《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第七話
「お前……やっぱりただものじゃないな」
近くにやって來たザウスが心したようにポツリと言うが、ハルは肩を竦めるだけの反応を返すにとどまる。
「えっと、それでは査定をしますね」
付嬢はハルの要通り、素材の査定へと移っていく。ハルはそれを黙って見つめていた。
査定の基準となるのが、大きさや傷などになる。
大きいものであれば、それだけ加工に使える部分が多いため、高評価になることが多い。
また、小さくても傷がついていたりすると、それだけ評価が下がってしまう。
今回ハルが持ち込んだものを見てみると、サラマンダーの中でも中サイズのものであり、角も鱗もそれなりのサイズである。
また、ハルが攻撃をしたのは一度であり、あとは落下の衝撃によるものであるため傷のない鱗がたくさんあり、ハルはそれをチョイスして剝がしてきている。
「これは、とてもよいものですね……」
じっとサラマンダーの素材に見る付嬢は寶石鑑定用のルーペのようなもので、細かな傷を確認していた。
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その結果、ほとんど傷がなく、高品質のものであるという判斷が下される。
「それでは角が二本、鱗が二十枚で、金貨六十枚になります――よろしいでしょうか?」
「あぁ、よろしく頼む」
その評価額を聞いて、周囲が再びざわつく。
冒険者登録をしたばかりのハルが、高額な報酬を得たことに驚いたためだった。
この世界では、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、王金貨の六種類の貨幣が流通している。
金貨となれば一枚で安い宿であれば一週間は泊まれるだけのものである。
一般的な冒険者であれば、月に金貨十枚稼げればの字といったところだった。
「し、新人が、しかも能無しポーターが金貨六十枚!?」
能無しポーターと揶揄されたハルだったが、それすらもどこか心地よくじていた。これまで馬鹿にされてきた自分が周囲から心されるようになったことに喜びを覚えた。
「ありがとう、それじゃあし依頼を見させてもらうかな」
「はい、よろしくお願いします」
気分よくハルは報酬をけ取ってカバンにれると、依頼が掲示されている掲示板へと移していく。
付嬢はにっこりと笑顔でそれを見送った。
掲示板を見ているハルは、他の冒険者に遠巻きに眺められていた。
「おう、どんな依頼をけるつもりなんだ?」
その中にあって、ザウスだけが気さくな様子でハルに話しかけてくる。
「あー、そうだなあ。俺はパーティを組んでないから、一人でもできるものをいくつか……って、なんで當然のように隣にいるんだよ」
當然のように隣で話しかけてくるザウスのことをハルは目を細めてじっとりと睨んでいた。
ハルは、冒険者登録できたことに心で興し、冒険者としての初依頼をゆっくりと選びたいと考えていた。ザウスがいてはあれこれと茶化されるのではないかと嫌そうである。
「まあいいじゃねえか、俺が試験した冒険者だからな。し気になってるんだよ。……それに、お前は特別なやつみたいだからな」
からかうように笑っていたザウスは後半、真剣な表で聲をひそめて言う。
「まあ……俺は能無しポーターだからな」
そんなザウスを見てハルは自で言うが、その表はあっけらかんと笑っている。
そんな風に呼ばれていたのも懐かしいとすら思える心もちだった。
「それで、どの依頼をけるつもりなんだ?」
ザウスはどこかに行くつもりはないらしく、ハルがどの依頼を選ぶのか、いまかいまかと待ちんでいた。
「ったく、そんなに大した依頼をけるつもりは……これをけてみよう。あとは、これと、これかな」
初めての依頼諾ということもあって、ハルは見た目に反して気分が高揚しており、三つ依頼を選択する。
「ほうほう、これまたチマチマした依頼をけるなあ。まあ、最後のやつは興味深いがな」
Aランクのザウスからすれば、派手さのない依頼であるため、全ての依頼を見てもどこかつまらなさそうである。
「いいんだよ。初めてなんだからな。じゃあ、依頼をけに行ってくる。ザウスはどっかに行ってくれ」
「へえへえ」
自分で選んだ依頼にこれ以上あれこれケチをつけられないようにハルはザウスをしっしっと追い払うように小さく手振りすると、付嬢の元へと向かう。
それでもザウスはハルのことをどこか気にかけている様子で、付に向かう彼の背中を見ていた。
「すいません、この依頼をけたいんですが」
ハルは掲示板から剝がしてきた三つの依頼の用紙を付嬢へと提出する。
「はい、早速の依頼注ありがとうございます! はいはい、薬草の採集五束。これは初めての人向けで良いチョイスです。次が、ふわふわ羊の角六本。こちらも危険のない魔相手ですね。三つ目が……なるほど、いえ、うーん、良いのですが」
付嬢は依頼を確認しながら、三つ目の用紙で付作業の手を止めた。
「これはけられないのか? ランク制限はないはずだが……」
首を軽く傾げながらハルは、用紙の容を思い出しつつ付嬢へと質問する。
「はい、ランクは問題ありません。ですが、パワータートルの甲羅はし難易度が高いかと……」
パワータートル――サイズは全長で三メートル程度、人よりも大きな亀で名前の通り力の強い亀である。
また、甲羅にを包んでおり防力も高く、並大抵の武ではダメージを與えることもできない。
「あぁ、知っている。通常はBランク以上の冒険者に出る依頼だろ? でも、今回のこれはランク制限がないからけられるはずだ」
付嬢は心配しているための進言だったが、ハルはそれをわかった上で、それでもけるつもりだった。
「……わかりました。冒険者は自己責任。それをわかった上でけるのですね。自のお力に慢心しているという風でもないようですので、諾します。それでは、先ほどお渡しした冒険者カードをお出し下さい」
普通は、依頼をける際に同時に出すものだが、依頼の確認の段階で止まってしまったので多順番が前後する。
「はい、よろしく」
け取ったカードを魔道に設置し、付嬢は三つの依頼の登録を行って行く。
この登録を行っておけば、他者が同一の依頼をけることはできず、なおかつカードの所持者であれば現在の依頼の狀況を確認できる。
「……これで、手続きは完了です」
「ありがとう――ん?」
カードを返卻され取ろうとするハルだったが、付嬢がそれを握ったまま離さないことに首をかしげる。
「どうか、無事に帰ってきてください。せっかく能力に目覚めたのですから……」
ハルが付嬢の顔を見ると、彼はとても真剣な眼差しと懇願するような表だった。
あまり一冒険者に肩れするのは良くないと分かっていてもどうしても言いたかった様子で、それだけ言うと付嬢はカードから手を離した。
「……わかった、ありがとう。そうだ、あんた名前はなんていうんだ?」
ここまで付嬢の名前を一度として聞いていなかったことを思い出して、ハルがなんのきなしに質問する。
「ふふっ、このタイミングで名前を聞くなんて変わっていますね。私の名前はアリシアです、よろしくお願いします」
「知ってると思うが、俺はハルだ。よろしく」
らかく笑いあった二人は握手をかわす。
數秒の握手ののち、ハルは依頼の遂行のためにギルドを出て行き、アリシアは業務に戻って行った。
二人のやりとりを見ていた冒険者たちは、しばらくの間、再びざわつくこととなる。
*****************
名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2
加護:神セア、神ディオナ
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じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
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