《旋風のルスト 〜逆境の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方國境戦記〜》伏兵を討ち取るルストと、ベテランと烏合の衆
太が頭上から傾きかけた晝過ぎ、鬱蒼とした杉林の木々の合間から、一本の槍が突き出される。
――ブォッ!――
気配を察して咄嗟にを後方へとずらし、槍の切っ先を紙一重でかわす。私の視界の中で銀にる刃が通り過ぎていく。
私は、を後方へとスウェーさせるきと同時に、手に握りしめていた長柄のハンマー型の武を下から斜め上へと振り上げるように繰り出した。
――ガッ!――
鈍い音がして骨が砕ける。襲撃者のあごにまともに當たったのだ。
足元を踏み直し姿勢を踏ん張ると、そのまま頭上に武を振り上げて襲撃者の頭部めがけて振り下ろす。敵は頭に革製の防護をつけていたが、私はそれごと頭蓋骨を打ち砕いた。
敵の死を確認して次の行に移る。
その時の私の裝いはといえば、黒のロングスカートジャケットにボレロジャケット、足にはレギンスを履きショートブーツを履く。さらにその上にハーフ丈のマントコートを羽織る。これが私の仕事の時の定番の裝いだ。
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私は銀のショートヘアを揺らしながら大聲で周囲に伝えた。
「敵襲!」
1列縦隊で林業用の植樹林を移していたのだが、想定外の敵に待ち伏せ(アンブッシュ)を仕掛けられたのだ。
本當ならば部隊全員で一斉に警戒行に移るべきなのだが帰ってきた返事はけないシロモノだった。
「え? どこに?」
けない聲の主は何の考えもなしに私の後ろをついてきた若い男だ。ズボンに野戦用ジャケット、革製の下半用軽鎧、さらに夜戦行軍用のマントを羽織っている。
その腰には〝牙剣〟と呼ばれる私たちの國獨自の刃も下げられている。見かけだけで見ればいっぱしの傭兵だ。
でも、外側と中は大違いだ。
――ヒュッ!――
背後の彼の頭部を狙ってから弓矢が放たれる。伏兵が殺意をこめて撃ったのだ。
「うぉっ! あぶねぇ!」
重ねてけない聲が聞こえる。
明らかに私よりも年上なのに警戒心のかけらもない。下手に関わって救いの手を差しべて巻き添えを食ったらたまらない。私は彼から距離を置くことにした。
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周囲を見回し現狀を把握する。伏兵の數はそう多くはなさそうだ。一斉撃を狙ったのではなく不意打ちで一人か二人、こちら側の數を減らそうとしたのだ。
足元の手頃な大きさな小石を左手で拾い上げて軽く空中に放り投げる。そして右手に握りしめた用のハンマー型の武を後方へと思い切り振りかぶる。
そして、
「駆! 礫弾撃!」
ハンマー型武の打頭部がかすかに火花を散らす。振りかぶった勢いのまま小石を叩けば、衝撃は倍加されて銃の鉛弾のように小石の飛礫(つぶて)は飛翔する。
――ドゴッ!――
こちらに矢を放った伏兵が私に頭を砕かれてし離れた位置で崩れ落ちた。
「これで二つ」
自分が仕留めた首級を數える。警戒を緩めずにさらに周囲を観察すればそれ以上の攻撃はなかった。隠れていたのはせいぜい3人か4人だろう、草れの音が聞こえて人の気配が離れていく。別の本隊に報告をしに行くはずだ。
「まずい」
私は焦りを口にした。
伏兵に4人、そのうち2人が攻撃役、殘りの2人が連絡役と考えるなら偵察役4人に見合う規模の本隊が居ると考えるべきだろう。
當然、こちらに襲ってくる。自分たちの存在をおおやけに知られないために。
山中に潛む襲撃者――、すなわち『山賊』ならば當然の行だからだ。
私はにつけていた黒のロングのスカートジャケットの裾を翻し、ボレロジャケットの袖を振りながら、ある人を探した。9人からなる私たちを率いている部隊長だ。
年の頃は40くらい、それなりに実績を積んだ今回唯一のベテランだった。私は彼の名前を呼んだ。
「オーバス準1級!」
私の呼びかけに彼は振り向いた。白髪の混じった赤の威丈夫、頬に向こう傷がある。彼もまた張り詰めた表をしていた。
「ルストか」
彼は私の名前を呼んだ。
「狀況を確認したいんです」
「俺もお前に相談しようと思ってたところだ」
彼はそう言いながら周りにチラリと視線を巡らせた。
「お前以外は役に立たん」
ぼそりと吐き捨てる。ベテランならではの人材に対する審眼がそこには働いていた。
「3級のひよっ子か、資格だけの中のない2級の、寄せ集めだからな」
「烏合の衆ですね」
私は自的に言ってみせる。
「否定はせんよ」
私たちの會話に周りの連中は気づいていない。それぞれバラバラに周囲を見回したり呆然と立ちすくんだりしている。本來なら隊長格の人の指示を待ち勝手な行は慎むべきだ。そこには信用できるような人材はいなかった。
「林業用の植樹林の巡回警備と言う名目でしたからね」
私の言葉に彼は言う。
「安い見回り仕事、駆け出しのひよっこ連中が手を出しやすい楽な仕事――、に見せかけたんだろうな」
「やはりそう思いますか?」
「ああ、でなければこんな安仕事に俺のような人間に直接指名はかからんよ」
私たちは軍人でも冒険者でもない。私たちの國獨自の職業〝職業傭兵〟と言う存在だ。
軍人がいて、市民義勇兵がいて、3番目の存在が私たち職業傭兵だ。金銭の報酬で依頼された仕事をうけ負うのだ。
ちなみにオーバスさんは準1級で、傭兵の五つの階級の中の上から3番目に當たる。その下が2級と3級と続く。総數9人いるメンツの中で指名がかかって呼ばれたのはオーバスさんだけだ。殘りは自分から案件に応募したのだ。
ちなみに私は2級だ。
「今回の仕事は敵の出るはずのない林業用の森林地帯の見回りと言う、誰でもできる仕事――のはずだったんですけどね」
「それが一気に殉職者の出かねない高難易度の案件になってしまったわけだ」
「そうですね」
私は大きくため息をつく。苛立ちを隠しながら。
「おそらく最初からこれを狙っていたんだと思います」
「安い報酬で難しい案件を処理させるためにか?」
彼の問いに私は答えた。
「ええ、おそらく山賊か盜賊団の城が近くにあるんだと思います。うまい合に問題の存在を見つけさせて、それを正規軍かどこかに通報させる。そのつもりだったんでしょう」
「接時に生命危険のある敵対存在を探索する仕事と、単なる森林の見回り警備では、その危険度が違う。當然、設定される支払報酬額も変わってくる」
彼は苦蟲を潰したような顔で吐き捨てた。
「わかりやすい話、報酬(ギャラ)をケチったんだ。小狡い依頼主だ」
「ほんとひどい話です」
「ああ、直接ぶん毆ってやらんと腹の蟲がおさまらん」
「まったくです」
でも今はそれどころじゃない。
「それよりも急いで撤収しましょう。敵の本隊と接すればただでは済まない」
「無論だ」
私たちは頷きあった。オーバスさんが聲をかける。
「お前ら、集まれ」
その一言が私たちがいかに経験のない役立たずの集団だということを表していた。
正不明の敵の存在、依頼容と現実が著しい食い違いを見せている最悪の狀況、そんな狀況なのにそれぞれが隊長の許可も得ずにバラバラにいている。
本來ならば指示あるまでじっとかないのがセオリーだからだ。それすら守れないのだ。でも、隊長の呼びかけにすぐに集まっていたのは唯一褒められた。
果たしてこのメンツでどこまでやれるのか、嫌な予は容易には消えてくれなかった。
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