《旋風のルスト 〜逆境の傭兵ライフと、無頼英傑たちの西方國境戦記〜》傭兵ギルドと仕事探し
自宅のある街區を出てブレンデッドの街の中心地へ向かう。
レンガ造りや石造りの堅牢な建が立ち並ぶ表街路を歩いて行く。
その表通りの最も目立つ場所に立っている建が『傭兵ギルド・ブレンデッド支部事務局』だ。
3階建て屋裏付きの石造りの立派な建には、その役目柄、晝夜問わずに誰かしらが常駐している。
開始時間は朝の8時。その頃にはすでに建の周りには仕事を探す他の職業傭兵たちがたむろしていた。
背も高く、ガタイも大きい男の人たちが多い中で、小柄な私は大変目立っていた。戦うということに鋭敏な神経を養っている彼らからすれば、私が通り抜けるだけで黙っていても目線を惹くものらしい。皆の視線が一斉に集まる。私はそのひとつひとつに返すように挨拶をした。
「おはようございます!」
皆に元気よく笑顔で挨拶すれば、顔を見知った一人の男傭兵が聲をかけてくる。
「よう!」
背丈は高く髪は金髪、カーゴパンツにボタンシャツ、野戦用ジャケットに外套マント。人によっては革帽子を被る。このコーディネートは職業傭兵としては比較的定番な組み合わせで傭兵の制服と言う人も居る。
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皆の視線がチラチラが集まる中で私と彼のやり取りが始まった。
「なんだルストも例のやつ狙いか」
〝例のやつ〟――新聞にもあった軍の偵察任務の事だろう。
「はい」
ごまかして黙ってても意味ない。私は素直に認める。
「遠征しての哨戒任務は実りが良いから競爭率高いぜ」
「わかってます。だから早起きしたんです」
「そうか、ま、せいぜい頑張れよ」
「はい」
會話を終えると同時に、事務局の扉が開く。
「じゃな!」
彼はそう言い殘してギルドの詰め所へとっていく。私も傭兵たちの群れの中に混じって仕事探しを始めた。
私の仕事は職業傭兵。
軍務に従事しての戦場経験も、敵兵を討ち倒し首級をあげたこともある。子供の真似事じゃない。
とは言え、もともとが戦闘に従事する荒っぽい仕事だから、數から言えば男の方が圧倒的に多い。傭兵も居ることに居るが、私のように15~17の若い年齢の傭兵となるとさらに數が減る。大抵はもっとの危険のない仕事を選ぶからだ。
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フェンデリオルはのできる仕事はとても発達している。が生きる場所が制限されているなんてことはない。
そう、わざわざ命のやり取りをしてまで危険な戦場に向かうにはそれなりの理由があって當然なのだから。
無論、私にも――
傭兵ギルドの1階り口をってすぐがギルド詰め所だ。職業傭兵が仕事を探したり、ギルドに相談事をしたり、所定の俸祿を払ってもらったりする場所になる。ちなみに俸祿とは、いわゆるギャラの事だ。
銀行窓口の様にカウンター席が並び、事務員の居場所と傭兵たちが屯する場所が分けられている。
詰め所にって左手側、その壁一面のエリアが任務案件の掲示場所になる。壁に任務案件の概略が掲示され、その真下に棚があり、そこに任務詳細が書かれた書類が仕舞われている。仕事を探している傭兵はそこから希する仕事を選び出し、書類に記、カウンターの事務員に渡して參加申請をする。
そもそも、職業傭兵が任務を得るには2つある。直接指名と參加希だ。
直接指名はわかりやすい。任務の依頼元である軍や政府筋が求める案件に見合った人を選択して任務依頼するものだ。この場合、優れた実績があり名前が通っている必要がある。逆を言えば、名前の売れていない者や実績が無い者には指名は來ない。
私はまだ大きい実績が無いので直接指名はない。だから自分で仕事を探して參加希を出すことになる。
ギルドの詰め所の1階に、事務局に寄せられている仕事案件が掲示されている。それをチェックしてこれはと思った案件に希申請を提出する。そして、事務局の審査をけ問題がなければ契約立となる。
私のように駆け出しの若手や実績不足の人たちは、毎日のようにこの詰め所に日參している。
人混みの中をかき分けるようにして掲示板へと近づいていく。傭兵というものを詳しく知らない人から『の子一人で男の人達の群れの中で怖くないのか?』と聞かれたことがあったが、この稼業、ギルドの人たちが規律に対して厳しい目を向けているので骨な嫌がらせはそうあるものではない。あったとしてもたまにおをられるくらいだ。今もまた――
「―――!」
通りすがりに誰かが私をった。気配をじて背後を振り向けばにやにや笑いのおじさん傭兵が一人。
でもその隣の相方のような人が、私をった人を軽く小突くと謝りながら離れていく。これもまたよくある景だ。
今日も掲示板に事細かく膨大な依頼案件が並んでいた。
【モスコーソ山地、山賊征伐】
【ヴィト鉱山、警備任務】
【モルティエ地方、ゲリラ対応戦闘任務】
【ワイオシーズ地方、外患致カルト集団制圧任務】
【オアフーオ農村地帯、害獣〔狼種〕討伐】
【カストック農村地帯、害獣〔鎧竜種〕討伐】
【クレストン辺境駐屯基地巡回警備】
――と言ったいかにも戦闘を伴いそうなから
【正規軍兵站部隊資運搬】
【フォルダム山岳地方災害復舊作業】
【南部2級運河急整備事業】
【西部都市ミッターホルム消防業務支援】
――と言った力仕事を想起させる
【西部都市商業ギルド連合、軽事務作業】
【西部都市児學校、教育補助業務】
【國立病院地方分院、醫療看護業務】
――と言った明らかに傭兵の範疇を超えたもある
「まぁ、ほんとに仕事がなければこう言うのもありなんだろうけど」
私は教育補助の仕事の紹介票を手にとったが、すぐそばで任務探しをしていた年上の傭兵が語りかけてきた。黒髪を短く刈り込んだいかにも戦闘慣れしてそうな年上のだ。
「アンタ、やめときな。そういう非戦闘系に慣れるとますます傭兵本來の仕事に縁遠くなるよ」
「そうなんですか?」
「當然よ。そういう仕事で実績作ったら直接指名が殺到して逃げられなくなるから。それで傭兵やめてった仲間いっぱい居るのよ」
彼は私を頭からつま先まで丁寧に眺めながら言う。
「あなたみたいに傭兵にはちょっと見えないほど可らしい人だったら、なおさらこう言う非戦闘系の仕事がけがいいかもしれないけど、あなたが目指しているのはそういうモノじゃないでしょ?」
その通りだ。私は私の持っている実力が傭兵に向いていると私自が信じているからこそここに來ているのだから。目の前の彼ははにかみながら私に言った。
「仕事探し、地道にがんばりな。一つでも武功をたてられればこっちのもんさ」
「ありがとうございます。先輩」
私がそう答えれば、彼は満足げに頷いていた。禮を述べて仕事探しを続けるがやっぱり狙っていたは無い。私は並んだ案件の中からすぐにできる単発の仕事を選んだ。
【ブレンデッド商業ギルド、資運搬警備】
まずは地道なところからやって行こう。
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