《悪魔の証明 R2》第52話 036 クロミサ・ライザ・リュウノオトハネ(1)

管理人乙とか、wwwwwwとか、デブ早くしろよとか、巨キターとか、まだーとか、レイは俺の嫁など。とにかく下世話な文字が、タブレット端末の畫面の中を徘徊していた。

一目見ただけで畫配信サイトのアプリを閉じたくなるこのディストピア。下品極まりない人間たちによって至極適切に下品極まりない臺詞が書き込まれるこの番組。これが第六研サイキック・チャレンジ生放送である。

草むらの中にしゃがみ込んで映像をじっと見つめていた私は、反吐が出そうになる気持ちを抑え、コメントを非表示にした。

この文字を帯びた映像の正は、スマイルチャンネルという日本最大の老舗畫投稿サイトのものだ。

スマイルチャンネルの映像表示方法は、他の一般的な畫サイトと違い、視聴者が書き込んだコメントが畫面に浮かび上がるという仕掛けが施されている。

現在、スマイルチャンネルのサービスのひとつである生放送で第六研が主催するサイキック・チャレンジを中継しており、永遠のとして名高い私、クロミサ・ライザ・リュウノオトハネは、その番組をモニタリングしている最中だ。

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「スピキオの野郎」

と、図らずも永遠のに似つかわしくない悪態をつく。

タブレット端末から目を切った。

矢継ぎ早に、近くに生えている草木へと目を向ける。

「私のような可憐な乙を草むらに置いておいて平気とは、あのデスマスク。いったい、どういう神経をしているのか」

続けて、愚癡を零す。

帝都大學に來るときは、いつも駐車場の近くに広がる草むらの中にいるようスピキオに命令される。

毎回場所自は転々としているが、連れて行かれるのは常にその場所を変えた草むら。たまに気分を変えても形を変えた草むら。そして、今回もどこかの草むら。

先程まで帝都大學の駐車場を颯爽と歩いていたのだが、案の定途中でスピキオに呼び止められこの草むらに連れ出された。

その時が哀れみのような目をこちらに向けてきたが、彼に余計なを抱かれるまでもなかった。

スピキオから指示される容は、概ね想像がついていたからだ。

「クロミサ。君はいつもの通りここに殘れ」

草むらにるなり、さも當然かのようにスピキオはそう言い放った。

返す刀でタブレットパソコンを無造作に放り投げる。空中を舞うそのタブレット。それは、間もなく私の小さな手の中にぱさりと収まった。

あら、軽い。しかも新型ね。

と可らしく言うとでも思ったのか、この野郎。

私はスピキオを睨みつけた。

それにもかかわらず、スピキオは無表。といっても仮面をつけているので、それは當たり前だ。

「……そのタブレット型パソコンは、ラインハルト・テクノロジー社製の最新式のものだ。従來のものとは違いリモコンがついている。つまり、一定の範囲であれば遠隔作ができるということだ。どうだ、たいした科學の進歩だろ」

スピキオは、不況で停滯する科學の発展を揶揄するような言葉を吐く。

実にスピキオらしい皮だとはいえる。だが、そのような経済を絡ませた皮が私にとって面白いはずがない。

口を尖らせた私を気に留める素振りもなく、対面するデスマスク、もといスピキオは言う。

「新型でサイキック・チャレンジを観戦できるからいつもと違った気分だろ。マンネリを打破しようと私なりに考えてやったんだ。余談だが前のタブレットは捨てておいた。どうせ使わんだろう」

「え……あのタブレットにゲームデータ保存してたんだけど、移行してくれた?」

し聲を震わせながら、尋ねた。

タブレットの換自は構わないが、長時間かけて大切に街造りをしてきたゲームのデータが気になる。

「アカウントの引き継ぎはしてないからな。どこにも殘ってないんじゃないか?」

逆にスピキオは私に訊き返してくる。

「ちょ、ちょっと……」

愕然とした気持ちになり、思わず聲を失ってしまった。

そんなことはお構いなしといわんばかりに、

「ほら、リモコン」

短くそう告げ、先程のタブレットパソコンと同じようにリモコンを放り投げてくる。

當然、それはまたもや私の手の中に。

そうして、束の間、私は真っ白になったまま小さなリモコンを見つめることになった。

気を取り直してから、「説明書は?」と尋ねる。

このデスマスクの態度は確かに腹立たしい。

だが、ずっと喧嘩腰でいても仕方がないと思い直した。

「ない」平然と短い言葉でスピキオはその存在を否定する。「最近は説明書を付屬しないのが流行らしい。その端末も適當にいじればなんとかなるというれ込みだった。後は自分で何とかして、作をマスターしてくれ」

「何それ? 説明書がなかったら、リブートの方法とかわからないじゃない」

「……ああ、そうか。言うのを忘れていた」

スピキオはあまり申し訳なさそうに言う。

當然この後に謝罪の言葉を述べ、再起方法を伝えてくると思っていた。

だが、それは私の勘違いだった。

「サイキック・チャレンジのウェブサイトアドレスは前と変わっていない。ブラウザから前のアドレスにアクセスしろ」

彼が口にしたのは、ただの業務連絡。しかも、投げやりといったじの適當な説明だった。

この緩慢な態度は、元々腹に據えかねていた私の額に青筋を造らせた。

そして、

「タブレットはともかく、スピキオ……いいえ、スピキオさん。いい加減あんなのではなく、私をサイキック・チャレンジに連れていってくれませんかね?」

と聲を抑え気味に尋ねてから、私はし離れた場所にいる黒いリボンのを人差し指で示した。

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