《【書籍版・講談社ラノベ文庫様より8/2発売】いつも馬鹿にしてくるモデルの元カノも後輩も推しのメイドも全部絶縁して好き放題生きる事にしたら、何故かみんな俺のことが好きだったようだ。》2日目 その7

數日前にコミカライズかスタートしましたので是非そちらもご覧ください。

また、最近新作をアップしたのでそちらもよろしくお願いいたします。

駅前にいるという淺川からのメッセージを見て辺りをうろついていると、街頭のに照らされたしい黒髪が目にった。

いつのまにか服裝は著ではなくなっていて、上下共に黒で目立たないような格好。

細いパンツと夜の靜けさが噛み合って、洗練された雰囲気を纏っている。

「お待たせ。悪いな遅れちゃって」

聲をかけると、たちまちその顔に命が吹き込まれる。

「ううん。むしろ急いできてくれてありがとう。まだ1時間くらいは猶予あるよね?」

バックポケットからスマホを取り出し、電源をれて時間を確認する淺川。

白いは、彼のきめ細やかさを強調する。

「そうだな。8時とは言ってたけど、ちょっとくらい過ぎても平気だと思う」

「最悪、私の打ち合わせが遅れちゃったって言って誤魔化そ」

「なぁなぁで俺も許されるって作戦……いけるか?」

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事前に報告してあるであろう淺川は許されるが、果たして俺はどうだろう?

片山たちがどのタイミングで帰るかにもよるが、怪しい気がする。

「ふふっ……多分無理だね。それじゃあ、遅れないように早く行こ?」

真剣に考えている俺の姿が稽だったのか、彼は楽しげに笑っていた。

電車を使って數駅ほど移し、俺たちは京都駅に到著した。

なんでも京都駅には、京都タワーや京都市を一することができる空中徑路というのがあるらしい。

ネットの報では、アクセス方法が難しいと書かれていたが、100m以上もあるガラス張りの通路から見える景は思い出に殘るものになるだろう。

「えっと、まずはエレベーターで上がればいい……のかな?」

「そうだな。このサイトによると……」

二人してスマホを食いるように見ながら目的地を目指す。

アクセスが難しいと言われているだけあって、ノーヒントならまず見つけられない場所だろう。

ゲームで言うところの、行き方が謎すぎるけど一番奧に強いアイテムがあるところだ。

こういうのは、友達がいないソロプレイヤーにはまず見つけられないところだと、タケシくんだかユウジくんだかの力がなければあの武は手にれられなかったと、昔父親が言っていた覚えがある。

だが、現代人にはネットがある。

隠し通路だろうが裏ボスだろうが、むしろ嫌でもネタバレが目にってきてしまう。

そんなことはさておき、俺たちは無事に空中徑路に辿り著くことができた。

「わぁ……なんだかすごいね」

やや騒がしかった駅とは一転して、ここはかなり靜かだった。

存在自をあまり知られていないのか幸運なのか、俺たち二人以外には誰もいない。

「誰もいないね。場ってやつかな?」

「あぁ……いいところを見つけたかもな」

「そうだね」

浮世離れした、し近未來のある通路を二人で歩く。

先ほどの會話の後には何もなく、無言の時間が続いていた。

「なんで急に黙るんだよ」

「宮本くん、こういう靜かな場所とか綺麗な場所で話しかけられるのあんまり好きじゃないでしょ? …………あくまで予想だけど」

い時から、しい景を見ているときは、一人の世界にりこみたくなる。

その傾向は両親が亡くなってからさらに増したようで、もしかしたら目の前に集中することで、何も考えずに済むからかもしれない。

だが、俺だって常識のある人間だ。

わざわざ人と來ているのに、話しかけるななんて言わない。

「……當たってるけど、今はいいよ。何か話したい気分なんだ」

ふうん、と軽い返事をするばかりで、変わらず會話はないまま。

通路から見える景は間違いなくしいが、時折鉄骨がそれを阻む。

仕方ないことだが、思ったより不親切だなと考えていたそのとき、視界から鉄骨が消えた。

ちょうど京都タワーの前。この場所だけは、なにものにも阻まれずに景を見ることができる。

「ここが1番のおすすめスポットかな。綺麗だね」

「晝間だったら遠くまで見渡せそうだな。夜はタワーが主役みたいだ」

白くライトアップされている京都タワー。

淡いが、俺たちを歓迎してくれているようだった。

「…………ねぇ」

しばらくの間、二人は黙ってタワーを眺めていたが、その靜寂を邪魔しないような小さい聲で、淺川が聲をかける。

「私さ、頑張ろうと思うんだ」

「頑張る?」

「うん。前までは、どんな自分になりたいとか、これから目指したい自分の姿が薄かった。仕事もうまくいってるし、心配事もあんまりなかったから」

風もなく、二人だけの空間。

以前にも同じような狀況はあったが、今の二人にわだかまりはない。

俺は返事をしなかったが、淺川はそれを気にせずに話を続ける。

「でも、今はなりたい自分がある。葉えたい目標が、それを見せたい人がいるの。これって、長だと思うんだ」

何かを得ることが長だが、同時に、何かを得たいと思うことも長だ。

はるかに遠い道のりでも、一歩がどんなに小さくても。

それをみ、自分の足で歩き出した瞬間、それはもう長の一歩だと言える。

が何を目指していて、どんな行をしたかはわからない。

だが、その口ぶりからして、既に道を進んでいることは明白だった。

「それでね、今日は伝えたかったんだ」

「何を?」

謝を」

短い言葉の後、冷たくて細い手が自分のそれと絡みつく。

しかし、決してやましさや下心のあるではなく、手には力が込められていた。

驚いて淺川の方へ顔を向けると、彼は満足げな、晴れ晴れとした笑顔で俺を見つめていた。

「あの時、私に気付かせてくれてありがとう。頑張ってくれてありがとう。……ユウが頑張ってくれたから、私は長できるんだよ」

「………………あぁ」

が何を目指しているのかは分からない。

しかし、「あの時」というのがいつなのか、俺たちが今いるのは正しい場所なんだと言うことは、この手にかかる力強い決意から伝わってくる。

「まぁ、そのためには倒さないといけない子が二人もいるんだけどね」

「……格闘技でも習うつもりか?」

繋いでいた手が離れ、屈託のない笑みを浮かべている。

「違うけど、もし私が強くなったら、宮本くんのこと守ってあげるね」

「今の時點で俺より強そうだもんな」

「……一発喰らってみる?」

の危険をじた俺は、両手で謝罪の意を示す。

先程までの真剣な空気は解け、なんでもない話をしているうちに、通路はゴールを迎えた。

「楽しかったね。ただの通路だけど、心がすごく落ち著いた」

基地にしたいくらいよかったな」

「ね。時間はまだちょっとあるけど、宮本くんが怒られたら可哀想だしそろそろ帰ろっか」

ありがたい気遣いをけ、俺たちはエレベーターに乗り込む。

そして降下している途中、パンツの右ポケットにれていたスマホが振したのをじた。

淺川に一言斷って確認すると、それは片山からのメッセージだった。

「片山だ。何かあったのかな」

「二人ともいい雰囲気だったし、もしかしたら付き合ったっていう報告かもね」

「確かにな。それで、容は…………えっ?」

屆いたメッセージは極めて簡潔で『すまん。ダメだった』というものだった。

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