《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十三話
ハルはギルドでいくつか依頼をけると、一度家に帰ることにする。
依頼に出ていたため、ゆっくりと休むことができなかったためしばしの休息をとることにする。
家といっても、そこはハルが長期間契約しているアパートの一室だった。
「――お世辭にも綺麗だとは言えないが、やっぱり自分の家は落ち著くなあ」
雑然としているわけではなく、もそんなに置かれていない。
しかし、築五十年の建だけあり、壁のシミや汚れはどうしようもなかった。
それでも、ここのアパートが他よりも優れている點があった。
「ふー……さっぱりするなあ」
それが、シャワーだった。
水の魔道と熱の魔道を組み合わせて作られたそれは、このアパートの経営者であるドワーフ夫婦のこだわりの一つである。
ハルはし高めの溫度に設定したお湯を浴びながら汚れと共に疲れも流していく。
湖で水浴びをするのは魔がいるためできなかった。
それゆえに、自宅でシャワーを浴びるのは最高の気分だった。
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シャワーからあがってきやすい服を著ると、部屋の中央に據えられているソファにハルは腰をおろす。
「これがDランクのカードか……」
慨深げにハルは改めてギルドでけ取った自分のカードを確認する。
ずっとしかった冒険者カード。基本的なデザインは同じだったが、カードにはDの文字が刻まれている。
「ははっ、ついこの間までポーターをやっていた俺がDランク冒険者か……」
嬉しさと同時に、突如不安がを去來する。
借りのような力であっという間にDランクに上がってしまってよかったのか? ――ハルは思わずそんなことを考えてしまう。
しかし、次の瞬間、ディオナが顔を真っ赤にして怒り、ハルの頭にげん骨が振り下ろしたあのを思い出した。
「いや、ディオナとセアも言ってくれた。今の力を手にれられたのは俺の力のためだって。それにあの人だってきっと……」
何かを懐かしむような表のハルは未だ遠い、憧れの、恩人である冒険者の背中を思い浮かべていた。
「いくら力があっても、自信を持たなければ自分が不安になる。自分が不安になれば、それは周囲に伝播する。だから、冒険者は自信を持って堂々としているべきだ」
自に言い聞かせるように語るそれはハルの憧れの冒険者からもらった言葉だった。
彼の言葉、そして自分を認めてくれた神二人の言葉。
それらをにハルは立ち上がった。著替えて、武と防をに著けると家を出る。
さすがにそろそろ夕方にさしかかろうとしている時間から依頼に向かうつもりはなく、報酬を得たため、裝備を新しくしようと商店街へと向かっていた。
「ん? あぁ、ハル君。いらっしゃい」
優し気なふんわりとした笑みを浮かべて迎えてくれたのは防屋の主人だった。
ぽっちゃりした形の犬の獣人である彼は人當たりがよく、ハルのこともハル君と呼んでよくしてくれていた。
「こんにちは、ボズ。今日は防を買いに來たんだが」
ハルはそう言いながら店に展示されている品を見渡す。
「それじゃ、お客さんだね。いらっしゃい、いつも通り好きに手にとってもらって構わないよ。鎧を試しに著てみたい時にだけ聲をかけてね」
「あぁ、ありがとう」
しのんびりとした口調のボズの言葉に、ハルは禮を言うと店の中を見て回る。
この店は店構えは決して大きいといえるものではなかったが、ボズの妻がドワーフの防職人であり、質の高い商品が置かれている店だった。
「これと、これ、この當てかな……」
ハルが選んだのは、耐毒のブーツ、炎の籠手、そして軽鉄の當ての三つだった。
名前のとおり、毒を踏んだりしても腐食することなく丈夫なブーツ。
炎の屬の魔石が埋め込まれた籠手。これは、氷や水の魔法を防ぎ、炎の魔法などの威力を底上げする。
最後の軽鉄の當て。
これは、今までハルが裝備していた革の當てよりもく、かつ軽さもキープするものだった。
今現在のハルの能力では、防力よりも機力を重視したほうがいいと考えたためにこの當てを選んでいる。
「ふむふむ、冒険者なりたてなら悪くないチョイスだね」
その聲はボズのものだった。ひょっこりと覗き込むようににこにことしながらハルの選んだ防を見ている。
「……えっ? 知ってるのか?」
「あぁ、デップがこのへんの店のやつらに言いふらしてたよ。あいつもよっぽど嬉しかったんだねぇ」
デップが知らせに回った時のことを思い出してボズは笑顔になっていた。
「あー、そういえば口止めするの忘れてた……まあいいか、々とあったけど、なんとか冒険者になることができたよ。力も、手にれることができた」
そもそも隠すつもりもないため、ハルは冒険者になれたことを認めてボズに報告する。彼は嬉しそうに何度も頷いて聞いていた。
「うん、やっぱり君の口から報告を聞くのが一番だね――正直、デップの言葉だけだと半信半疑だったよ。ともかく……おめでとう。これは僕とカミさんからのプレゼントだよ」
応援するように笑顔でボズはそう言うと、用意しておいた指を取り出した。
「……これは?」
プレゼントといわれて心弾む心を押さえてハルは、しげしげとうけとった指を眺める。
「それは、昨日のうちにカミさんと二人で作ったものでね。裝備している側の力をし底上げすることができるんだよ。特別すごいというものでもないんだけど、しは役にたつんだじゃないかなぁ」
ふにゃりと笑ったボズは謙遜しながら言うが、彼の目の下に隈があるのをみれば徹夜をして作ったのがわかる。
「ボズ、ありがとう。このデザインはボズがやってくれたんだろ? ミチカさんにも禮を言っておいてくれ」
しっかりと指を握りしめながらハルはボズに禮を伝え、更に彼の妻――ミチカへの禮の伝達を頼む。ボズは嬉しそうに頷いて返事とした。
そして、ハルは指をきき手の右手の人差し指にはめていく。
「うお……」
風が吹いたかのような覚に襲われ、ハルは思わず聲を出してしまう。
指をに著けた瞬間に、そこから力が流れ込んでくるのをじたためだった。
「ふふっ、大丈夫みたいだね。人に作った指を自分たちではめるのはさすがにはばかられたから、ちゃんと作するか確認してなかったんだよ」
ボズはハルのリアクションを見て、ニコニコと笑顔になっていた。
「あぁ、これはすごい。指に流れる魔力を停止すると止まるのか」
「そうだね、まあ使う場合も量の魔力で効果が出るようになっているから、魔力ゼロにでもならない限り使うことができるはずだよ」
試しにしだけ魔力を流すと、指はその通りの効果を発揮する。
「これは、すごいな……いいものをありがとう!」
ハルは効果を確認して、嬉しさいっぱいに改めてボズへと禮を言った。
「ははっ、いいんだよ。ハル君が頑張っていたのは知っているからね、ちょっとしたお祝いくらいさせてもらわないとね」
こんなにもハルに喜んでもらえるとは思っていなかったボズは真っすぐ禮を言う彼を見て、再び笑顔になっていた。
これまでギフトがなくて冒険者になれないことを悩んでいたハルが、念願の冒険者になり、新たな旅立ちを迎えたことを応援する気持ちがあったからだ。
そのあと、しばらく話をすることになるが、ハルがDランクになったことを話すと、それこそ周囲の店にまで屆くのではないかというほど大きな聲でボズが驚くこととなった。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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