《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》Side:とある配信者編

皆さん年號いろいろご意見ありがとうございます!

あみだくじの結果(あみだくじシミュレーターなんてあるんですよ、すごくないですか?)、

天寧に決まりました!わーぱちぱちぱち!

――お父様、お話がございます。

突然響いた聲に、俺は思わず辺りを見回した。別に聲が聞こえたってなんら不思議はないんだけど、何故かよく響くし、容がこの狀況に不似合いだと思って気になったのだ。

次の瞬間、俺の視線の先に、黒いもやをまとった、豪華なドレスを著たが現れた。

次いで、「お前は……ペトラか?」と、そのに見覚えがあったらしいマカチュ子爵の聲。

ああ、マカチュ子爵の娘さん……ってことはこの騒の原因って噂されてる、無理心中の令嬢か。

――お久しぶりです。覚えていてくださって栄ですわ。正直、忘れられてると思ってましたの。

また隨分と喧嘩腰な……いや、當たり前か。彼は子爵に恨みがあってこの場に居るんだろうし。

「ふん……育ててやった恩も忘れた挙句、平民と無理心中だなどと恥さらしなことをして家名に泥を塗ったのだ、忘れたくても忘れられるものではないわ」

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――それもそうですわね。でも……、私がそうせざるを得なかったのは、お父様にも責任があるのだってこと、今日は分かっていただきたくて參りましたの。

「なんだと? 私のどこに非があったというんだ」

――あの事件を私が起こすし前……お父様が組んだ縁談ですわ。わたくしも貴族の端くれです、婚姻は政治的結びつきの為に行う覚悟は出來ておりました。その為の努力もしっかりとしてきたつもりです。ですが、お父様は……私をお売りになった。私にかかる持參金を払いたくないが為に、私が死ぬのを分かっていて黒い噂の絶えないあのお方との縁談を用意しました!!

「はっは、そんなもの、ただの噂じゃないか。私はお前の為を思ってあの縁談を組んでやったんだ。侯爵は齢七十を優に超えていた。結婚してもしの間我慢すればお前は未亡人になり、侯爵夫人として一生安泰だったものを……」

――噓をつかないでくださいませ! 私は侯爵様から直接、はっきりと!この耳で!噂の真相についてお聞きしたのです。持參金のけ取りどころか、むしろ侯爵の方がお父様に支払いをして私を手にれたのだと! その上、その後のことに関しては一切子爵家から抗議はしないことと、生死について一切問わないことを契約書にまとめて締結したこと。そして……過去の侯爵夫人方の末路についても……!

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――私がマークにしたことは言い逃れが出來ません。ですが、お父様が私の売買代金で私腹をこやして、私だけが死ぬのは許せませんでした。どうせ死ぬのであれば、貴方に一矢報いたかったのです。それで、侯爵様との契約はどうなりましたか? 白紙に戻って返金せざるを得なくなったのであれば、私としては喜ばしいのですが。

きな臭い話に、俺は耳を疑った。つまり、彼は自分が殺されることを察して、父親に復讐する為に自殺を図った? 一人で死ぬのが嫌で、マークを無理に連れていったということか。

――私がマークを巻き込んだことにより今、このような姿になっているのは自業自得です。ですが、こうなったからこそ、ようやくお父様を連れて行けると思うのです。お父様、一緒に地獄へ參りましょう?

笑いながら子爵に近付く令嬢。それまで馬鹿にしたような笑いを浮かべていた子爵も、最後の発言に泡を食ったように慌て始めた。おいおい、娘にした仕打ちと今の微塵も反省していない態度でなんで殺されないと思ってたんだ?

「何を馬鹿なことを! おい! お前たち何をしている!? 早くこの化けを何とかしろ!」

顔に焦りを滲ませながらそう子爵が怒鳴り散らすものの、く者は誰も居ない。

「そりゃそうだろ。中央はほとんどプレイヤーだから忠誠心なんて皆無だし。殘りないNPCだって、さっきの訳分からん命令で自分たちが駒としか思われてないのを突き付けられた訳だしなあ……自分の命をかけて守るとかないわ」

勿論俺も助けようと言う気は微塵もない。もともと戦闘に自信がなくて補給部隊だし、たった今周りをドン引きさせる程の下劣さが暴された子爵に、助けたいと思わせる要素は何一つもない。

むしろ配信をオンにしている今、子爵の最期を見屆けられれば、多なりとも視聴數が上がるだろう。そんなことすら考えている。

まさに進退ここに極まれり、と言った狀況か。子爵は誰の手助けも得られないと判斷すると、ようやく自分の腰に下げていた剣を抜いた。その様子に俺は、「一応帯剣はしてたんだなあ」なんて間の抜けた想を思わず呟いてしまった。

「幽霊に理攻撃って効くのかね」と呟いたのは俺の隣に居た見知らぬプレイヤー。いつの間にか、周りは観客プレイヤーで溢れ返っている。これだけの人數が集まっておきながら誰も助けないなんて、子爵の人のなさが凄まじい。

「さあ……効かない気がするけどな」とは俺の答え。そもそも子爵の手はぶるぶる震えているし、まともに剣を握れてすらいない。正直、このゲームを始めた頃の俺よりひどいレベルに見える。剣が令嬢に効果があったとしても、當たるかすら怪しいのではないだろうか。

しかしまさか、神も見て見ぬ振りとは。さっきまでまともにアンデッドの相手をしていなかったのに、あとで言い訳をする為なのか、急に働き出した。

まあ、そもそも子爵令嬢のことも見捨てて供養をしてやらなかった位だし、子爵のことなんか微塵も助けるつもりはないか。お布施も……このじだと全然貰ってなかったんだろうな。貰ってたら助けるだろうし。もしくはこれがもうちょっと高位の貴族だったら助けたのか?

哀れと言うかなんと言うか、子爵は必死に剣を振り回していたけれど、結局令嬢のをすり抜けるだけで、全く意味のない代だった。

そしてゆっくりと近付いてきた令嬢に抱き付かれ――子爵のは急に制を失い、ぱたり、と倒れ込んだ。何ともあっけない最期である。

子爵の様子を見ていた子爵令嬢は周りをゆっくりと見回し……、

――お騒がせして申し訳ありませんでした。私は先に失禮いたします。申し訳ございませんが、後片付けはお願いいたしますわ。

と、多分微笑みながら優雅に一禮して、彼もまた綺麗さっぱり消え去った。立つ鳥跡を濁さずとはこう言うことだろうか?

誰も口を開かず、しん、と辺りが靜寂に包まれた。と思ったのも束の間、突然カラン、ガチャン、ころころ、と甲高い音がそこかしこで聞こえ始め、俺は慌てて周囲を確認する。

「……終わった、のか?」とは誰の呟きだろう。とにもかくにも、アンデッドも一斉に頽(くずお)れ、あとに殘るは大量の骨と腐っただけ。後片付けのことを考えると何とも言いがたいが渦巻くもののひとまずは、

「「「終わったあああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」

とその場に居た誰とも分からぬ人同士、熱い抱擁をわしたのだった。

ちらり、と視線を右上に向けると、ゲーム時間は午前一時ちょっと。と言うことは現実時間では一時間半と言ったところか。なんだか、長いようで短いイベントだったな。まあ、まだ後片付けも殘ってるし、ギルドの評価とやらも確認しないといけない訳だけど。

「なにはともあれ、これでが食べられるようになる、か?」

俺はいい加減が食いたい。何が悲しくて現実世界同様に節約して侘(わび)しい食事をせにゃならんのか。

「あーでもしばらくはを食べられる気がしねえなあ……」と、腐ったをぼんやりと見つめながら、俺は獨りごちた。

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