《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第二十一話

先に馬車に乗っていた三人はハルたちのやりとりを見ていたため、関わらないようにと目線を向けることもない。

そして、ルナリアは先ほどのやりとりを思い出してソワソワしていた。

どうやら先ほどのことについて気になっているようだった。

「……いいよ、聞きたいんだろ?」

ルナリアが尾を揺らしていつ聞こうかとタイミングをうかがっているの見て、ハルは自分から話を振ることにした。

「――えっ!? えっと……いいんですか?」

自分ではそわそわしている自覚がなかったのか、驚きながらも上目遣いで聞いてくるルナリア。

これは計算している行ではなく、申し訳なさが表に出ているようだった。

それに対してハルは苦笑しながら頷いて返す。

「そ、それじゃあ……さっきの人たち、あの冒険者のリーダーさんとの戦いなんですけど、どうやったんですか?」

どうやった? つまり、どうやって倒したのかをルナリアは聞きたいようだった。

「ん? あぁ、あれは俺の能力でな。拳に炎を纏わせてあいつの腹を毆ったんだよ。炎だから熱いだろうし、それ以上にきっと俺の拳の威力が強かったんだと思う――し驚いたけどな」

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まさか一撃で倒れるとは思っていなかったのは、ハルも同じだった。困ったような表で顔を掻く。

「あれすごかったです! でも、ちょっと気になるんですけど……」

言いづらそうに口ごもるルナリア。

「なんだ? 言ってくれ」

ルナリアが遠慮をしないように、ハルはつとめて明るく返す。

「その、確かにハルさんの攻撃は強かったと思うんですけど、なぜあのリーダーさんがお仲間を止めたのかちょっと不思議でした。最初の勢いだったら、みんなで襲い掛かってきそうな気もするんですけど……」

あっさりと引き下がったことに関して、ルナリアは疑問を持っていた。

「あぁ、あれか。ちょっと耳元で呟いたんだよ――お願いですから帰って下さいってね。そうしたら、俺の話を聞いてくれてあっさりと引き下がってくれたんだよ」

大したことを言ったわけではない様子でハルは肩を竦めながら答える。

絶対に違うはずだと予想できているルナリアだったが、それ以上聞くのは怖いと思ったらしく、その答えで納得するように何度も頷いていた。

そして、同乗している三人もルナリアと同じ心境のまま視線を逸らしていた。

街を出発して、半日ほど経過したところで、道の真ん中に數の魔が現れる。

「――ハルさん!」

「あぁ」

ハルとルナリアは自分たちが出て戦うつもりだったが、者が片手をばして制止し、首を振ったのが見える。

「あんたたちは乗っていてくれ。俺の馬車に乗ったからには客だからな。客に魔退治を手伝わせるわけにはいかねえ」

そう言うと、者は馬車を降りると馬の頭をでてから走って魔たちへと向かって行く。

「っ、でも!」

が複數いるため、ルナリアが助けようと立ち上がるが、先にいた三人の客がそれを止める。

「やめといた方がいいよ。者のおっさんはかなり強いから、手伝おうとして足手まといになるだけさ」

リラックスした狀態で笑う彼らは何度もこの乗り合い馬車を利用したことがあり、その際に者の実力を把握していた。彼がでればなんも問題ないだろうとのんびりとしている。

「――さあてっと、予定を遅らせるわけにはいかないから……さっさと消えろ!」

者が威嚇するように魔に対して大きな聲を出すと、そのうちの三が慌ててその場から逃げ去っていった。

「あれは……威圧か」

馬車の中から様子をうかがうハル。者が持つギフトの中にそれらしいものがあり、名稱は”威圧”だった。

「それに、剣の腕前もかなりのものみたいだな」

ハルが鑑定で能力を確認すると、片手剣8という記述が見えた。

「あのおっさんは元凄腕の冒険者でな、かなりの力を持っているみたいだ。ランクは聞いたことがないが、最低でもAランク、もしかしたらSってこともあるかもしれないな」

そんな風に話をしている間にも、者は剣を手にして殘った魔へと向かって行く。

「……えっ?」

それはルナリアの驚きの聲だった。

者は魔へとゆっくりと歩いて近づいていた。

剣を手にしてはいるものの、無防備な様子の者に魔が飛びかかっていく。

そこまでは確認できていたが、次の瞬間、魔がバタバタと倒れていたことに驚いていた。

「速いな――よく見てないと目で追えないレベルの剣技だ。一瞬で魔を真っ二つにしている」

そのハルの発言には、ルナリアはもちろんのこと同乗している三人の客も驚くこととなる。

「……い、今の見えたんですか?」

「ん? あぁ、そりゃな。まあ、見えただけで実際に攻撃されたら避けるのは多分無理だ。避けられないならそれはそれでやりようはあるけどな」

ハルの言葉は丁度魔を倒して戻って來た者の耳に屆いていた。

「なかなか威勢がいいようだな。だがまあ、停留所でめていたあいつらを倒して調子に乗っている、ようではなさそうだ……まあ、がんばんな」

者は気を悪くすることもなく、まだ若いハルを見てこれからがあるだろうと期待を込めて聲をかけた。

その表はにっと歯を見せるような気のいい笑顔だった。

「はあ……よかったです。てっきり怒ってるかと思いました……」

ルナリアは者が聲をかけてきた瞬間ビクッとを震わせていた。

あれだけの実力者の機嫌を害してしまったのではないかと。

「いや、あの人は俺の力も大把握してるだろうから、そんな弱い者いじめみたいなことはしないだろ。そうじゃなかったら、者なんていう々な人を乗せる仕事やってられないだろ」

ふっと薄く笑ったハルのこの言葉も、者の耳には屆いていた。

「――あいつ、なかなかわかってるやつみたいだな。俺の力も見かしてやがった……。――はてさて大になるか、途中で命を落とすか、どちらか……」

誰に言うでもなく、そんなことをつぶやきながら者は再び手綱を握っていく。

その後も中継點まで數回の戦闘を重ねて、そこで一泊する。

翌早朝出発して、晝前にはマウルの街が見えるとこまでやってきていた。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾

加護:神セア、神ディオナ

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*****************

名前:ルナリア

別:

レベル:-

ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1

マイナススキル:魔封じの呪い

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