《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第十八話
「それじゃあ、依頼の確認を頼む」
ハルはいつものアリシアがいるカウンターに向かって、カードを提出する。
「は、はい。確認します、サンダーバードの雷の納品ですね――五本という條件ですが……」
アリシアの言葉に合わせて、ハルはカバンの中から雷を取り出していく。
「いち、にー、さん……な、なんで三十本も!?」
通常雷は一につき、一本しか生えていない。ということは、ハルが三十ものサンダーバードを倒したということになる。
「あーいや、それは彼の協力があったおかげなんだ」
ハルは隣りにいるルナリアを指差して答える。困ったような笑顔を見せながらルナリアがそっと頷く。
その瞬間、ギルドホールがざわついた。
なぜ周囲がざわつくのか、その理由をルナリアは理解していたため、苦笑する。
「……ん? なんだ?」
だが、ハルにはその理由がわからなかったため、不思議そうに首をひねっていた。
「あの、私のことを知っている方は驚くのかもしれません。私、まともな魔法は使えないので……」
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忘れていたかのようなハルの反応を見て、自嘲気味にルナリアが答える。
「あー、そんなことか」
それを聞いたハルは首の後ろを掻きながら、冒険者たちへと振り返る。
「俺は能無しと呼ばれたポーターだった。だが、今の俺はDランク冒険者だ――以前の報が全てだと思っていると足元をすくわれるぞ?」
きっぱりとそれだけ言うと、ハルは再度付へと向き直った。
ハルは自分が力を得て、冒険者になっただけではなく、ランクも上げたことを話した。
つまるところ、ルナリアにも同じことが起きているのかもしれないぞ? と暗に語っていた。
実際のところは、魔力を使い果たした結果のサンダーバードとの相打ちであり、ハルが通りかからなければ、そう遠くないにルナリアは死んでいたかもしれない。
だが、そんなことを言う必要はなかった。ハルが言いたいところはそこではないためだ。
「なんにせよ、俺は彼、ルナリアとパーティを組むことになったからよろしく頼む」
パーティ登録はその場その場で組む臨時的なものを抜かして、ギルドへの登録制となっているため、ハルはその申告も同時に行っていた。ハルの言葉に更に冒険者ギルドはざわめきたつ。
「承知しました。まず、ハルさんの依頼の処理をします。雷五本の納品、確かに完了しました。殘りの二十五本はどうしましょうか? よろしければ、こちらで買取させて頂きますが」
アリシアの提案をけて、ハルはしばし思案する。
「……それじゃあ、五本は殘してあとの二十本は買い取ってもらおうかな」
武や防を作るための素材になることもあるので、雷の一部は手元に殘しておくことにする。
「はい、承ります。――フララ、お金の用意をお願い」
「はーい」
アリシアは手が空いている羊の獣人の付嬢にメモを渡して、報酬と買取金の用意を依頼する。
「それでは、パーティ登録の手続きをしましょう。まずはルナリアさんのカードをお願いします。前のパーティの解除から行いますから」
先ほどのやりとりはアリシアも見ていたため、ルナリアが特殊な狀況にあることを理解していた。
理解しているがゆえに、事務的に話を進めていくことで、余計な気遣いを見せないようにする。
「は、はい。お願いします」
ルナリアからおずおずと差し出されたカードを取ると、アリシアが魔道を作していく。
「それでは、ハルさんのカードはこのままお借りしますね……」
「あぁ」
そして、今度はハルのカードと合わせて処理を行う。
しばらくすると、先ほどフララと呼ばれた付嬢が袋を持って戻ってくる。
「アリシアー、持ってきたよぉ。はい、これねぇ」
「ありがとう」
間延びした聲で羊の獣人の付嬢が差し出した袋を取ったアリシアは、それをカウンターの上に乗せる。
「それでは、こちらが報酬と買取金額になります。お納め下さい。それとパーティ登録が完了したのでお二人のカードを返卻しますね」
アリシアの言葉に頷きながら袋とカードを取る二人。
「パーティ名はあとでご自で決められますので、カードのパーティ名の欄に魔力を流して決めて下さい。……あぁ、それとルナリアさんの前の依頼は、パーティ解除と共に削除しておきました。狀況が狀況だけに、失敗扱いにはしていませんのでご安心を」
「々ありがとう。助かったよ」
「本當にありがとうございました」
優しく微笑むアリシアの対応の早さに謝すると、ハルとルナリアはギルドをあとにした。
「さあて、これで々ときやすくなったかな。とりあえず、今のところは依頼は全部終わってるからギフトの件について話をしよう。あー……とりあえず、俺の家に行くか」
「えっ! ハルさん、おうちを持っているんですか?」
ギルドをあとにした二人は街を歩く。
家を一軒持つにはかなりの金額が必要なため、ルナリアは驚いてしまう。
「あぁ、いや、そうじゃない。賃貸だよ、借家、借りてるアパート」
「な、なるほど、すいません早とちりをしました。ハルさんなら、それくらいは持っていそうなイメージがあったので……」
ここまでハルに何度も驚かされているルナリアは、家に関してもハルなら豪邸を持っているのかもしれないとまで思わされていた。
未だ々な誤解を抱えているルナリアだったが、ハルはここで説明をしても混するだろうから、落ち著いてから話そうと家路を急いだ。
「――狹いところで悪いが、適當に座ってくれ」
家に帰るとハルは荷を適當に置いて、自分はベッドに腰かける。
「お、お邪魔します」
恐る恐るといった様子のルナリアは、ハルと向かい合う位置に置いてある椅子に腰かけた。
「それじゃあ、どこから説明をしたものかな?」
ルナリアの能力に関すること、それともハルが冒険者になれた話、それとも……。
「あの! なんで、サンダーバードにナイフで攻撃してもビリビリしなかったのですか?」
意気込んだように口を開いたルナリア。彼が一番気になっていたのはそれだった。
「えっ? あー、そこが気になるのか……それには俺の力について説明をする必要があるんだけど、いくつか先に約束してほしいことがある」
「は、はい、なんでしょうか?」
ルナリアは一どんな條件を持ち出されるのかとドキドキしながら拳を握って構える。
「いやいや、そんなに固くならなくていいって……俺の能力は特殊なものだから、全容を話すことはできない。だから、その一部について話すことになるんだけど、それは誰にも教えないでくれ。俺とルナリアだけのだ。これはギルドのやつらも誰も知らないことだからな」
これまで冒険者になれたことは話しても、自のギフトについては誰にも話していなかったハル。
だが、ルナリアと出會ってからさほど時間は経っていないが、彼になら話してもいいだろうと思わせる何かがあった。
「っ……わ、わかりました! 神に誓って誰にも教えません!」
何度も頷いてそう答えたルナリアのことをハルは數秒見つめる。
「――わかった。信じるよ。それじゃあ、まずは俺の力についての説明から始めよう」
ハルは神との邂逅については話さず、ただ落下の衝撃で力に目覚めたと説明する。
そして、能力についても倒した相手の力の一部を取り込むことができることだけを話す。
スキルについて、レベルについては現時點ではにしておくことにした。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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