《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》7・王國破滅への序章
クロード王子視點です。
その頃、クロード王子達がいるベルカイム王國では……。
「レティシア。やっと二人きりになれたね。嬉しいよ」
「わたしも嬉しいですわ」
クロードと、その人レティシアが部屋でを囁き合っていた。
「いやいや、今日の仕事は大変でね。やっと終わらせて、部屋まで戻ってこれたんだ」
「ふふふ。クロード王子は働き者なんですね。そういうあなたも素敵ですわ」
ベッドの上に二人で腰掛けて、二人は笑い合う。
もっともクロード王子は「仕事が大変」と言っていたが、実質三十分くらいしか働いていなかったこと——後の雑務はほとんど部下に放り投げていた——のであるのだが、レティシアのことで頭が一杯になっているクロード王子は、自を省みなかった。
「エリアーヌがいなくなって、せいせいしたね」
「あら。元とはいえ婚約者にそんなことを言ってしまって、よろしいのですか?」
「はは、問題ないさ。どちらにせよエリアーヌと無理矢理婚約させられていたのも、國の決まり事のせいだったからね。君が真の聖だと分かったら、婚約を解消するのも當たり前の話だ」
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「ふふふ、悪い人。エリアーヌ、クロードのことが大好きだったように見えるけど?」
「そうに違いない。でも正直好意を向けられるのも嫌だったよ」
もっともエリアーヌはクロードのことを全然好きではなかったのだが——そのことをクロード達が知る由もない。
「さあて、エリアーヌの話はもう止めよう。今日は一晩中、君を可がってあげるよ」
「楽しみにしていますわ」
と二人は言い合って、お互いの顔が接近していく。
そしてロマンティックな口づけを……。
「殿下!」
その瞬間。
部屋の扉がすごい勢いで開けられ、廊下から一人の騎士がってくる。
ロマンティックな雰囲気がぶち壊しだ。
「ノックもなしにるとは不躾すぎるぞ! なにを考えているんだ!」
「す、すみませんっ! し、しかし……どうしても殿下に報せなければならないことがありまして!」
全く……こいつはなにを考えているんだ!
クロードは憤慨するが、騎士の様子を見るにただ事ではないらしい。
話だけでも聞いてみるか。
「……それで、なんだ。大したことじゃなかったら、ただじゃおかないぞ」
レティシアとの大切な時間を邪魔されるなど……こいつだけではなく、家族もろとも打ち首にしなければ気が済まん。
騎士は「はっ!」と膝を突き。
「王都にドラゴンがり込んできました!」
「……は? ドラゴンだと?」
あまりにも非現実的な名前が出て、ついクロードは聞き返してしまう。
「なにを言っているんだ? ドラゴンといえば、最近では目撃報すらない。滅多に人前に姿を現さない、溫厚な種族ではなかったのか」
「そ、そのはずだったのですが……! どうして私もドラゴンが王都に姿を現したのかは分かりません! しかし……突如としてドラゴンが王都の上空に現れたことは確かです!」
噓だと信じたいが、騎士の顔を見るに噓を吐いているものとは思えない。
「ど、どうしてドラゴンが……」
クロードは唖然とする。
彼がこうなるのも仕方がない。
ドラゴンといえば、そんじょそこらの魔の強さとは比にならない。
種類にもよるが……口からは火を吐き、一度暴れ回れば辺りは焦土と化すという。
さらには耐久力にも優れており、厚い鱗に傷を付けるのは至難の業だ。しかも回復力があって、せっかく傷つけたとしてもすぐに治癒する。
S級冒険者が一人……いや、さらにその上のSS級冒険者が一人パーティーに加わって、やっと勝てるかといったところ。
本來なら一萬人以上の単位の隊を組んで、挑まなければならない相手だ。
「SS級冒険者のカリーナはどうしてる?」
「遠くの街まで依頼をこなしに行っています。たとえ今から呼び寄せても、王都に著くのは一週間はかかるかと」
「ちっ……!」
無意識に舌打ちをしてしまう。
一週間では遅い。
ドラゴンがその気になれば、王都などすぐに焼け野原となってしまうであろう。
「クロード王子、わたし怖いですわ」
レティシアがクロードの腕をつかむ。
ああ……こんなに震えている。相當怖いのだろう。
クロードはさらにレティシアのことがおしく思えてきた。
「大丈夫。僕に任せて」
クロードはレティシアの頭をでる。
そして再度騎士の方を振り返って。
「……王都の被害はどうなっている?」
「今のところは、ドラゴンはただ上空を飛んでいるだけです」
「飛んでいるだけ? そいつはなにを考えているんだ」
「分かりません。現場は混しており、ドラゴンに対してどうすればいいか決めかねています
役に立たない連中だ。
「で、殿下! 今いちど指揮を! この狀況をおさめることが出來るのは、殿下しかいません!」
騎士がクロードに懇願する。
うむ……「殿下しかいません!」と言われるのは、気持ちがいい。
相手がドラゴンでなければ、クロードが自ら騎士団を指揮して、事態をおさめようとしていただろう。
だが。
「バ、バカなことを言うな! 僕は戦いの素人だぞ? そんなものは父上と騎士団に任せるのが一番なんだ」
「で、ですが!」
「僕は行くところがある。いいか? 絶対にドラゴンを城まで侵させるなよ? ……行くよ、レティシア」
クロードはそう騎士に釘を刺し、レティシアの手を引っ張って部屋から出て行く。
最後、報告にきた騎士が「で、殿下! 待ってください!」と手をばしていたが、あいつが死のうがどうなろうが知ったことではない。
「クロード様。これからどこに?」
「地下壕だ」
もし王都になにか起こった時、王族が逃げ込むために作られたところである。
ほとぼりが冷めるまで、あそこに引きこもっておこう。
「ふふふ、さすがはクロード様ですね。他の下々の者とは違いますわ」
「だろ?」
それにしても……どうして今更ドラゴンが王都にり込んできたんだ?
こんなこと、今まで一度たりともなかったのに……。
聖エリアーヌの言っていたこともすっかり忘れ、クロードは疑問に思っていた。
まあいい。
それについては、これからゆっくり考えよう。
クロードはレティシアとともに地下壕に急いだ。
これが王國破滅への序章となったのだ。
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