《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第八話

「おうおう、アリシアと仲良くなるなんてやるじゃねーか! あいつ、人當たりはいいがあくまで事務的なもので、あんな素の対応は珍しいぞ!」

絡むように近寄ってきたザウスがそう言いながらハルの背中をバシバシと叩く。

「ちょ、ちょっと止めてくれよ! 全く……なんだっていうんだよ。ただ名前を聞いて、握手しただけじゃないか……」

急に絡まれたことにびっくりしたハルがそう言いながら周囲を見渡すと、自々な気持ちのこもった視線が集まっていることに気づく。

「なんか……本當っぽいな。とりあえず依頼をやりに行ってくる」

自分の置かれた狀況に気づいたハルは、周囲の視線を振り払うように足早にギルドを出て行った。

ハルが出て行ったあとも、ギルドは彼の話題でざわついていた。

最初に向かったのは、武屋。

ハルはこれまでポーターをしていたため、戦闘を視野にいれることはなく、唯一持っている武もサラマンダーと戦った際に使ったあのナイフだけだった。

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「手ごろな武を持っておかないとな……」

並んでいる武を見ながらハルがぼそりと呟く。

「おう、ハル坊じゃねーか。剣なんか見てどうしたんだ? お前が使うのはナイフじゃなかったか?」

屋の店長であるドワーフのデップが二カッと笑いながら聲をかけてきた。

「あぁ、冒険者登録できたからしいい武を持とうと思ってな。さすがにナイフだけで魔と戦うのは心もとない」

デップはそれを聞いて大きく目を見開いている。

「ぼ、冒険者登録!? お、お前冒険者登録できたのか!!」

「あ、あぁ、そう言ってるだろ?」

自分が言った言葉をオウム返しされ更に、念押しのように強く確認されたため、ハルはやや引き気味になりながら返答する。

「うぅ、よ、よかっだな!」

ぶるぶる震えたと思うとデップは大粒の涙を流して泣きながらハルの背中を勢いよくバシバシと叩く。

「い、いてっ! 痛いって! ……ははっ、でもありがとうな」

我がことのように喜ぶデップに、ハルも自然と笑顔になっていた。

しばらくの間喜んだあと、ハルは再度武を探していく。

「初心者でも使える剣となると、どれがいいだろう?」

「うーむ、冒険者になったとはいえ剣技がについたわけじゃないからなあ。それだったら、このあたりの剣が軽くて丈夫でいいかもしれないな」

高い剣を使っても使いこなせることもできないため、デップは軽鉄という金屬で作られた片手剣を勧める。

「なるほどな……うん、いいかも」

ハルは言われるままに手に取って、デップからし離れた場所で軽く素振りをしてみる。

「お前の冒険者登録祝いだ、タダでいい。持っていけ」

「デップ……ありがとう! もっといい裝備を使えるようになったら、々買いに來るよ!」

ぱあっと輝くように笑うハルを見て嬉しそうに笑ったデップは、これまでのハルの苦悩を知っていた人の一人だ。

ハルは冒険者になった時のことを考えて、魔や素材などの報集めだけでなく、武のチェックにも頻繁に武屋や防屋を訪れていた。

その際にやたら真剣に品定めしているハルの様子に興味を持って話しかけたデップ。

ギフトがないけれどどうしても冒険者になりたいというハルの強い気持ちを聞いており、何があったかは分からずとも、彼の念願が葉ったことを心喜んでいた。

「せいぜいくたばらんように気を付けていけ」

ニシシと歯を見せながら憎まれ口を聞くデップだったが、ハルには彼が気遣ってくれていることをわかっているため、大きく頷きながら笑顔で店をあとにした。

店を出てから最初に向かったのは街の東にある森だった。

手ごろな依頼から順番にこなしいくため、まずは薬草の採集から行うことにする。

「さて、薬草はキーダの木がある場所の近くにあるんだよなあ」

通常、冒険者はやみくもに薬草を探しに行くものだが、熱心に報収集することを癖にしていたハルは薬草が多い場所のことを知識としても経験としても知っている。

目的の木は森の中でも奧の方にあるため、ハルはそこへ迷うことなく真っすぐ進んでいく。

「キーダの木発見――ということはこの木の近くに……」

目的の木を見つけると、ハルは木を中心に周囲を見回していく。すると、すぐに薬草が群生している場所に到著していた。

「それじゃあ、早速……」

何度も研究したおかげで薬草の手折り方も知しており、手際よく元に近い部分を持って、の部分を殘してナイフで刈り取る。

を殘すことで、そこから新しい薬草が生えてくる。薬草に詳しい者であれば、そこに注意することで何度も同じ場所で採集できることを知っている。

「ふう、これだけあれば十分か」

一仕事終えて額を拭いつつ立ち上がったハルの手には依頼用に薬草を多めの十束。さらには、自分で使う用に五束用意していた。それらをカバンにしまうと、今度はふわふわ羊の角の採取に向かう。

森からを抜けて平原に向かうと、そこにはリス型の魔や目的のふわふわ羊の姿があった。

のんびりと気ままに平原で過ごしている魔たちの姿が見える。

「さて、やろうか」

今回の依頼では、これまでに何度も使っている炎鎧は使うことができない。

むやみやたらに使えば、平原の草が燃えてしまう。

なにより、ふわふわ羊のは燃えやすいため、あっという間に丸焦げになってしまい、角まで黒くなってしまうのは容易に想像できた。

「今回はこっちでいこう」

ハルはレベルが上がったことによって能力が強化されている。

更にはハルはふわふわ羊の行パターンを理解しているため剣での戦闘も十分に行えると考えていた。

ふわふわ羊は攻撃を加えなければ、人に危害を加えることはない。

も平原に生えている草程度で十分である。それゆえに爭いがおこることはない。

「ふー……」

呼吸を整えて息をひそめたハルは靜かにふわふわ羊へと近づいていく。

周囲に対する危険察知能力の低いふわふわ羊は後方への警戒心は特に弱い。

それ故にハルの接近を容易に許してしまう。

「――せい! せい!」

ハルはふわふわ羊の角を目がけて剣を二度振り下ろす。すると、パキーンという音とともに角が折れてふき飛んでいく。

角はふわふわ羊のの一部ではあるが、一時的に角を失ったとしても綺麗な切り口であればすぐに再生していくという特徴がある。だからこそ上手に採集できることが求められる。

「ふう、まずは二つ。これならいけるな……次だ」

角がなくなっても綺麗に切り取られたせいか、一瞬キョトンと立ち止まったふわふわ羊はまたのんきな様子で平原を歩いていく。

吹き飛んだ角を拾い、あっさりと一匹から二本の角を手にれたハルは、すぐさま別のふわふわ羊へと忍び足で近づいていく。

時間にして數分程度で目的の角の數を集め、更にいくつかストックを作っていった。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2

加護:神セア、神ディオナ

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お読みいただきありがとうございます。

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