《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》幕間:世界最速の為になる授業

ちょっとだけ幕間挾ませてください

「先生(センセイ)! どうかこのノロマな俺に極意を教えていただきたい───!!」

「………」

先生は半の鳥頭を長時間見続ける趣味をお持ちではない。ゆえに、先生に教えを乞う時はあらかじめ聖杯を使って別を変更するのが通例となっていた。

試運転も兼ねてエリュシオン・オートクチュール渾の作品「千古不易」を裝備しているため、側から見ると貓耳フード付きパジャマ(どっかのバカどもがPKKを利用して著せたのだろう)を著たにメイド服のが頭を下げている図なわけだ。

「………」

先生……最速のNPC、あるいは最強の賞金狩人ティーアス。俺が注文したスイーツを彼の代名詞たる究極の加速(げんそく)「超越速(タキオン)」で奪い取った先生は、タルトをむしゃむしゃと食べながら俺を見つめていた。

「極意(ごくい)?」

「不肖サンラク、開拓者の中においては最速を自負しております。つい先日には臨界のさらにその先を見た、とも自信を持って言えます……」

Advertisement

「それは何(なに)より?」

オルケストラ戦で敢行した雷と、嵐と、さらにその嵐よりやばい何かを臨界の速さで振り抜いたあの一撃。なくとも自己ベストは間違いなく更新していると言う自覚はある。

とはいえ、だ。それが本當の意味で最速でないということはなにより目の前の(ティーアス)先生がなによりの証拠だ。

───超越速(タキオン)。

誰よりも速くなった上で、自分以外の全てを遅くする。バフとデバフを同時に行うことで何者も先生を追い越すことはできない。そして俺はスイーツを奪われ続ける……いや変則的に奢ってるだけなので別にいいのだが。

とはいえ、別に俺は俺より速い奴がNPCにいるから気に食わねえ、とかそういうことではないのだ。そんなものは運営の匙加減ひとつだしな。

重要なのは今のレベル上限が本當にこの「シャングリラ・フロンティア」というゲームにおける到達限界なのか、そして……プレイヤーが到達しうる最速が、本當に臨界點なのかということ。

このゲームは単にレベルを上げてステータスを割り振るだけだと効率が悪い、という奇妙(シビア)なシステムなのだ。行が次の強さにつながり、あるいは「知っている」事が強さに直結する。まるで一挙一にフラグが立つような……

「しかし先生には追いつけない、目で追うのが一杯……!!」

思考加速スキルを使いに使いまくっているおかげか、かろうじて超越速適用中の世界でも先生のきは等速で認識できる。だが俺自きはよくて0.75倍速といったところ、ゼノン理論はターン制と行限界が前提であって眠らないウサギに亀は勝てない……先生はアキレウスかもしれないが。

「先生、自分は一どうすれば……!!」

「……………私(わたし)は別(べつ)に教(おし)えることは得意(とくい)ではない」

とはいえ、とタルトの最後の一欠片を口に放り込んだ先生はひょいと椅子から降りると俺の前に立つ。見上げるのはお気に召さないようなのでそっと膝立ちになる。

「とはいえ、私(わたし)はサンラクの指導役(しどうやく)なので」

先輩風で暴風警報出ますよ先生、という言葉を強靭な理で飲み込む。世界最速のからの授業なのだ、謹聴謹聴。

「サンラクは、私(わたし)を目(め)で追(お)えている」

「そっすね」

「理解(りかい)できるなら……あとは、からだの問題(もんだい)」

「というと」

「……詳細(しょーさい)が足(た)りてない。できるサンラクをサンラクが想像(そうぞー)できてない」

育じゃなくて哲學の授業になってきたな。

なにやら我思う、故に我在りとか言い出しそうな流れになってきたが、世界最速の先生が言うなら白も黒だし水は油と混ざる。

「どんなふうに速(はや)くなりたいか、なにになりたいのか、なにがしたいのか……それができる自分(じぶん)を想像(そうぞー)する」

程……程?」

「飛(と)び方(かた)を知(し)らない鳥(とり)なんていない……想像(そうぞー)できない速(はや)さには、どれだけ走(はし)っても追(お)いつけない」

「…………程、」

さっぱりわからん。想像力が足りてない、と言われているのは分かるが………

「わかったならよし」

「あざっす(ティーアス)先生」

本當は何も分かっていないのだが、それを口にしたら好度がゴリっと下がりそうなので理解した、ということで行くことにした。

……

…………

………………

「ってなわけでさぁ、次のエンドコンテンツ予想で聞いてみたんだけど今になって改めて考えるとこれってゲーム的にはぐらかされた(・・・・・・・)んじゃねーの? って気がしてきたんだよな、どう思うよサバイバアル」

「テメェしれっとティーアスたんとマンツーマンのの授業マウント取りやがったか? あ゛?」

どっちかって言うと今はマウントを取ってるんじゃなくて料金を取り立ててるんだがな。

貓耳フード付きパジャマの(ティーアス)先生の寫真(スクショ)をちらちらと見せつけてサバイバアルから金をけ取りつつ、話を振ったのだがサバイバアルのは額に青筋を立てていた………手はよどみなく金を用意していたが。

「なんていうかお前のそういうところを咎めだすと一晝夜罵り続ける事になりそうだから今は置いといて……実際どう思うよ、レベル150ってどうにも中途半端あるじゃん?」

「……ま、言いてえ事は分かる。だが今のところはそれがエンドコンテンツなんだからどうしようもねぇだろ。アプデ待てよ」

「まぁそう言われるとそれまでなんだが……」

口を開けば極論と曲論ばっか言ってるくせにこういう時だけ正論言いやがって。

「つってもまぁ、ティーアスたんもそこまで難しいこたぁ言ってねえだろう。スキル派生は実際の経験が関わってくるしな、何かしらの條件で解されるスキルもあるだろうよ」

「まぁそうなんだよなー……」

「サンラク」は機力にリソースの大半をぶち込んでいるので、常に何かしらで加速した狀態を維持できるのが強みだ。で、當然そこそこの數の「足を速くする」「空中ジャンプ」「壁に立つ」系のスキルを持っているわけだが……その中に、何故かずっと狼関連のワードで強化され続けるスキルがある。

十中八九、”奴”とのエンカウントや戦闘が何かしらのフラグになっていそうなスキル、つまりこのゲームは単純作業でレベリングしたレベル100と激戦を勝ち抜いたレベル80には大きな隔たりがあるということ……それを踏まえて先生の金言を考察すれば………

「うーん…………おうサバイバアル」

「なんだよ」

懐から取り出しますは、対著せ替え隊用の蔵っ子スクショ「甘いと思ったら結構すっぱくて極力表には出してないが隠しきれてない(ティーアス)先生」のスクリーンショット………その大部分を手で隠しつつサバイバアルにチラ見せしながら問いかける。

「お前半日でいくら稼げる?」

「王の首だって獲ってきてやるよ」

「いらん、人間とか換金効率悪いだろ」

「違いねえや」

あのヤバ刀に封じ込められた何者かの力添えで、世界最速の風になれた。

だが、すったもんだのてんやわんやで黒雷は失われ………一言で言えば本調子じゃない。

ならどうするべきか? 今あるものでどうにかやりくりするしかないだろう。

「外付けの雷を失ったんなら自前で用意するしかねぇよなぁ?」

さぁて………待ってろエルク、連結ガチャの時間だぜ。

蔵っ子スクショシリーズ

他にも何枚かあるが、これを流通させた場合(主に著せ替え隊の)、社會治安がゼロ以下になる事を危懼して封印されているスクショ。

    人が読んでいる<シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください