《才能(ギフト)がなくても冒険者になれますか?~ゼロから始まる『長』チート~》第二十九話

石族の男が倒されたことで、ガーブレアたちの優位な空気が一瞬で変化する。

クラウドたちAランクパーティがガーブレアとダークエルフへと向かって行った。

それを阻止しようとする部下たちと衝突する。

「まさかステムがこんなに早くやられるとは……」

「……しかたない、きりかえていこう。ステムを倒した二人は私が相手をする」

ステムとはハルとルナリアに倒された石族の男のことだ。

ガーブレアは落ち著いた口調でダークエルフにそう宣言するが、その表は怒りに満ちていた。

「わかりました。それじゃあ、あの強そうな冒険者は僕に任せて下さい」

ダークエルフはにやりと笑うと、クラウドたちを倒すべく技をためながら走っていく。

先ほどのアクアミストという魔法は既に霧散しているが、一瞬で室を霧で覆った魔法を見る限り油斷できない実力を持っているのは確かだった。

「さてさて、私の大事な部下を倒しただけではなく、命まで奪うとはな……貴様ら、死んでもらうぞ!」

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ハルたちに向き直るとガーブレアは宣言する。彼にとって、幹部の二人は特に大事な仲間であり、その仲間を殺されたことは彼の心にある怒りの炎を燃えあがらせていた。

「――ルナリア、ここが正念場だぞ。俺の目で見る限り、あのガーブレアという男が目的の相手だ。あいつが解呪のギフトを持っている……んだけど、話をして解呪してもらうのは難しいだろうな」

ガーブレアを警戒しながらハルは鑑定の能力を使って彼を見ていたが、その表を見る限り、穏便にことを運ぶのは難しいと思われた。ルナリアはい表で頷いて返す。

「それじゃあ、行くぞ!」

ゆっくりと迫ってくるガーブレアに対して、ハルが走って向かう。しでも先手を取ろうとしていた。

「はい!」

気合のった表のルナリアもメイスを握り直して、ハルに続いていく。

ぜろ、“フレアボム”」

その場で悠然と構えるガーブレアは右手を前に出すと、発の魔法を放つ。

「甲羅の盾!」

咄嗟にハルは甲羅の盾を発して発を防ぐ。

しかし、直接の発自を防ぐことはできたが、風の威力まで殺すことはできず、後方に盾ごと弾き飛ばされてしまう。

「ぐあああああ!」

なんとか勢いを殺そうとするが、風に負けてしまい、一気に後ろまで吹き飛ばされ、壁まで到達してしまう。

「これしきで吹き飛ぶとはけない……」

目を細めたガーブレアはハルのことを見下した目つきで見ている。

自分の仲間がこんなけない男に負けたのかと思うと、一層苛立ちが募っているようだった。

「せやああああ!」

ハルが吹き飛ばされていくのを知りながらも、今は目の前のガーブレアに向かって行くべきだと、ルナリアは橫に大きくいており、発に巻き込まれずにガーブレアへとメイスで毆りかかる。

きは悪くないが、その程度。“バーストウォール”」

「きゃああ!」

冷たい眼差しでガーブレアが発した発でできた壁によって、ルナリアの攻撃は防がれてしまう。

「いくら攻撃力が高いと言っても、近寄れないのであればないのと同じだ。あいつを苦しめずに一瞬で倒してくれたことだけは謝しよう。だから……お前たちも一瞬で殺してやる」

その聲は呟かれるかのように小さく低かったが、ハルとルナリアの耳にしっかりと屆いていた。

聲に込められたありとあらゆる負のじ取った二人は震いする。

「――っ、ルナリア! 一度こっちに引け!」

それと同時にがよだつのをじたハルは大きな聲でんだ。

ルナリアはハルの聲を聞いて、ハッとなってすぐに彼のもとへと移する。

「あ、あの人強いです……」

「そうだな、解呪だけじゃなく、火魔法、発魔法のランクもかなり高いようだ」

怯えた様子で震えるルナリアを庇うようにハルは手をばす。

ハルの言葉が聞こえたガーブレアがニヤリと笑う。

「なかなかいい目をしているな。先ほどのやりとりだけで私の能力をそこまで測るとは。――だが、わかっただけでは私には勝てない!」

魔力をためていたガーブレアが掌をハルに向けてばす。

「“フレアボム、ダブル”!」

一発のフレアボムはハルが既に防いでいる。ならばと、ガーブレアは同時に二発放つ。

「くっ、甲羅の盾!」

ハルは先ほどと同様に、甲羅の盾を発する――ルナリアの前に。

「うおおおおおおおお!」

そして、自らは魔法へと向かって走り出した。

「ハルさん!」

必死に手をばしたルナリアの呼びかけむなしく、フレアボムはそのままハルへと命中した。ぜる炎の煙にルナリアはが痛んだ。

「ふっ、無策で突っ込んでくるとは馬鹿な男だ。それでを守ったつもりだとでもいうのか?」

二発防がれたなら、三発四発と増やせばいいだけ――そう考えたガーブレアは掌をルナリアへと向ける。

甲羅の盾は一発防いだ時點で消えてしまっている。

一発分しか耐えられないのか、もしくはハルがやられてしまったことで消滅したのか、どちらかはわからないが、どちらにせよピンチであることに変わりはなかった。

「――炎剣!」

ガーブレアがにやりと笑いながら次の技を発しようとした瞬間、ハルの聲がルナリアとガーブレアの耳に飛び込んできた。

フレアボムの炎と煙を切り裂いて姿を再び見せたハル。

彼は自らの剣に炎鎧の炎を纏わせることを”炎剣”と呼稱することにしていた。

「なっ、“フレアウォール!”」

ガーブレアは虛をつかれた形になるが、それでもなんとか炎の壁を生み出してハルの接近を阻止しようとする。

これがルナリアに使ったものと同じ発の壁であれば、結果はもしかしたら変わっていたかもしれない。

しかし、ただの炎の壁はハルを止めることはできなかった。

「うおおおおお! 俺に炎は、効かない!!」

炎の壁を突き破って、ハルは炎剣でガーブレアを肩口から斬りつける。

ここでも炎の障壁を張ろうとするガーブレアだったが、ハルの炎鎧のランクは2であり、その威力は障壁を容易く切り裂くだけの力を持っていた。

「ぐあああああああああ!!」

斬られた形に勢いよくを噴き出すガーブレア。

「ガーブレア!」

クラウドたちと戦っているダークエルフが悲痛な聲音でガーブレアの名前を呼んだ。

「ぐ、ぐうううう、げはっ」

ガーブレアはその呼びかけには答えず、傷口を押さえながら苦しげな息を繰り返し、口からを吐いた。

「が、がふっ、なかなか、がふっ……やるじゃないか」

強がりともとれるような言葉を口にするガーブレア。彼は自らの傷口に當てていた掌に魔力を込める。

「も、燃えろ……っ」

なんとかそれだけ口にすると、自らの傷口を火魔法で焼きながら塞いでいく。

「ぐ、ぐああああああ!! ……はあはあ、これならなんとか、ける」

傷口を塞いだことで、出多量で死ぬという結果だけは避けられている。

しかし、重癥であることは変わりなく、ハルと戦えるとは思えなかった。

「悪いが、止めを刺させてもらうぞ!」

ハルはただただ待つつもりはなく、再度剣を振り下ろそうと構える。

「ま、まあ、し話させてくれてもいいだろう」

死を迎える男の最後の言葉。それならば聞いてやろうとハルは剣を構えたままの姿勢で彼の次の言葉を待つことにする。

「ダクタ! あとのことは、頼んだ!」

にやりと笑ったガーブレアはそう口にすると、何かをダクタと呼ばれるダークエルフに投げる。

「てやあああ!」

ガーブレアが不審なきをとったため、急いで飛び出したハルによってガーブレアは斬り倒される。

ガーブレアの言葉が何を意味するのかわかっているダクタと呼ばれるダークエルフは、その何かをしっかりと取ると、瞬時に魔法を使う。

先ほどと同じ目くらましの魔法だったが、先ほどよりも濃度が高い魔法だった。

「“ディープアクアミスト”!」

霧が晴れるまでに三十分はかかったが、視界がクリアになる頃には、ダクタと數人の生き殘りは姿を消していた。

そして、ハルの足元には切り伏せられたガーブレアのが転がっていた。

*****************

名前:ハル

別:男

レベル:1

ギフト:

スキル:炎鎧2、ブレス(炎)1、ブレス(氷)2、竜鱗1、耐炎2、耐氷1、耐雷1、氷牙2、帯電1、甲羅の盾、鑑定、皮化、腕力強化1、火魔法1、発魔法1、解呪

加護:神セア、神ディオナ

*****************

*****************

名前:ルナリア

別:

レベル:-

ギフト:火魔法1、氷魔法1、風魔法1、土魔法1、雷魔法1

マイナススキル:魔封じの呪い

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