《悪魔の証明 R2》第43話 030 ミリア・リットナー(2)
人數がないながらも、大きくざわめく観覧席。その喧騒渦巻くステージ上を、スピキオは悠々と歩き出す。
「ああ、さらにお教え致しますと、ご家族のおひとりが同級生の恐喝で逮捕されましたが、天地先生――あなたは、警察に賄賂を渡しこれを無罪放免釈放させたことがある。これもいけませんね。いくら上級國民とはいえ、何でもお金で解決しようとしては……」
くるりとを翻し、額から大汗を流している天地の方へとをやった。首を軽く何度か橫に振る。そして、コツコツと革靴の音をさせながら、ゆっくりと前へと進んでいった。
「……これだけなら、まだ良かったかもしれませんね。ですが、これだけで、あなたの悪行が終わるわけではありません。もちろん、まだまだあります。次にあなたは大學の単位取得を盾にとり、學生のを……これだけで 勘のよろしい會場のみなさんも想像ができるでしょうから、この件についてはこれで割を致しますが……」
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スピキオは言葉を最後まで述べず途中で切ったが、彼の述べた通り、天地がその後何をしたかなど誰にでも想像はつく。
「証拠はあるのか? 証拠がなければただの――ただの言いがかりだ」
汗をハンカチで拭いながら、天地は言う。
「……よろしいのですか、証拠をお示ししても? 何せ私は今超能力を使っているだけですから、無論証拠という観點では、今は持ち合わせておりません。あくまで、今は、ですがね。ですが、あなたがそのように言われるのであれば……」
機械音聲を不気味に揺らしながら、スピキオが含みのある臺詞を吐く。
「……わ、わかった。おまえの超能力は、本だ」
天地はあっさりと敗北を認めた。
機の下から鞄を持ち上げ、そそくさと帰り支度を始める。
「ミリア。何だ、あれは?」
隣で靜かに観覧していたクレアスが、天地の醜態を見たせいか気の抜けた聲をあげる。
「――途中からわかってはいたけれど、ホットリーディングね」
「ホットリーディング……?」
「戦いはこの対戦が始まる前から始まっていたということよ」
そう答えてから、やれやれといったじで天を仰いでいるスピキオに目を細めた。
彼にとってはその態度も計算づくで、すべては鼻から仕組まれたことだったのだろう。つまり、天地は最初から――この會場にる前から罠にはめられていたということだ。
「なあ、ミリア。それはどういうことだ?」
クレアスが眉をし顰めながら訊いてきた。
「……スピキオは手下を使って、事前に天地の調査を行っていたと思われるわ。だから、天地の個人報を言い當てることができたの。通常、シッターと呼ばれる騙したい対象……ここでは霊師とかに相談に來る人たちのことね。事前に彼らの報集めるのが、端的にいうホットリーディングの概要なのだけれど――その霊師もどきのスピキオは、それを利用して天地をハメたのよ」
「そんな単純なことだけで、天地を陥れることに功したのか?」
私の説明に、クレアスは深く吐息をらした。
「クレアス、ホットリーディングはそう甘いものじゃないわ。社會的地位の高い者の信頼を地に落とす常套手段よ。スピキオが公表した天地の報は刑事的なことだけではなく、わざわざ下世話な報もれてあったでしょう? 刑事事件であれば、天地はまだ何とでもできたのかもしれない。それにおそらく途中でホットリーディングされたことにも気がついたはずだわ。でも、もうあの手の報を含みとはいえ公にされては、抗いようがなかった。刑事事件はまだ裁判という砦があるけれど、醜聞報の方はすぐに社會的制裁を食ってしまうから」
「ホットリーディングか、なるほど。なんか響きが格好いいな」
クレアスが妙なところで心する。
これを聞いて、やはりが人とは違うのだろうかと私は訝った。
「……名前だけね。実際はとても地道な行為よ。周囲に聞き込みに回ったり、シッターを尾行したりして報を集めるの。報を得るためにゴミ箱をあさったりするときもあったりするわ」
気を取り直して、彼に説明した。
「……やるねえ、仮面の彼」
「でなければ、トゥルーマン教団青年活部の筆頭なんかやってないわよ」
吐き捨てるかのように言葉を返した。
「けど、あの天地とかいう教授も不運だな。自分の関知しないところで人に知られたくない報を集められて」
クレアスは天地に同の目を向ける。
「まあ、不運といえば不運だけれど――自業自得だわ」
そう呆れ聲で言ってから、私は頭を大きく振った。
次に、トゥルーマン教団の手口を暴くどころか、逆に自分の恥部を世間に曬された天地へ軽蔑の視線を送る。
をめて會場から立ち去って行く天地のその背中は哀れそのものだった。
ステージの上のスピキオも、また呆れたじで翻した両手をの位置まで上げていた。
「ミリア、まさかとは思うが――超能力懐疑論者ってみんなあんなじではないだろうな? レイって先生や君がいくら優秀でも、周りがあんなのだとスピキオとやり合うのは厳しいんじゃないか。それとも、他に誰か優秀なやつでもいるのか?」
クレアスが尋ねてきた。
「まあ、うちにもシロウって頭の悪いやつとか、ジョン・スミスって何考えているかわからない小デブがいるけれど……あそこまでの馬鹿はないわ」
と言ってから、また何度目かの溜め息を吐いた。
「さあ、ミリア。俺たちも帰ろうか。君の家に行こう」珍しく、クレアスの方からってきた。「積もる話もあるかなら。それにまた、チームスカッドの戦闘トレーニングを教えてあげるよ」
「ごめん。私は先生に今回の報告をしなければならないから、今日はここでお別れ」
し殘念だったが、その申し出を斷った。
「そうか。ま、じゃあ、明日の朝だな」
たいして気にする様子もなく、クレアスはあっさりと別れの言葉を述べる。
しは寂しがってしいものだが……
彼の格から考えると、まあ、こういう発言をするだろう。
若干どころではなくを締めつけられる。
だが、私は明るい聲で言葉を返すことにした。
「うん、明日の朝、また私のバイト先で。でも、今すぐお別れってわけじゃないよ。駅前までは一緒だからね」
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