《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》1・プロローグ(上)

「エリアーヌ、偽の聖であるお前はもう必要ない!」

王宮に呼び出されたかと思ったら、いきなりこれですか。殿下。

ベルカイム王國の第一王子であるクロードは、私を見て心底軽蔑したような眼差しを送っている。

婚約者である私にこの仕打ち。

バカすぎて言葉が出ないんですが?

「クロード王子……必要ないとはどういうことですか?」

答えは大予想ついているけど、一応聞いてみる。

こういうのを聞くのって、お約束よね。

「言葉の通りだ。君は偽の聖として國を混させた。そのうえ僕を誑(たぶら)かした悪は、もうこの國に必要ないということだ」

「偽の聖……? に覚えがないのですが」

「ふんっ、この期に及んで往生際の悪いヤツだな」

クロードが鼻で笑う。

私はい頃、先代の聖がなくなったと同時に神からの神託をけ『聖』となった。

とはこの國で代々祈りを捧げる。

そして結界を張ったり、様々な神の加護を授ける存在だ。

これによって、王國は長年繁栄し続けてきたんだけど……一この王子はなにを考えているの?

「お言葉ですが、聖がいなくなればこの國は崩壊するでしょう。殿下は聖がどのような存在であるか、ちゃんと分かっているのですか?」

「はっ! そもそも最早、聖など形骸化(けいがいか)したものではないか。無意味な祈りとやらを捧げるために、お前にどれだけ稅金を使っていると思うんだ。そうやってお前は、王室から金をむしり取る詐欺師でしかない!」

詐欺師……?

の祈りの力は本のものだし、形骸化などと酷いことを言われる筋合いはないのだが……。

それに稅金って、最低限の生活費くらいしか貰っていないんですが?

クロード王子、あなたの方が贅沢三昧をしていますよね?

「殿下、それは誤りです。現に……」

「反論するな。その無意味な祈りはすぐに止めろ。お前が膝をつき、祈りを捧げている姿を見ているだけでも僕は鳥が立つ」

あれれー?

祈りを止めてしまって、本當にいいのかしら。

私が祈りを止めて、結界を消した場合……明日にでも強力な魔とかが國に乗り込んでくると思うけど?

王國で育てている農作とか、ろくに育たなくなると思うんだけど?

クロードは先のことまで見據えているのだろうか……まあしてないだろう。

だってこいつ、バカなんだから。

「そもそもお前と無理矢理婚約させられたことも、僕にとっては不本意なことだった。だが、聖と婚約するのが伝統だからと言われて……」

それはこっちの臺詞だ。

そう。私とクロードは一応婚約者という関係である。

なんでも、代々聖と王子は大人になったら結婚するものなんだーって。

だから今は病で亡くなってしまった王様も、元々聖としてこの國を守っていた。

最初はこんなイケメンと婚約だなんて! ってまあ、小さい頃の私は浮かれていましたよ。

しかしすぐに分かった。

こいつ、外見だけで中は空っぽのバカ王子なんだって。

格も悪かったし……出來れば今すぐにでも別れたかったけど、家のしきたりに従って仕方なく一緒にいただけだ。

クロードからそう言ってくれるなら、こちらとしても願ったり葉ったりのお話。

とはいっても。

「婚約破棄ということでしょうか? ですが……そんなことをしてしまえば、王子の面的にも……」

そういうわけにはいかないよね。

私の代で、その伝統を終わらせるのは、なんというか……抵抗あるし。

だから形だけの反論をしてみると、

「止めて!」

周囲にの聲が響き渡る。

「わたしのために爭うのは止めて!」

ああー、こいつ。なんか言い出したよ。

さっきからクロードの隣にいる

——レティシアこそが、クロードがさらにおかしくなった元兇であった。

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