《【書籍化】え、神絵師を追い出すんですか? ~理不盡に追放されたデザイナー、同期と一緒に神ゲーづくりに挑まんとす。プロデューサーに気にられたので、戻ってきてと頼まれても、もう遅い!~》第十四話「栄の第一歩 1」
ついに迎えた企畫審査會の日。
會議室に捨て企畫の書類を並べている最中、俺はふいに背中に鳥が立った。
真宵が脇に抱えていた見知らぬ企畫書(・・・・・・・)を見たとたん、目が釘付けになってしまう。
「おい真宵。それ、見せろ」
「部長!? いや、あの、それは!!」
巧妙に隠しているようだったが、俺の目はごまかせない。
審査員の人數分はあろうかという書類の束を奪い、そして戦慄した。
「デスパレート……ウィザーズ? この企畫書はなんだ、真宵っ!? 俺はこんなものを作れと命じたか?」
「あの……ち、違うんです!」
「何が違う、だ……。こんなもの……」
これは売れる。売れてしまう。
表紙に描かれている絵を見ただけで、瞬間的に確信してしまった。
こんなもの、ここにあってはいけないっ!!
俺の栄の第一歩、こんな所でつまづくわけにはいかないのだ!
とにかく即刻、この企畫書を隠さなくてはならない。
……いや、この世から抹消しなくてはならない!
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俺はすかさず、近くにいる部下に企畫書の束を手渡す。
「おい。これ、シュレッダーにかけて來い。業務命令だっ!」
「あああ……待ってください!」
真宵は悲鳴を上げるが、俺は部下に「行け」と伝える。
これで一安心。
……そう思った時だった。
「碇(いかり)くん、何かあったのかね?」
――らかくもあるが、重々しい男の聲。
ハッとして顔を上げると、白髪じりの男が會議室の奧から俺をじっと見ていた。
「鬼頭(きとう)局長……。い、いえ、なんでもございません」
鬼頭局長。
我がユニゾンソフトの『コンシューマゲーム開発局』の局長であり、俺を部長に推薦してくれた大恩人。
今回の企畫を通すことについても々に話がついている。
それなのに、大事な會議の前にこんな醜態(しゅうたい)をさらすとは、我ながら不用心だった。
「神聖な場で慌ててしまい、申し訳ございません。……無関係の書類が混じっていたので捨てに行かせたまでのこと」
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「そうかそうか。まあ落ち著き給え。完全新作の審査は我がグループとしても重要だ。碇くんの企畫も楽しみにしているからね」
鬼頭局長はゆったりと笑った。
改めて見回すと、この広い會議室にはそうそうたる顔ぶれが並んでいる。
我が社の各事業局の局長のほか、親會社ルーデンス・ゲームスのプロデューサー陣が勢ぞろい。
この正念場を乗り切らなければ、俺の栄はありえない。
そしてプレゼン側には俺と真宵の二人。
真宵は捨て企畫のプレゼンのために呼んだわけだ。
俺は気を引き締め、局長たちに一禮する。
「では本日の企畫審査會、よろしくお願いいたします」
◇ ◇ ◇
今回の企畫審査會で検討に上がる企畫は三本。
そのうち二本は真宵に作らせた捨て企畫だ。
新人のつたないプレゼンも予想通りに効果を発揮し、二本目の審査を終える頃には場の空気は冷え切っていた。
「いやぁ、とんだお目汚しになってしまいましたな。事前にお伝えしていたとはいえ、さすがに新人の企畫はも多く、誠に失禮いたしました」
「いやいや、碇くん。これも一種の武者修行だと聞いておるよ。……真宵くんといったかな? 若々しさにあふれて微笑ましかった。若者に経験を積ませようとは、碇くんも後進の育に余念がないな」
「新人には勿ないお言葉。先ほどまでの鬼頭局長の厳しいご指摘、真宵にもいい勉強になったと思います」
當の真宵を橫目に見ると、すっかり意気消沈してうなだれている。
くく。
俺に黙って企畫書を作った罰だ。
本來ならプレゼンを手厚くフォローしてやるつもりだったが、裏切り者には用はない。
もうお前にチャンスはやらんから、そこで慘(みじ)めったらしく首(こうべ)を垂らしていろ。
……さて、ここまでは全て計畫通り。
俺の『本命企畫』が最も輝いて見えるように、わざとダメな企畫を用意したわけだ。
問題はここから。
俺の企畫書は、井張のアホのせいで完璧にはできなかった。
仮素材でを埋めたものの、指摘されないことを祈るばかり。
なによりも、捨てさせたはずの真宵の企畫(・・・・・)が頭にこびりついて離れない。
表紙を見た瞬間に悪寒が走ったことは、今までなかった。
いつまでもまとわりつく気配を振り切ろうと、俺は聲を張り上げる――。
◇ ◇ ◇
「……という企畫でありまして、かっ軽々と、十萬本の販売本數を超え、わが、我が社、我がグループに貢獻できるものと……考えております」
ようやく一通りの説明を終え、一息をつく。
まるで酸欠狀態だ。
俺としたことが、こんなことはあり得ない。
企畫のプレゼンを終了した頃には、疲労で頭がもうろうとしていた。
「碇くん……大丈夫かね?」
「はぁ……。いえ、ご心配なく。それよりも、審査を……お願いいたします」
そして局長やプロデューサーたちの言葉を待つ。
鬼頭局長には事前に企畫書を見せ、承認をいただいている。この審査會はあくまでも儀式的なもの。
なのに、この不安はなんだ……?
「ふむ。碇くんの企畫はそつなくまとまっていて、いいんじゃないかね」
「鬼頭局長! あっ……ありがとうございます」
「発売後の運営計畫はうまくいきそうかね?」
「はい、もちろんです! スマートフォン用のRPGの運営実績もあり、チームもしてきております。ご期待に応えられるかと」
行われた質疑応答はあくまでも念押し程度のもの。
鬼頭局長は満足そうにうなずいている。
他の局長たちも同様のようだ。
無事にプレゼンを終えられて安堵する。
これでようやく採決がとられる。
そう思った時、一人の男がおもむろに手を挙げた。
「その運営実績とやら、ボクはちょっと心配だな~。今なんて、ちょうど炎上中じゃ~ん」
その若い男はニヤニヤしながら銀髪をかき分ける。
親會社ルーデンス・ゲームスのプロデューサー、阿木(あきない) 雅(みやび)。
擔當したゲームがヒットしているせいで態度がデカい男だ。
伝統ある我が社の企畫審査會でこうも軽薄な言をとられると、不愉快でたまらなかった。
しかし親會社のプロデューサーである以上、不快をあらわにすることもできない。
「あのですね。炎上と言いましても、それはイラストの出來の悪さに起因しておりまして……」
「あの炎上をイラストだけのせいにするんだぁ。追加レアリティのせいだと風の便りに聞いたんだけど?」
「そ、それは別のプロジェクトのこと。この企畫と関係ないでしょう?」
「そうだけどさぁ。同じ人が関わるんなら心配なんだよね~」
そして阿木は俺の企畫書のページを大きく広げた。
「あと、気になるのが絵ね。……これ、ボクの言ってた課題が解決されてないんだけど」
くそ、目ざといな。
俺はついつい舌打ちしてしまう。
どうやら井張のアホの力不足に気付いたらしい。
「ああ、申し訳ありません。ごく一部にの殘る絵素材がございますが、もちろんプロトタイプの中で練り上げていきますのでご安心を」
「いやいや~。ごく一部っていうか、全部なんだけど~?」
「全部……ですと?」
なにを言われたのか分からない。
仮素材はごく一部で、そのほかは俺が念りにチェックしたはずだ。
すると、俺と阿木のやり取りを怪訝(けげん)な顔で見ていた鬼頭局長が口を開いた。
「なんだね阿木くん。……その『言っていた問題』とは?」
「ああスミマセン、鬼頭局長。……実はボク、先日こちらにお邪魔した時に途中経過の絵を見ちゃったことがありまして。ついつい、助言しちゃったんですよ~」
「ほう。助言とは?」
「『みんなに好かれそうな絵』だけど、ターゲットにちゃんと刺さるか心配……って、言ったんです~。だって今回想定しているメインターゲットって『小學生高學年男子』ですよ? その『高學年』ってところに響くのかがカギだったんですけどね~」
なにを言ってるんだ、この阿木のボケが。
よりにもよって、鬼頭局長に何を吹き込むんだ!
局長も局長だ。
そんな戯言(ざれごと)に耳を貸す必要はない。
それなのに、局長は俺の企畫書をまじまじと眺め、思案し始めた。
「ふぅむ。阿木くんに指摘されると印象が変わるな……。碇くん。この絵で売れる保証はあるのかね?」
「いや、そう言われましても……」
こんなことを問われるなんて想定していない。
だいたい『萬人け』の何が悪い?
多く売るには、より多くの客が好ましいと思う絵にするべきだろう?
子供はいつまでも穏やかで、子供らしいゲームを遊ぶべきなのだ!
その瞬間、忘れていた悪寒がふいに襲い掛かった。
真宵の、あの沒収した企畫(・・・・・・)……。あの表紙の絵が頭をちらつく。
ターゲットに刺さる絵。それはまさか、あのような絵を指すのか!?
己の信念を揺らがせる妄想がちらついてうっとうしい。
まったく亡霊のようだっ!!
俺はその妄想を必死に追い払った。
認めるわけにいかない。
捨て企畫を用意してまでこの會議に臨んだんだ。
俺の努力を無駄にするものか!
「俺の企畫は、我が社のブランドイメージを何よりも尊重して作り上げたものだ! これを採用しないなど、我が社の歴史を捨てるも同じ。この企畫こそ、最良の選択なのだ!」
「碇くん、落ち著きたまえ」
「しかし鬼頭局長。対案があるわけでもないでしょう? 出せたとしても、この真宵のようなろくでもない企畫が上がってくるだけです。ここは俺を信じて……」
その時、背後でけたたましい音が鳴り響いた。
呆気に取られて振り向くと――そこには一人のが立っている。
の丈ほどの抱き枕をかかえる若い。
それは、まぎれもなく……夜住 彩だった。
「おっおっ、おじゃましまーっす!」
「貴様! ここは神聖な企畫審査會。お前のような無能がっていい場ではない!」
一喝するものの、夜住は俺の聲が聞こえてないのか、會議室の奧へ視線を送っている。
そしてどこか一點を見つめたかと思うと、急に走り出した。
なにをする気だ?
腕の中にはいつも持っている抱き枕ひとつ。他には何もない。
狙いがさっぱり分からないが、とにかく行かせるわけにいかない。
俺はとっさに夜住へ駆け寄る。
「待て! 早く出ていけっ」
「彩ちゃん! ここは僕が抑える。行って!」
「なんだ真宵、邪魔だ! 離れろ!」
真宵は俺に飛びつき、羽い絞めにしてくる。
この男、見かけは華奢(きゃしゃ)なのに意外と力が強い。
これが若さか? それとも俺が老いただけか?
けなくなった俺の橫を、夜住はわき目もふらずに通り抜けていった。
「あ、あ、あのっ! プ、ププ、プロデューサーさんでしょうか?」
「ビックリしたなぁ~。そうだけど、なんだい?」
「見てしいがあるんですっ!」
夜住は阿木の前に立つと、おもむろに抱き枕の中に手をツッコむ。
そして取り出されたのは書類の山――。
それは俺が真宵から取り上げたものと同じ企畫書の束。
表紙には『デスパレート ウィザーズ』と書かれていた。
【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
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