《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十話

翌朝、ハルは早々に街へと戻ることにする。

平原を通り、森を抜けて、街へと戻る。

ポーターをしていたハルからすれば、大きな甲羅を持ち運ぶのは苦ではなかったが、その様子は目立つもので道行く人々から稀有なものを見る視線が送られていた。

「さすがに、これは見られるよな……」

ハル自も、自分に視線が集まっていることに気づいており、人目を避けるように冒険者ギルドへ足早に向かっていた。

近づくにつれてハルの歩く速度は速くなり、ギルドに駆け込む形となっていた。

「はあはあ、やっとついた……」

疲労と恥ずかしさでハルは汗だくになっていた。

「ハルさん!? 一どうしたんですか?」

聲をかけてきたのは手が空いたのか、ちょうど床の掃除をしていたアリシアだった。

「いや、ちょっと、はあはあ、大荷で目立ってたから急いで、はあはあ、戻って來たんだよ」

息をしながら答えるハルのことをアリシアはくすくす笑いながら見ていた。

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「ふふっ、走ったりしたら、余計に目立っていたんじゃないですか?」

アリシアの言葉のとおり、道中走っていたハルは好奇の目にさらされており、更にはギルドにってからも何人かいる冒険者の視線はハルに集中していた。

「あっ……はあ、急がなくてもよかったのか。……ふう、はあ――うん、落ち著いた。アリシア、悪いんだが、依頼の達報告をしたいんだけど」

自分の行を振り返ってこみ上げた恥ずかしさを誤魔化すようなハルの言葉に、アリシアは目を丸くする。

悪いんだが、という言葉は恐らく掃除をしているのに付業務をしてもらって悪いという意味だとはわかる。

しかし、依頼の達報告という言葉にアリシアは驚いていた。

「えっ? ハルさんは昨日依頼をけていきましたよね?」

薬草採集だけであれば、この早さも理解できるが、ハルがけた依頼は三つ。

しかも、三つ目はパワータートルの甲羅をとってくるという難易度の高い依頼だった。

「あぁ、三つとも達報告をしたい」

「……えっ?」

ハルの真剣で真面目な聲音の返事に、先ほどよりも間をおいて、驚きを表現するアリシア。

「頼めるか?」

「は、はい! もちろんでふ! こちらへどうぞ!」

途中噛んでしまったことを照れる暇もなく、アリシアは慌ててカウンターの中へと移していく。

「そ、それではまずは薬草からお願いします。はっ! そ、その前にギルドカードをお願いしまふ!」

まさかこんなに早く終わるとは思ってもいなかったのか、あたふたと慌てているため、再び噛んでしまう。

「……あぁ、し落ち著いてくれていいぞ。はい、これカード」

ハルの指摘に顔を赤くしながらも、慣れたきで手続きをしていく。

「あ、ありがとうございます。はい、それではまずは薬草の納品をお願いします。依頼では五束となっていますね」

アリシアに言われてハルはカバンの中から、薬草を取り出してカウンターの上に置いた。

「これは……すごく良い狀態のものですね。うん、數もちゃんと五束あります。いいですね。冒険者の方々はみなさん薬草を摘むというよりむしってくるのでボロボロなものが多くて……」

アリシアは他の冒険者への愚癡を言いながら、ハルの薬草をニコニコと笑顔で確認する。

「はい、それではこちらの依頼は達となります。それでは、次の依頼は……ふわふわ羊の角六本ですね」

今度もハルが角をカウンターに乗せていく。

「これは……すごいです! こんなに綺麗な狀態の角、初めて見ました!」

ぱあっと顔を輝かせてふわふわ羊の角を手に取るアリシア。彼がギルドに勤めてから三年が経過していた。

その中にあって、無理やり折られていない角を見たのは初めてだった。

「そうなのか? ふわふわ羊の角といえば、元を剣で斬れば綺麗にとれるだろ。むやみに命を奪わなくて済むし……」

大げさなほどのアリシアの反応を見たハルは、當たり前のことをしただけだと首を傾げる。

「うん、六本ともすごく綺麗です! ありがとうございます! こちらも依頼完了です!」

普段の彼を知っている者ならば驚くほどアリシアはやや興気味に禮を言い、ぺこりと可らしく頭を下げた。

「それで、最後のパワータートルの甲羅なんだが……よいしょっと!」

ハルは重い甲羅を全部で五枚カウンターの上に乗せるが、あまりの大きさのため両隣のカウンターの範囲まではみ出してしまう。

「あぁ、すまないな。だいぶ大きい甲羅だったんで一応形に合わせて切り出してはきたんだけど……」

そこまで言って、アリシアが呆然としていることに気づいてハルは再び首を傾げることとなる。

「……ここに置いたらまずかったか? 隣のカウンターの邪魔してるよな。今どかすよ」

やり方がまずかったかとハルは慌てて甲羅をカウンターから降ろそうとするが、その手をアリシアにガシッと摑まれる。

「ま、待って下さい! 大丈夫です! ね? 二人も手伝ってちょうだい」

アリシアが両隣の付嬢に手を合わせて頼むと、二人とも快く引きけてくれる――というよりも、この甲羅を前にして放っておくことなどできなかったようで、すぐさま駆け寄ってきてくれた。

「すいません、確認しますのでお待ち下さい」

そう言ったのは、アリシアよりもかなり背の高い付嬢だった。

は熊の獣人で、力も強くハルが乗せた甲羅を取ると、奧にある大きなテーブルの上に乗せた。

「――これ、なんか大きくない?」

「普通、もっと小さいサイズよね?」

「……うん、でもちゃんと形の通りにカットされてるのよね……これもすごく綺麗……」

ハルが持ってきたパワータートルの甲羅を囲むようにして三人で確認をするが、気になった點としてはサイズと狀態の良さだった。

「これは……ちょっと難しいかも。私、ギルマスに言ってくるね」

そう言うと、狀態の確認を二人の付嬢に任せて、アリシアは二階にあるギルドマスタールームへと向かって行く。

「……何か問題でも?」

カウンター越しにハルが質問するが、殘された二人は曖昧に笑って気のない返事をするだけでハッキリとしなかった。

一枚、二枚、三枚と確認が進んでいき、四枚目の確認にったところでアリシアがエルフの男を伴って戻ってきた。

「――これがパワータートルの甲羅、そして彼が冒険者のハル君か……」

カウンターの更に奧からやってきた彼は、テーブルに乗せられた甲羅に手を乗せて軽くでると、視線をハルに移す。

「やあ、この間もあったけどギルドマスターのグーリアです」

「俺はハルだ。言ったとおりであっている。これは俺が池のほとりで倒したパワータートルの甲羅だ」

人の良さそうな笑顔を浮かべて問いかけるグーリアに対して、真剣な表でハルはしっかりと頷いて答え、改めてこれが依頼の品であることを強調する。

「そうかそうか……うん、きみは面白いね。まさか、こんなものを持ってくるとは」

グーリアはハルに深い興味を抱いたようで、にっこりと笑顔になっていた。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾

加護:神セア、神ディオナ

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