《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十一話
「さて、みんなは知らないようだからし僕が説明をしよう」
クスクスと笑いながらグーリアはそう言って、甲羅の一枚を軽々と持ち上げた。
「……は?」
ハルは重い甲羅を一生懸命持ってきたが、グーリアは親指と人差し指でつまんで軽々と持ち上げていた。
あまりの行に驚いたハルはとっさに鑑定でグーリアの能力を見て、納得する。
彼のギフトの中に、筋力強化10というものがあった。
ここに來るまで気を紛らわすために、道行く人々を鑑定してみていたが、高いもので5程度であり、それはランクの高い冒険者であった。
となれば、グーリアの10というものがありえない程に高いものであることは予想に難くなかった。
「説明をしてもいいかな?」
驚愕した様子のハルの反応を見て、ニコニコとほほ笑むグーリアは説明を止めて待ってくれていた。
「あぁ、続けてくれ。あんたがとんでもないことはよくわかったから……」
後半は聞こえるか聞こえないかのレベルの聲の大きさだったが、グーリアは笑顔で説明に戻る。
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「この甲羅はパワータートルの甲羅だということで、彼――ハル君は持ってきた。だが、これは正確には別なんだよ」
ギルドマスターである彼の選別とあっては間違いということはないだろう。別と聞いて、ハルは肩を落とす。せっかく苦労して手にれたのに、と。
「ふふっ、これはパワータートルの中でも大型に進化したグランドパワータートルという魔でね。さはただでさえいパワータートルを上回る。もちろん力も同じ。つまり、上位種だね。あぁ、みんなが知らないのは當然だよ。見た目の変化は大きさだけで、それ以外は普通のパワータートルと同じだからね――いやあ、懐かしいよ。この発見をしたのは僕がまだ冒険者をやってた頃だったからね」
楽しそうにけろりと告げられたグーリアのその言葉にギルドが一瞬でざわめきたつ。
自分たちの知らない魔の話が出たこと。
しかも、それはギルドマスターいわく強力な魔で、冒険者になりたての、元能無しポーターが倒してきたこと。
その點に驚く者。
そしてそんなグランドパワータートルを発見したのが、目の前にいるギルドマスターであるということ。
こちらに驚く者。
そして、両方に驚いて混している者と様々だった。
「でも、これは依頼の品とは別だから納品できないってことだよな?」
ハルは周囲のざわめきよりも、自の依頼のことの方が大事だった。
依頼はパワータートルの甲羅であるため、グランドパワータートルの甲羅では品が違ってしまう。
ならば、また採りにいかねばと気持ちを切り替え、ハルは次のきに考えを巡らせていた。
「いやいや、ちょっと待ってほしい。そもそもこの依頼自は僕が出したものなんだよ。知り合いに盾を作って送ろうと思ってね……だが、んでいたものよりも良いものが手にるなら、依頼容を変更するよ。グランドパワータートルの甲羅を納品してくれればいい」
昔の仲間に子どもができたため、魔除けの盾としてグーリアは贈りに使おうとしていた。
ハルの切り替えの早さを心心しつつも、指を立てて依頼の変更を告げた。
「あぁ、それなら助かる。ちなみに報酬金額も変わるのか?」
別を納品するとなれば、報酬金額も変わるはずである。
労働に対する対価はもらってしかるべきだというのが、ハルの心の師匠の教えであった。
「もちろんだ。報酬に関しては僕の部屋で話そう。さすがにお金の話をみんなの前でするのはよくないからね」
緒だよというように口元に手をやったグーリアの申し出にハルは頷き、それを確認したグーリアも頷いて二人はギルドマスターの部屋へと向かって行った。
「そうそう、甲羅はそこに置いておいてくれるかな? 品質のチェックは行っておいてね」
思い出したようにグーリアは振り返ると、付嬢たちに甲羅についての依頼をして、再び部屋へと向かう。
彼たちは驚き戸いながらも職務の遂行に向かい、ギルドはいまだ衝撃に包まれざわめきが収まらなかった。
二階への階段を上がり、一番奧にあるギルドマスタールームへとる。
「それじゃあ、し話を聞かせてもらおうかな。さあ、そっちのソファにかけて」
にっこりとほほ笑むグーリアはどこかワクワクしているように見えた。
「は、はあ……」
ハルは戸いながらもソファに腰かける。
「それで、いくつか聞きたいことがあるんだけど……――まず、君はどうして冒険者になれたんだい?」
「……っ!」
あまりにストレートな質問にハルは驚いて、言葉に詰まる。
「君はポーター――つまり荷持ちを生業にしていたはずだ。その君がなぜ冒険者登録できるまでに至ったんだ? ザウスに力を認めさせるほどになったんだ?」
そう問いかけるグーリアの聲はし低くなり、先ほどまでの気な姿はなりをひそめている。真剣なまなざしは噓を吐くことを許さないと言わんばかりにハルを貫いていた。
「……なぜ、という質問に関しての答えは力を手にれたから。そして、力を手にれることができたのは――俺がずっと諦めずに鍛え、學び、研鑽を続けたからだ」
をかみしめ、ぐっと強くこぶしを握ったハルは、あの時二人の神に言われたことを答えとした。ハルの頭の中では第一人の儀からポーターだった頃、神と出會い、スキルを授かった時までの記憶が次々と蘇る。
「…………なるほど。そうか、うん、わかったよ」
グーリアはハルの答えに満足したように頷き、笑顔になる。問い詰めるような雰囲気はもうない。
「いい、のか……?」
自分で言っておいて、それに納得してもらえるとは思っていなかったハルが聞き返す。
しかし、グーリアは再びにっこりと笑って頷いた。
「うん、だって君の言葉には噓はない。そして、その力は君のものだから、その力を僕に明かす必要はない。一応聞いてみただけだから、気にしなくていいよ。何せザウスにアリシアが認めたんだから、僕が文句をつけることもないさ」
あっけらかんとしたそれを聞いて、どっと一気にの疲れをじたハルは一つため息をついた。
だったら、さっきの雰囲気の変化は一なんなのか? と言いたい思いだったためである。
「さあ、それじゃあ早速グランドパワータートルの甲羅について話をしようか。報酬に関してだけど、元々の依頼の五倍でどうかな?」
「ご、ごば!?」
あっさりと告げられた五倍という思ってもみない高額な報酬に、ハルはぎょっとするほど驚いてしまう。
「……あれ? 安かったかな? さすがに十倍は厳しいけど、六倍……いや、ギリギリ七倍くらいならなんとかいけるかなぁ」
「い、いやいや、五倍で十分だ。まさかそんなに高いものだとは思わなかったけど……」
困ったような表で値段を自ら吊り上げていくグーリアに、ハルは慌てて腰を上げて止める。
「そうか、よかったよ。それでもう一つ聞きたいことがあるんだけど、あの甲羅はどうやって切り出したんだい? 形に合わせて綺麗に切り取られていたけど、そこらへんのナイフや剣では難しいだろ?」
この質問は単純にグーリアの興味だった。それほどにグランドパワータートルの甲羅の素材は狀態が良かった。
「あぁ、これを使った」
ハルは普段から使っているナイフを取り出してテーブルの上に置いた。
「見ても?」
グーリアのその問いにハルが頷く。
謝するようにふわりと笑ったグーリアはナイフを手に取ると、鞘から抜いて刃の部分を確認する。
「うーん、手れはしっかりされているけど……特別なもの、ではないよね?」
「あぁ、そこそこの値段だが特別な力はない――ただのナイフだ」
質の良いナイフ。それが二人の評価だった。
「これで、あの甲羅を切り出せるとは思えないんだけども……」
「その通りだ。そこに俺の能力が関係してくる。まあ、話すつもりも見せるつもりもないがな」
ただ興味本位で言っていることに気づいたハルは、悪びれる様子もなくこの返しをする。
そして、能力を隠すのは冒険者であればよくあることでもあるがゆえに気にした様子もない。
「ははっ、それなら仕方ないね。そうそう、依頼で出していたのは甲羅一枚なんだけど、よければ殘りも全部売ってもらえると助かるんだけど……」
ハルが持ってきた甲羅の枚數は全部で五枚。それを全て譲ってほしいという話だ。
だがあくまで提案程度で、その決定権はハルにゆだねているようだった。
「わかった、いい値段で買い取ってもらえるなら構わない」
「やった! 素材の買取に関してもをつけさせてもらうよ! 何せ、グランドパワータートルの甲羅なんて近年お目にかかれないからねえ。早速お金をとってくるよ!」
ハルが頷いてくれた瞬間、新しいおもちゃをもらった子供のようにキラキラとした笑顔になったグーリアは嬉しそうに立ち上がる。
グランドパワータートルの存在自がレアで、その甲羅ともなれば巨大であるため、持ち運びが難しい。
それゆえに、グーリアが隣の部屋に金を取りに行く足取りははずんでいるようだった。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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