《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十四話

「おい! さっきのボズの聲は一なんなんだ!」

怒鳴りこむように防屋にってきてすぐにハルを尋問するデップ。

自分に知らせていない報を先にボズに話したんじゃないかと機嫌が悪くなっていた。

「あぁ、あれね。俺がDランクになったって話をしたら、あんなでかい聲を出したんだよ。いやあ、まさかいつも靜かなボズがあんなにデカイ聲を出せるとは思わなかったなあ……」

先ほどのやりとりを思い出して、ハルは困ったような表で頭を掻いていた。

「な、なに、ディ、D? ……はぁ? お前、昨日冒険者登録したばかりって言ってただろ? なんだ、お前、俺に向かって噓でもついてたっていうのかよ!?」

急に飛び込んできた報を理解できず、デップは混の末にハルの倉につかみかかろうとするという選択肢を選んでいた。ぐいっと近寄るデップのいかつい顔にハルは思わずをのけぞらせて引いている。

「いやいや、噓なんて言わないって。し落ち著け」

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しでも距離をとりたくて、ハルは長差を活かし、デップの頭を右手で押しとどめる。

だがいまだ混しているデップは鼻息荒く問い詰めるようにハルを睨んでいた。

「――実はさ……」

ハルは落ち著かないデップをなんとか右手で押えながら、Dランクになった経緯を話していく。

全て話し終える頃には、デップも落ち著きを取り戻していた。

「はー……そんなことがなあ――って、お前スゲーじゃねーか! 冒険者登録して、翌日にDランクに上がるなんて歴史上最速じゃねーのか? いやあ、さすが俺が見込んだやつだけのことはある。お前には才能があると思っていたんだよなあ!」

二カッと笑ったデップはそう言うと、バシバシとハルの背中をたたいていた。

し小さくともその力は相當なもので、勢いあまってハルはよろけそうになる。

「いてっ、痛いって! まあ、喜んでくれてよかったよ。それで、報酬も手にったからし強い武にしようと思ってきたんだけど……」

痛みに顔をしかめつつハルが言うと、デップは真剣な表でハルのことを見ていた。

そのまま時間にして五分が経過する。

デップには何か考えがあるのだろうと、ハルは無言のまま待っていた。

「――し待ってろ」

そして、そのままの表でハルに言うと、デップは自の店の方へ行ってしまった。

ボズに別れを告げてデップの店に向かうと、何かを探し回っている音が聞こえてくるが、待ってろと言われたハルはり口付近で待っている。

しばらくすると、デップが一本の剣を持って戻ってきた。

「いやあ、すまんすまん。なかなか見つからなくてな……ほれ、これはおれからのDランク昇格祝いだ」

「あ、ありがとう」

押し付けられるように渡されたそれをハルはけ取ると、早速鞘から剣を引き抜く。

「これは……すごいな」

に関してもデップに々と教えてもらっているハルは、一目見ただけでその剣が他と違うことがわかった。

すっかりその武に見ってしまっている。

「だろ? そいつの銘はエアブリンガー。名前からわかるように風の魔力が込められている。し魔力を流して振れば、風の衝撃が放たれる……こいつを作ったのはだいぶ前のことだが、多分大丈夫なはずだ」

デップの説明を真剣に聞いたハルはそっと鞘にしまい、手にしている剣に視線を落とす。

この剣はいわゆる魔剣と呼ばれる類のもので、作ることのできる職人は限られている。

デップは腕利きの職人だが、そんな彼でも魔剣を作り出すことができたのは、このエアブリンガーを含めて五本だけだった。

「こんなすごいものもらえないだろ……」

「カーッ!! いいんだよ! もらっとけ! どうせ、奧に放置されていたものだ置いといてもなんの足しにもならん! お前がもっとけ!」

申し訳なさそうにハルが突き返そうとしたエアブリンガーを、デップは強引に押し返してもう一度ハルに持たせる。デップは取らないぞ、と言わんばかりに腕を組んで仁王立ちしていた。

「……悪いな――いや、助かる。ありがとう」

こんなにいいものをもらうという狀況に、ハルは言葉を間違えたと思い、訂正してはにかみつつ禮の言葉を述べる。

「そうだよ、そうやって素直にもらっときゃあいいんだよ! ったく……面倒かけんじゃねー!」

言葉荒くデップはそっぽを向きながらハルをしかりつけるが、その表は笑顔だった。鼻を何度かってこみ上げるを誤魔化していた。

「それじゃあ、明日もまた依頼をこなしに行くからそろそろ帰るよ。々とありがとう」

「おう、気張ってこいよ!」

背中を力強く押すようなデップの聲に送られてハルは店をあとにする。

「……みんなありがたいな」

の家に戻る道すがら、ハルはボズとその奧さんであるミチカ、そしてデップの心遣いに心を溫かくしていた。

これまでギフトに恵まれなかったハルがそれでも誠実で、勤勉だったがゆえに、彼らは心かされ、ハルのために何かをしてあげようと考えていた。

冒険者として依頼をこなせなくても、ハルはどんな些細なことでも自然と自ら申し出ていろんな人たちを助けていたのだ。

しかし、それを特別意識してやっていたわけではないハルには、彼らがとてもいい人だという認識のほうが強いようだった。

その他にも、街を歩いていると、別の店の店員たちに聲をかけられて、あれこれとお土産を渡されていた。

気づけば家に到著する頃には、荷を両手で抱えるほどになっていた。

「みんななんでこんなに良くしてくれるかわからないけど、々と助かるな」

ハルは、生鮮食品を冷蔵の魔道にしまっていき、殘りの食べを夕飯代わりにしていく。

もらった食べにはボアという豬のを串焼きにしたものや、焼きたてのふわふわのパンがあったため、串から抜いたをパンでサンドして食べていく。

「――うまっ! これはやばい! 止まらない!!」

一口頬張ってハルの表は驚きと喜びに満ちる。

溢れるボアのはしっかりと焼かれてはいるものの、そのらかさは維持されており、パンの甘味と相まって、とても好みの味になっていた。

お腹を満たしたあとは早めに就寢し、翌朝は早い時間から出発することにした。

ハルの姿は、朝もや煙る街の西門前にあった。

「さて、今日は西の山からだな」

意気込むハルが歩き出す。次の依頼は、西の山にいるサンダーバードのの回収だった。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、氷牙2、甲羅の盾

加護:神セア、神ディオナ

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