《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十二話

グーリアはじず、うかつに報をらさないハルのことを気にったらしく、報酬にはだいぶをつけてくれた。

「……こんなにもらってもいいのか?」

「もちろんだ。というよりも、あの素材のレアリティを考えたらこれくらい払っても問題はないんだけどね。それでもし多めなのは確かだ、君には期待しているよ。他のなり立ての冒険者と違って君の目は強さと希に満ちている」

満面の笑みのグーリアに正面からそんなことを言われたため、ハルは驚く。

「そ、そんな目をしているか?」

とっさにハルは水鏡を呼び出して、自分の目を確認する。だがそこにはいつも見ている自分の顔があるだけで、何か特別なものが宿っているようには見えなかった。

「ははっ、面白いな。そういうところもいいところだね。君には他の冒険者と違う何かをじる。これは元冒険者としての直だけど――僕の直はわりとあたるんだよ?」

素直な反応を見せるハルに好を持ったグーリアは最後の言葉と共にニヤリと笑った。

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「……俺のことを評価してくれるのは謝する。今回の素材の買取で高めの値段をつけてくれるのもありがたい。ただ、冒険者としての評価はしっかりと結果で判斷してくれ――それこそ見込みや期待じゃなくてな」

ハルはただただ贔屓されるのは不満だったため、はっきりと真剣な表でこんなことを口にした。

「ふむふむ、これも加點だね。だがわかった、君に関して結果を出さない限りは特別扱いはしないようにしよう。まあ、既に甲羅の件や他の二つの依頼について結果を出してるから多の配慮はするけど」

一瞬きょとんとしたのちに、ふっと薄く笑って頷いたグーリアの言葉にハルは納得することにする。

これ以上何かを言うのはグーリアとの関係を悪くしてしまう思ったためだった。

「さて、それでは戻ろうか」

「あぁ」

ハルはもらった金をバッグに詰めると立ち上がり、二人は部屋をあとにする。

「あ、戻ってきた!」

一階のギルドホールに戻ると、既に甲羅のチェックを終えていた付嬢たちが二人のことを待っていた。

「やあやあ、お待たせしたね。で、甲羅のほうはどうだった?」

グーリアの質問に付嬢は笑顔で答える。

「えぇ、すごく良いものですよ! 綺麗にカットされていますし、傷も自然についたもの以外は大きな傷もないです。これ以上のものとなると、そう出ないはずです!」

はしゃぐような付嬢のそれを聞いた周囲の冒険者たちも驚いている。

たち付嬢のチェックは相當厳しく、なかなか高評価は出ない。素材の取り扱いによってはギルドの信用にも関わってくるためだろう。

その彼たちが諸手をあげて良いものだと判斷していることは、衝撃的であった。

「ふむふむ、予想通りだけどとても良いことだね。それ全て僕が買い取ることになったから、悪いんだけど倉庫に運んでおいてくれるかな?」

「了解しました」

熊の獣人である付嬢は甲羅を力強く持ち上げて奧の倉庫へと運んでいく。

「さて、それではハル君の依頼達を登録してくれるかな? 報酬に関しては先に支払っておいたから、そっちの手続きだけやっておいてくれればいいよ」

「はい、そちらなら既に完了しています。ハルさん、カードを返卻しますね。それと、冒険者ランクは二つ上がってDランクとなりました!」

アリシアからカードを取ったハルは思ってもみない言葉を聞いて訝しげな表で首を傾げる。

「Dランク!? 三つしか依頼をこなしてないんだが……なんで一気に二つも?」

ハルが疑問はそのとおりであり、ホールにいる冒険者も頷いていた。

「當然の疑問だと思います……説明をしますね。通常は、ランクは一つずつ上がっていきます。これは基本的なルールであり、みなさんご存知だと思います」

苦笑じりのアリシアの説明に、ハルだけでなく、みんなが頷いていた。

「しかし、これには特例があります。今回の依頼――ハルさんが達したのはパワータートルの甲羅の納品。この依頼は難易度の高いもので、通常Fランクの冒険者がけるものではありません」

これに対しても、たしかにそうだという聲があがる。

「そして、ハルさんは本來の依頼以上の結果を殘されました。グランドパワータートルの甲羅を持ってきたのです。それだけの力がある方をFランクにおいておけないというのがギルドの判斷となります」

説明を終えたアリシアは満足そうな表になっている。

「あ、あのー……質問いいですか?」

冒険者の一人が恐る恐る手をあげていた。

「はい、どうぞ!」

気分のいいアリシアは、元気よくその質問を促す。

普段あまり見れない彼の機嫌のよい表に一瞬質問を投げかけた冒険者が顔を真っ赤にして言葉を止めてしまうが、意を決して口を開く。

「その、疑うわけじゃないんですが、その甲羅を彼が魔を倒して取ってきたという確証がないと思うんですけど……買ってきたり、譲ってもらえばいいわけ、でしょ?」

それだけ強い魔を倒したというのであれば力の証明となるが、どこかから買ってきたものであるなら強さはわからない――彼の疑問はそこにあった。

「ふむふむ、し勘違いをしているみたいだね。そもそも僕たちギルドは依頼を達するまでの過程を問うことは基本的にしない。興味本位で質問することはあっても、それが結果に影響することはないんだよ。犯罪行為でもしていれば別だけどね」

その疑問に答えるのはグーリアだった。

「依頼を達するだけの力――この場合の力というのは戦いの力だけじゃない。僕たちにはギフトがあるんだから、倒さなくても甲羅を手にれる能力だってあるかもしれない。ならば、そこを問うことに意味はないのさ。まあ……一応付け加えておくと、グランドパワータートルの甲羅が市場に出回ることはほとんどないよ。出たとしてもかなりの金額をふっかけられるはずだ」

そこまで言えばわかるよね? と意味ありげな笑みを浮かべたグーリアは説明を終える。

「はあ……まあ簡単に言うと難しい依頼をこなす力があるから、ランクを上げるということでいいのか?」

ハルはここまでの説明を一言に収める。

「そ、その通りですっ」

それをアリシアが認めたことで、冒険者たちは納得して散開していった。

「……ありがたいよ。これで、他の依頼もけられるからな」

ようやく周囲から興味を失われてため息を吐いたハルはそう言うと、カウンターから出て依頼掲示板へと移していく。

「――おいおい、まだ何かけるつもりかよ」

そう聲をかけてきたのは、Aランク冒険者のザウスだった。

ことのり行きを見守っていた彼は、帰って來たばかりのハルが立て続けに依頼をけることを心配していた。

「あぁ、やっと冒険者として活できるんだからどんどん依頼をけたいんだ。一気にDランクになったことでけられる依頼の幅も広がったからな」

素っ気ない言葉のわりにそう言ったハルの目はキラキラと輝いているように見える。

「……そうか、無理はするなよ」

自分にもこんな頃があったんだなとザウスはふっと優しく笑うと、ハルのことを微笑ましく見守ることにした。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾

加護:神セア、神ディオナ

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