「えーっと…………あの……その………………お菓子食べます？」

「あ、そんじゃありがたく」

「ならアタシもひとつ……」

とりあえずこの気まずい雰囲気を何とかしようと、僕は恐る恐るお菓子のった籠を2人に差し出す。

そしてそれを2人はぎこちなくながらもけ取ってくれ、暫くの間無言でもしゃもしゃとお菓子を食べていたが……

「「何か話さない!?」か?!」

「あっ……えーっと…………」

「その……」

「はぁ…………全く、このままじゃいつまで経っても進まないわね…………とりあえず自己紹介でもしてみない？」

沈黙に耐え切れなかった僕と男の子の言葉がハモってしまい、微妙な雰囲気になってしまった所での子がそんな提案して來る。

「おっ、それいいな」

「僕もいいと思います」

「じゃあ決まりね。まずはアタシからやるわね」

そして僕と男の子が賛同した所での子は咳をひとつし、自己紹介を始めた。

「アタシは柊さなかって名前よ。歳は15、休みの日には趣味で読書とか編みをよくしてるわ。んでこいつは」

「隆継って言うんだ。苗字は花桜。歳はさなかと同じ15で趣味は筋トレとゲーム、後スポーツだな。休みの日はだいたいどれかやってる。さなかとは馴染だ。よろしくな」

へー！この2人馴染なのか！

なんかパッと見、クールでハイスペックな姉と元気でムードメーカーな弟みたいなじだと思ってた。

ん？ちょっと待って。

「柊に花桜？ってもしかして……」

「はい、うちの叔父がお世話になっております」

「俺の母さんもな」

「やっぱり！2人は柊さんと花桜さんの関係ある人だったんですね！いやー僕こそいつもお世話になってます」

「いえいえ、叔父もこの所毎日楽しそうでアタシも見ていて嬉しいから。それじゃあ最後、お願いしていいかしら？」

「あっはいっ、僕は天霧鈴香です。歳は2人と同じで15歳、趣味は……掃除と料理…………かな？休みの日はお手伝いとかしてます」

の子、柊さなかさんに促され僕も軽く自己紹介をする。

ただ互いに自己紹介したからか、僕達はしだけ距離が近くなったような気がした。

「それじゃあ自己紹介も済んだし……なぁ2人共、歳も同じだしタメ口で話さねぇか？」

「僕はそれでもいいけど」

「アタシも別に構わないわよ」

「んじゃ決まりだな。で早速で悪いんだけどよ……」

わわっ！近い近い！

顔に変なのでもついてたのかな？うぅ〜……じろじろ見ないでぇ………………

隆継はそう言うと僕の方へずいっと顔を近づけてくる。

いきなり近付かれ僕は驚いてしまうが、それ以上にじろじろと見られ、恥ずかしくて思わず手で顔を隠す。

「こらっ、の子にいきなり顔を近づけない」

「いでっ！つつっ……わりぃ、ちょっと気になってな」

「ううん、気にしないで…………ふぅ……それで何が気になったの？ゴミでもついてた？」

さなかちゃんにチョップを叩き込まれた隆継は、頭をりながら僕に謝りつつそんな事を言ってきた。

そんな隆継に僕は大丈夫だと伝えながら、何が気になったのかを聞いてみる。

すると隆継はとんでもない一言を言ってきた。

「いや、元男だって聞いてたから本當に男だったのかと思ってな」

「だからっていきなり顔をマジマジと間近で見るのは流石に失禮よ」

「それは迂闊だった。本當にすまん」

「あははっ、だから気にしないでいいってば。それに2人共僕が元男だって知ってるなら………………え？2人共……僕が元男って知って──────」

僕喋っちゃった?!絶対バレちゃダメだったのに！

えーっと、えーっと、記憶を消す為にはの記憶を司る部分に強い衝撃を、つまり────

「…………脳に強い衝撃を？」

混していた僕はボソリとそんな結論を呟き、グッと握り拳を作る。

「ちょっ！ちょっとまて！何をするつもりかしらんがお前が男だった事を俺達あの三浦って人から聞いたんだよ！」

「そう！だからストップ！落ち著いて、ゆっくり深呼吸して……お願いだから…………」

三浦先生に…………？なら僕がばらした訳じゃないって事？

ゆらりと立ち上がり近づく僕に、部屋の隅に逃げて怯えた表で2人は必死にそう言って來る。

そして僕はそれを聞いてほにゃっと表を緩める。

「なぁーんだ、あーよかった……！僕がバラしちゃったんじゃないかってすっごい焦ったよー」

僕は安心したというようにをで下ろして2人を引っ張って起き上がらせる。

そして「焦ったのはこっちだ」よ！」と2人が思っている事を、お菓子をまた食べ始めた僕が知ることはなかった。

その後僕がそのお菓子を食べ終わる頃には、僕達は互いの好きな事で盛り上るくらいには仲良くなっていた。

そして僕が3つ目のお菓子に手をばそうとしたところで、三浦先生と千紗お姉ちゃんが帰ってきたのだった。

「おっ、だいぶん仲良くなれたみたいだな」

「はいっ！2人と話してるとすっごく楽しいです！」

そんな僕達がワイワイと盛り上がっている様子を見て、そう言った三浦先生に僕は満面の笑みで返事を返す。

すると三浦先生はそれは良かったと言わんばかりに僕の頭をでながらひとつ頷いて話し始める。

「それじゃあ今から大事な話を始める。3人とも心して聞くように」

「「「はい」」」

三浦先生はそう言うと端にある高そうな椅子を空いている所へ持ってきて座り、千紗お姉ちゃんから資料を貰う。

「とりあえず今日2人を呼んで鈴香が男だったということまで伝えた理由を説明しよう。鈴香は2人がそのを知ってるのは知ってるか？」

「はい、さっき聞きました」

「ならよし。何故2人にそのを教えたかと言うとだな……」

そこで三浦先生は言葉を區切り、腕を組み直して僕達を見てくる。

僕は普段見る事の無い三浦先生の鋭い雰囲気に、思わず翼をし窄めてしまう。

「2人には鈴香の學校生活を支えて貰おうと思っているからだ」

「…………なるほど、協力者に逃げられては困るから先にを教えたんですね」

「まぁな、逃げられちゃかなわん」

冷靜に分析したさなかちゃんに三浦先生はそう返すと、続きを話そうと僕の方を見てきて…………

「はぁ…………鈴香、頼むから落ち著いてくれ、気が抜けちまう」

「えっ！？あっ！すっ、すいません！」

學校と聞いて尾やら翼をぺちぺちぱたぱたとかしていた僕を見てため息を著き、苦笑いを浮かべていた。

「まぁいい。とりあえず2人なら信頼も置けるし、申し訳ないが協力してもらう。嫌なら降りてもいいぞ？」

「降りませんよ。彼1人じゃ男の子だってボロ出そうですし、なにより面白そうですし」

「そうそう！こんな機會普通なら一生に一度もない機會だからな！降りるわけない！」

意地悪そうにニヤリと笑いながら三浦先生の放った言葉に、さなかちゃんはお茶を飲みながら変わらない顔で、隆継はテンション高くそう言い返した。

「ならばよし！それじゃあ2人とも鈴香を頼んだぞ！」

「「はいっ！」」

おーおーおー……僕が割り込める雰囲気じゃないやーつじゃないですかやだー。

でも2人がカバーしてくれるなら心強いし、うん。これは僕からも。

「2人ともよろしくね？」

「任せなさい」

「任せろ！」

2人が心強い返事をしてくれて僕も思わず笑顔になる。そしてここで三浦先生が任せると言っていたのを僕は思い出し……

「…………ん？2人に任せるってことはもしかして？」

「おっ鈴香気が付いたか。その通り、2人と同じ學校に通ってもらう予定だ」

「おぉっ！」

マジか！いや凄く嬉しいけど！

えーっ！なんか今まで以上にすっごい楽しみになってきた！

僕の頭をよぎった予測通りの事を三浦先生が言い、僕は思わず立ち上がってしまう。

しかし三浦先生のびっくり発言はまだここで終わらなかった。

「2人の學校はここから近くにあるし山寄りの田舎にある高校なんだが、その學校から徒歩15分くらいのし街から離れた所に鈴香が住める家を建築中だったりもする。

ちなみに後1週間くらいで完するぞ」

回しというか仕込み凄すぎませんか？三浦先生思ってたよりも遙かに有能な人だった…………驚き。

人は見かけによらぬものとは本當によく言ったものだ…………

もはや驚きすぎて聲も僕は出せず、さなかちゃんと隆継も呆気に取られているくらいだった。

だが三浦先生の驚かせる発言は更にまだあった。

「それともう1つ、これは柊と花桜にはもう許可は貰ってるんだが…………

俺たちも忙しくなるからせっかくだしという事で、鈴香の家で3人には一緒に暮らして貰うことになった」

「「「はい？」」」

最後に特大の弾を三浦先生がプレゼントしてくれた事で、僕達は暫くポカーンとなってしまった。

その後、しギャイギャイと言い合いになったが最終的によろしくお願いしますという事になり、2人は帰って行った。

こうして僕への初めての來客は無事、終わったのであった。