っと…………次に網と指紋、それと……んんっ！「中央職員天霧千紗」これで聲紋もよしっと」

『本人確認完了、ロックを解除します。中央職員様、中央報室へようこそ』

扉から機械音聲が聞こえるとそのやたらと頑丈そうな扉は、上に下に、右に左にと開いていき、最終的に15枚程開いた所で薄暗い室が見えた。

か……かっ…………かっこいい！扉がいた！しかも本當に友達が話してたSF映畫みたいに！

ズゴゴゴゴゴってじの音立てて！縦とか橫とかに！凄い！かっこいい！

そんなSFチックな開き方の扉に思わず興してしまった僕の目はその時、多分すっごくキラキラして居たに違いない。

ちなみにその時僕の翼は小さくパタパタとき、尾も楽しそうに揺れていたが無意識でいてるものなので僕がそれに気がつくことはなかった。

そんな場違いとも言える僕の表と翼や尾のきを見たからか、お姉ちゃんは迫した表から一変して可らしいものを見るのようなほにゃっとした顔になる。

數秒間そんなほにゃっとした顔にお姉ちゃんはなっていたが、ハッとして顔をふるふると振ってキリッとした表に戻す。

「それじゃあ鈴香ちゃん、私が開けるまでこの部屋に居るのよ？分かった？」

「子供じゃないんだから大丈夫だよ！まったくもう」

厳重な扉の先にあった1臺のパソコンと、高さ2mくらいの四角く黒い塊が沢山ある部屋で、キョロキョロと周りを見ていた僕に千紗お姉ちゃんは注意してくる。

その心配したような聲での注意に僕は無意識でし頬を膨らませてしまいながらもぷいっとしつつ返事をする。

そしてそんな僕を見てお姉ちゃんはふっと微笑んだ。

「ふふっ♪そうだったね、一応高校生だもんね………うん、分かったそれじゃあまた後でね！」

「うん、また後で！……って一応って言わなかった！？あっ、もう扉が……」

僕のツッコミをよそにお姉ちゃんが部屋からでると扉がまた重い音を響かせて閉まる。

そして扉が閉まると室は外からの明かりが消え、自分でもなぜ見えてるのか不思議な程真っ暗になった。

一応ってなんだよ一応って…………小學生とか保育園児じゃないんだぞ僕は。

「はぁ……」

僕はお姉ちゃんの最後の一言にため息をつく、そして……

というかなんか本當にここ都市伝説とかでありそうな場所だけど…………しなら、見て回っても……いいよね？

ふんすと僕は普段じゃ絶対來れない場所を前に意気込んだ。

ーーーーーーーーーー

「─────では次に中央報室を見させて貰うよ三浦君」

「申し訳ありませんが、そこは例え田上誠一郎様でも私の一存でれる事は出來ません」

大手醫療機構の幹部である田上誠一郎という、太っている男に向かい俺は至って事務的にそう述べる。

一応、これでも俺は日醫會の報に関する最高権限者だが、あの部屋、中央報室へ外部の者をれる事は俺の一存では厳しいがある。

それ程までに現代社會への多大な混を呼び起こす可能がある報が山のようにあるのだ。

それもその山がいくつも。

だからこそ姫、鈴香をあの部屋に連れていくように陣に指示を出しておいたが……裏目に出たか。

多分だがこのクソ野郎の事だ、きっと────

「おや？ワシに見せられない事でもあるのですかな？なぁに心配はいりませんとも、ただ部屋を見るだけです。

報へのアクセス等は行いません。なんなら監視していて下さっても構いませんよ？」

やっぱりそうきたか、だがどういう事だ？

いつもなら「監視をする気か！無禮だぞ！」なんて喚き散らして報を抜き取ろうとするのに…………

やはり何らかの形で鈴香を嗅ぎつけていたか。

鈴香を見つけてそれを問題に、それからこちらで預かると言って攫う……これが最悪のパターンか……

三浦はそう田上の狙いを予想し、手を強く握り締める。

この男田上誠一郎はコレクターだ。

多數の希生、及び絶滅危懼種等を裏で輸や猟しては剝製やホルマリン漬けにしてコレクションしている。

そして奴は児養護施設から児を引き取りみものにして最終的には捨てているという、まさに人間のクズと言う様な事をながらしている。

どちらも一部の人間しか知らない事だが、表沙汰になろうとすると権力でねじ伏せている。

そしてそんな奴がもし鈴香のような存在を知ったのならば───

確実に狙われる。

三浦は攫われた鈴香がみものにされるという事態を想像し吐き気を覚えるが、その事態を回避する為にも強くその申し出を拒否しようとする。

しかし……

「それでもなりません、それは────」

「そういえば！ここ最近日醫會のここ中央本部では一部區畫が立ちり止になったりしているそうですなぁ！

もし日醫會が何か危険な実験をしていたとするならばぁ！隠すために中央報室へそれを運んだー……という事もあるのではないのですかな？」

クソっ、それが報源か…………鈴香の存在自はまだ知らない様だが、萬が一鈴香を見られないようにするためにやったのがここに來て……

どうする……！

ここでもし拒否すれば何かを隠している事を認めた事になる。そしてそれは確実に査察の口実になり、鈴香は持っていかれ一生実験にされてしまう……

どうする…………？

ここで拒否しなければ中央報室に逃げ込ませた鈴香は見つかり、こいつの餌食になる。

どうする………………

早口でそう言った田上は、ニヤニヤとした顔で苦渋の選択を強いられている三浦を見てくる。

そして三浦は─────

「分かりました。部屋を見ることは許可します。ですが機材類には絶対にらない事、これを破った場合即座にお帰り頂きます」

睨み付けるようにして田上に向かって三浦は怒りを咬み殺すしてそう言い放ち、そして田上はそれをからかうような口調で嘲るように三浦に言い返す。

「おぉ怖い怖い、それでは行くとしようか」

3人は中央報室へと歩き始める。

そして中央報室への廊下から天霧が出てきたのを目にし、三浦は強く拳を握る。

いよいよ……覚悟しなきゃならんかもしれんな。

先を歩く田上とそんな決斷を下した三浦の橫を軽く會釈して天霧が通る。

その通り過ぎた天霧の顔は悲痛なとても悔しそうな顔だった。

そして田上は彼が橫を通るのを目で追い……

「ふむ、たまにはしたもいいな」

そうニヤけた顔でボヤいた。そんな田上に三浦は本気で軽蔑した目を向け、怒りで手を更に強くにぎりしめていた。

ーーーーーーーーーー

「それでは開けますので、し下がってお待ちください」

「うむ」

三浦は天霧がやったように扉にカード、パスワード、指紋、聲紋、網、それらを認証させロックを解除する。

すると中央報室の扉は上に下に、右に左にとゆっくりと音を立てて開かれていく。

そして三浦は扉が開ききる前にき出そうとした田上の書に向かって聲をかける。

「すいません、書の方はここでお待ちください」

「ですが私は──────────」

「希クン、君はここで待ってなさい」

「…………了解しました」

希と呼ばれた書は田上にとめられ、2人は書を置いて部屋へとる。

その中はいつも通り薄暗く、扉が空いてなければ真っ暗になり何も見えなくなることは間違いなかった。

そんな報室の中を田上と共に部屋にった三浦は見渡す。

そこはいつも通り數多の報が納められた縦長の黒い箱と、中央本部にある全てのデータへアクセスできるパソコンが1臺あるのみで………………

彼の水の鱗が生えている大きな翼や長く靱やかな尾、き通るような灰の髪や明な水晶の角は部屋のどこにも見當たらなかった。

「何も無い……か、本當に何も隠してないのだな」

「…………えぇ何も、元よりこの部屋は報の為の部屋ですから。何かを隠す場所ではありません」

2人が出ていくと扉は閉められ、報室には完全な暗闇が戻った。そして……

ドスンッ

「あいてっ」

その暗闇に1つの鈍い音と共に間抜けな聲が響いたのだった。