《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第二十四話
昨晩は早めに就寢したため、二人はスッキリとした表で一路街の東に位置する聖堂に向かっていた。
「な、なんか張しますね」
「そうかな? 別にちょっと話を聞くだけだし、目的の力を持ってる人がいなければ次に行くだけだからなあ」
慣れない場所に向かうことに対してルナリアは不安を、ハルは平靜と、それぞれが正反対の気持ちで歩いていた。
早めに出たこともあって、道ゆく人もなく、すぐに目的の聖堂へと到著した。
聖堂の周辺は靜寂に包まれており、誰かが中にいるかもわからないほどだった。
「こ、ここですね」
張しているルナリアは、どきどきと高鳴る心臓を押さえるように元に手を當てながらじっと扉を見つめている。
「すいません、誰かいますか?」
そんな彼とは違い、冷靜なハルは閉じられた扉をノックすると、中へと聲をかけた。
何度か深呼吸をして気持ちを落ち著けようとしていたルナリアだったが、予想以上にハルの行が早かったため、慌てたまま返事を待つこととなった。
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ほどなくして扉が開き、神父らしき男が姿を見せた。
「おはようございます。當聖堂へどういった用でしょうか?」
にっこりと和に微笑むその男は人族であり、ほっそりとした中背だった。長い聖職者らしいローブをに纏っている。
「えっと、しお話を聞きたくて來ました」
初対面の聖職者ということで、ハルも言葉遣いに気を付けている。
「はい、それでは中におり下さい。――お話はお一人ずつなされますか? それともお二人一緒に?」
笑みを絶やさない神父のその質問に、二人は顔を見合わせる。
そして、どちらともなく頷いて神父を真剣なまなざしで見た。
「それでは、二人一緒でお願いします」
「はい、承知いたしました。それでは懺悔室ではなく、客間に行きましょう」
ゆっくりと歩み始めた神父に案されて、聖堂の中にり、更に奧の客間へと案される。
神父によってお茶と茶請けが並べられると、神父から話を振っていく。
「それでは早速お話を聞かせて頂きましょう。遠慮なくお話下さい。もちろん他言は致しませんのでご安心下さい。……そうそう、名乗り忘れていましたね。私の名前はグーラバートと言います。グーラとお呼びください」
ソファを挾んで向かい合う三人。
次に口を開いたのはハルだった。
ハルの能力を含めた話になるため、自分が説明するのがいいだろうと考えた結果だった。
「俺の名前はハルです、彼はルナリア」
そう言うと、二人は軽く頭を下げる。
「し話しづらいことがあるのと、想像というか予想も含まれる話だという前提で聞いてもらいたいのですがいいですか?」
真剣な様子のハルの言葉に、グーラはゆっくりと頷いた。
「もちろんです。話しやすい流れでお話下さい」
許可を得たハルは、能力を隠しながらしずつ話をしていく。
ルナリアがうまく魔法を使えないこと。
二人とも前にいたパーティの人間にはめられてしまったこと。
そして、あることをきっかけにルナリアには魔封じの呪いがかけられていることを知った――そう説明していく。
「ふむふむ、呪いとはとても興味深い……っと、すみません。不謹慎でしたね」
悩んでいる相手に対して、呪いが興味深いと話したのは良い言葉の選択とは言えなかった。神父は申し訳なさそうな表で詫びた。
「い、いえいえ、お気になさらず……!」
い表で座るルナリアは未だ張しているらしく、恐しっぱなしだった。
「それで、解呪の力を持っている人を紹介してもらいたいんですけど……」
このハルの言葉は予想通りのものであるらしく、グーラは眉間に皺を寄せていた。
「……ダメ、でしょうか?」
グーラの反応が否定であるものだと思ったルナリアが質問を重ねる。
「えー、勘違いしないでいただきたいのですが、我々聖堂としては、極力頼られてきた方々には力をお貸ししたいのです。寄付という形でいくばくかのお金を頂くことになりますが、それでも協力したいという気持ちに噓はありません……しかし」
困ったような表で首を振り、そこまで言ったグーラは言いにくそうに口ごもる。
「……もしかして、解呪のギフトの持ち主がいない、とか?」
ハルの質問に、し考えてからグーラが頷いた。
「はい、正確に言うと今はいない、というのが正しいのでしょうかね――以前はいたのです。中央の大聖堂のほうにですが……解呪の能力者は稀なので、彼の力は有用で皆に頼りにされていたのです。人格者でもあったため、彼を慕う者も多かったのです」
だが説明するグーラの表はどこか厳しいものだった。
「その人はどこにいるんですか? 別の街に行ったとか?」
この問いもグーラにとって辛いものであるらしく、表は優れない。
「その……彼は、この街を捨てて、その」
そこまで話したところで、部屋の扉が大きな音をたてて開かれる。
「――神父様! あの方たちが!」
飛び込んできたのはこの聖堂のシスターだった。彼の髪はれ、はあはあと息がきれている様子だった。
「またですか……失禮、みなさんはここでお待ち下さい」
神父は苦々しい表で立ち上がると、部屋を出ていく。
「何かあったのか?」
「えぇ……気になりますね」
慌てた様子のシスター、そしてそれに心當たりがありやや苛立った様子の神父グーラ。
その様子を見て、何も気にならないという風には終わらせられない二人。
待てと言われたが、それを聞くはずもなく、神父とシスターのあとをついていく。
「――おい、早く出せよ!」
怒鳴り聲は廊下を通路を曲がった先から聞こえてくる。
ハルとルナリアが覗いてみると、そこには人相の悪い男たちの姿があった。
どう考えても聖堂に用事があるような人間には見えなかった。
「ないものはないんだ。聖堂を訪れる方々の邪魔になるから帰ってくれ!」
毅然とした態度で男たちに対応するグーラ。
だが怒りに我を見失ったような男はグーラの言葉など耳にっていないようだった。
「うるせえ! 他のところにはなかったんだから、ここにあるはずだ! ……おい、お前たち探せ!」
男の取り巻きらしい人たちが聖堂を荒らしながら散策を始めていく。
シスターや聖堂を訪れた者たちが怯えた様子で震えている。
「ちょ、ちょっと止めて下さい!」
「うるせえ!」
そんな人たちを守ろうと前に出たグーラを男は毆りつける。
神父はなんとか後ろに転倒するのをこらえるが、男はそこに追い打ちをかけようとする。
「――やめておけよ」
しかし、男の拳はハルによって摑まれていた。どれだけ男が押そうともそこから全くく気配がなかった。
「っ……な、なんだてめえ!」
「あなたは……」
男は憤りながら、そしてグーラは驚きながらハルを見ていた。
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名前:ハル
別:男
レベル:1
ギフト:長
スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾
加護:神セア、神ディオナ
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名前:ルナリア
別:
レベル:-
ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1
マイナススキル:魔封じの呪い
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