《【書籍化】え、神絵師を追い出すんですか? ~理不盡に追放されたデザイナー、同期と一緒に神ゲーづくりに挑まんとす。プロデューサーに気にられたので、戻ってきてと頼まれても、もう遅い!~》第二十二話「最強の布陣(仇敵の転落 1)」

『ディレクター』

……それは創作の現場における王様。

世の中の奴らはプロデューサーがすべての指示を出してるだなんて勘違いしてそうだけど、あれは金勘定と宣伝が役目の商売人なんだよねぇぇ。

ゲームが誰のおかげでできてるかって言うと、それは間違いなくディレクター様のおかげなんだよ。ぬふふ。

そしてこのぼく、伊谷見(いやみ)ディレクターの時代がついにやってきたってわけ。

鬼頭局長直々のご指名ともなれば、將來は約束されたも同然なのさ。

「……あの、伊谷見さん。お客様が到著されました」

応接室の扉がノックされ、の社員が顔をのぞかせた。

「……ディレクター」

「えっ?」

「伊谷見ディレクター(・・・・・・)と呼びなよぉ。失禮じゃないの?」

「も、申し訳ございません! 伊谷見ディレクター、お客様が到著されました」

「ぬふ。通して」

まったく、敬意が足りないよね。

今日はぼく(・・)の監督作品『デスパレート ウィザーズ』のキックオフミーティング。主要スタッフの顔合わせと開発の立ち上げを宣言する、大事な日なんだ。

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コアメンバーがそろってるのに、ぼくの立場を曖昧にされては困るんだよねぇ。

すりガラス越しの壁向こうを見ると、の社員に連れられて、二人の男が歩いてくる。

ついに來たね。

この二人こそ今回の企畫の目玉。外部の人気作家というわけだ。

室した二人の男は、ぼくら一堂に向かって禮をする。

「腳本家の江豪(えごう)だ。劇場公開中のアニメ『終焉のカルマ』では原案と腳本を擔當させていただいている」

「おお、あの!」

「拝見しましたっ。面白かったです!」

予想通りにざわつく応接室。

髭をたくわえた彼は、アニメ業界でも引っ張りだこの人気腳本家。彼の手腕にかかれば、さぞや壯大で魅力的な世界と語が紡がれるか……。

今から楽しみだねぇ。

そしてその隣、貓背気味の細い男が続いて禮をする。

「漫畫家の……仙才(せんさい)です。えっと、あの。月刊年ジャックで連載を……」

「知ってますっ。デビュー當時からのファンです!」

「先生のスタイリッシュなキャラ、絶対に子供たちにウケますよぉ~!」

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こちらもスタッフ全員が好反応。

背を丸めてオドオドしているが、彼は若くして一線で活躍する人気漫畫家。卓越したセンスとネームバリューでメインターゲットの心をわしづかみにしてくれるはず。

なによりもキャラクターデザインなんて重要な仕事、社の新人デザイナーに任せるわけにはいかないからねぇ。

こんな豪華なゲストを呼べるなんて、さすがは鬼頭局長さまさまだよ。

「……さて、今日は我がユニゾンソフトの期待の新企畫『デスパレート ウィザーズ』のキックオフですよぉ。このドリームチームで目指すはミリオンセラー! まずは企畫概要と開発制の説明をこのぼく、伊谷見ディレクターからお話させていただきますよぉぉ」

照明を消し、スクリーンに映し出されるのは企畫書のスライド。

新人たちの名前はちゃんと消して、改めてこのドリームチームの面々の名前を連ねてある。

企畫書の絵に食いつくスタッフの顔に満足しつつ、ぼくは説明を続けた。

◇ ◇ ◇

「……とまぁ、以上が企畫概要の説明となりますよぉ。ここまでで質問はぁ?」

説明をいったん區切り、メンバーの反応をうかがう。

すると、さっそく江豪先生が手を挙げた。

「私はゲームには詳しくないが、なかなか面白そうと思ったよ。……ところで現狀の企畫だと語の要素が希薄に思えるんだが、私は必要かね?」

「そんなことありませんよ江豪先生ぇぇ~。昨今のゲームは多人數プレイのゲームであっても、ストーリーを楽しめる一人用の『キャンペーンモード』はまれてましてね。先生のお力を発揮いただければと~」

「ふむ。ではしっかり力をれる必要があるね。私の方でもいろいろと考えてみるよ」

江豪先生は満足そうにうなずいてくれた。

さすがはぼくのナイスフォロー。

メンバーのモチベーションを維持するのもディレクターの役目だからね。

「……仙才先生はいかがですかぁ?」

「いや……あの。僕は特に。……もう素敵な絵があるし、僕の出番はなさそうだなぁって」

「何をおっしゃいますかぁ! うちで用意したのは、あくまでたたき臺(・・・・)ですからぁ! 特にキャラなんて、先生のお力の前では霞んで飛び散るゴミも同然ですし~」

「……はぁ。……負けないように、頑張ります……」

仙才先生は背中を丸めてうなずくだけ。

やれやれ、こっちは一筋縄ではいかなそうだねぇ。まぁこれでも漫畫界の第一線で活躍し続けてる人だ。機に向かえば問題ないかもねぇ。

「じゃあ、ほかに質問はぁ?」

ぼくは改めて周囲を見渡す。

すると一人から手が挙がった。

「あ、じゃあプログラマの僕から。資料ではれられてなかったですけど、ゲームエンジンの選定はどうします?」

「お、いい質問!」

ちょうど聞いてほしかった質問ににんまりする。

ぼくは用意していたスライドをスクリーンに映し出した。

「今回の開発に使うのは、我が社の技の結晶『ユニゾンエンジン』だよぉ!」

スライドに『ユニゾンエンジン』のロゴマークが映し出されると、室からは「おぉ~」とどよめきが起こった。

それもそのはず。

これは鬼頭局長の肝いりで開発された、萬能のゲームエンジンだからだ。

「鬼頭局長からは『自らの未來は自らの力で切り開くべし』とのお言葉もいただいておりますよ~」

「自社エンジンなら全社的なサポートも萬全。早いレスポンスが期待できますね!」

ゲームエンジンとは、効率的にゲームを作り出すための開発の土臺。

昔は作るゲームにあわせてプログラムを一から作ってたんだけど、それだと最近の大規模なゲーム開発ではコストがかかりすぎる。

だからどのゲームでも共通するプログラムやツールをあらかじめ用意して、効率よく作れるようにしたのがゲームエンジンというわけだ。

「特に今回のゲームは派手な魔法の映像が肝になるわけだし、都市がリアルタイムで崩壊する派手さも演出したいんですよぉ。そんな時こそ萬能の『ユニゾンエンジン』の出番って言うわけ」

「確かに! 最先端の理シミュレーションとエフェクトシステムを備え、大量の素材データ(アセット)を管理できる。我が社の技の結晶ですものね~」

された企畫書と、これ以上ない最強の布陣。

そして萬能の『ユニゾンエンジン』。

ぼくには見える。輝かしい未來が――。

◇ ◇ ◇

「『ユニゾンエンジンは萬能』、『自社エンジンだから萬全のサポート制』……きっとそんな期待で心躍るんだろうけどさ。ぶっちゃけ高速化が未完なんだよねー」

追い出し部屋でパソコンを作しながら、田寄さんはつぶやいた。

作する畫面には『ユニゾンエンジン』の畫面が開かれている。

「今から作ろうとしてるゲームって、1/60秒(1フレーム)の判斷が必要になるアクションゲームだろ? ユニゾンエンジンって多機能だけど、処理がまだまだ遅いのさ。例えるなら『キャンピングカーでレースに出る』ぐらいに間抜けな結果になるだろうね~」

最近のゲームの作り方を田寄さんから教わっていた時、追い出し部屋仲間のプログラマさんから「うちの會社でもオリジナルのゲームエンジンを作ってるよ」と話題がでたのだ。

その『ユニゾンエンジン』の名前が出た瞬間に、田寄さんはなぜか苦笑いしていた。

「社で期待されてるのに、未完……?」

「ははは。まあ彩ちゃんは知らなくても當然だよ。……それを知ってるのってエンジンの擔當者以外だと、アタシら追い出し部屋組ぐらいなもんだからね~」

そして教えてくれた話によると、鬼頭局長は社でエンジンの使用実績を作るため、不都合な報を隠してるらしい。

エンジンの擔當者さんはきっと完を急かされてて、ストレスで胃にが開くんじゃないかなって、田寄さんは心配していた。

「田寄さんって、すっごく報通~!」

「そんなんじゃないさ。……だって、エンジンの中心部分はアタシらが作ってたんだもん」

田寄さんはさらりと言ったけど、真宵くんは驚きの聲を上げた。

「えっ、ゲームエンジンを作った? 田寄さんって何者なんですか!?」

「ただのプログラマさ」

すると、仲間のプログラマさんが「スーパープログラマだよ」って付け加えた。

「スーパープログラマ!? ゲームの仕様に詳しいから、てっきりプランナーだとばかり……」

「はは。実際に組み上げるのはプログラマだからね。詳しくて當然さ~」

田寄さんは苦笑しながら、パソコンの中で別のエンジンを立ち上げた。

畫面には『スフィアエンジン』と書かれている。

「今は『ユニゾンエンジン』って名付けられてるけど、コアになってるのはアタシらが作った『スフィアエンジン』なんだ。元々は神野さんの新作用に作ってたんだけど……」

そして田寄さんは暗く神妙な顔になる。

「……鬼頭局長に反発したら、すぐさま追い出し部屋行き。エンジンは未完なのに取り上げられて……」

その表はいつもの彼らしくない。

なんだか怖くなるほどだった。

「あの、田寄さん……」

「あ、ごめんごめん。まぁ々あっただけさ! 會社を辭めようと思ったこともあるけど、『スフィアエンジン』だけが心殘りだったのさ~。……もう一度れて嬉しいよ。彩ちゃん、ありがとーね」

田寄さんだけじゃない。

他のプログラマさんたちも私と真宵くんに頭を下げてくれる。

「未完のまま放置するなんて、エンジニアとして殘念でならなかったんです」

「ええ。諦めそうな時にお二人の頑張りで勵まされて、やる気になりました」

「機材管理室の長さんからの手紙にも、夜住さんの熱意に激したってありました。ありがとう!」

彼らの謝の聲がにしみわたる。

元々は真宵くんを元気づけようと思って始めたことだけど、想いはこんなにも広がっているんだ。

田寄さんも腕まくりして、こぶしを高く掲げた。

「じゃあ『スフィアエンジン』を鍛えなおそうか! 高速化を実現すればゲームの快が変わる。ゲーム作りの開始だよ!」

気合は十分。

私たちの開発が始まる――。

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