《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》9・王子様でした

「ナ、ナイジェル様! あなたが王子様というなら、最初に言っておいてくださいよっ!」

とある一室に通され、私はナイジェルに詰め寄っていた。

「言ってなかったっけ?」

「言っていません!」

「そうだっけな」

ナイジェルはとぼけているが、クスクスと楽しそうに笑っていた。

この王子様……絶対に確信犯だ。

うー、悪戯が過ぎますわ。

——というわけで。

ナイジェルの正式ネームは『ナイジェル・リンチギハム』

つまり彼はリンチギハム國の王族なのであった。

それだけではない。

なんとナイジェル、正當継承権を持つ第一王子だったのである!

次期國王!

さすがにこれには私も驚いた。

そりゃあ今まで、クロードとかいうポンコツ王子は見てきたけど……彼とは丸っきり雰囲気が違っていたのだから。

どおりで街中で、みんながナイジェルに言葉を投げかけるわけだよ。

最初「どこかで聞いたことのある名前のような……」と思っていたが、『ナイジェル』自はそこまで珍しい名前でもないし、そもそも隣國の王子様に出會うなんて想像もしていなかったのだ!

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だから不覚にも気付くのが遅れてしまった。

「それにしてもエリアーヌ。そのナイジェル『様』というのは止めてくれるかな?」

とナイジェルが真面目な顔をして言う。

「そ、そういうわけにはいきませんわ。王子様だと分かった以上、呼び捨てになんか恐れ多くて出來ません」

「なにを言っているんだ。エリアーヌは命の恩人なんだ。君がいなければ、今頃僕はどうなっていたか分からない」

「でも……」

「エリアーヌ、これは僕からお願いだ。今まで通りに接してくれ。君にまで『様』付けなんてされると、僕の方がどうにかなってしまいそうだ」

ナイジェルは肩をすくめる。

こういう一つ一つの作が、演劇場の舞臺俳優のようでついつい見とれてしまう。

反論しようと思ったけど……止めた。

私だって、王國で聖をやっていた頃はあまり『様』付けなんてしてしくなった。

仲の良い人ならなおのこと。

なんだか……『様』付けなんてされると、その人との距離が広がったようにじるのだ。

だから。

「……分かりました、ナ、ナイジェル。これからもナイジェルと呼ばせていただきます」

「ありがとう」

にっこりと微笑むナイジェル。

そうした何気ない作なのに、まるで彼の周りに花弁が舞ったような錯覚を覚えるのであった。

「失禮します」

そうこうしていたら、ノックとともに廊下から人がってくる。

「お帰りなさいませ、ナイジェル様。リンチギハムの外ではベヒモスが出たという噂を聞きましたが……ご無事でなによりです」

とメイド服を著たが口にした。

眼鏡をかけていて、表に乏しい。

だけどナイジェルのことを心から案じていることが言葉の端々から分かった。

「ああ。この子のおかげで、なんとか無事に終わったよ」

「そのことも、騎士団長様から聞いております。なんでも、凄腕の治癒士だとか」

騎士団長?

「アドルフのことだよ。一番始めに君に話しかけたおじさんがいただろ?」

え、えーっ!?

あのダンディーなおじさま……騎士団長だったのか。

まあ言われてみれば納得。だって王子様の旅路ですもの。騎士団長クラスが護衛に付くのは、なんら不思議なことではないと思われる。

それでも……逃げることしか出來なかった、ベヒモスという魔の強さに震えるばかりだ。

「エリアーヌ。君には是非、父上にも會ってもらいたい」

「父上……というと」

「リンチギハムの國王陛下だよ」

「ですよねー」

いや王子様のお父さんときたら、そうなるのは當たり前なんだけど!

王國を追放されて、いきなり隣國の國王陛下と會うことになるとは予想の範疇を超えている。

「私なんかで大丈夫ですか? その……陛下がご気分を悪くしないとも限らないですし」

「なにを言っているんだ。君に是非會ってしい。父上もきっと君のことを気にいるに違いないよ」

ぽんとナイジェルはさり気なく私の肩を叩く。

だから、そんな不意打ちでらないでしい……!

ドキッとしちゃうから。

「じゃあ僕は父上に話を通してくるよ。アビー、彼は長旅でお疲れだ。父上と會う準備の手伝いをしてやってくれ」

「かしこまりました」

「丁重に扱ってくれよ」

「もちろんです」

アビー……と呼ばれたメイドがナイジェルに軽く頭を下げる。

そう言い殘して、ナイジェルは部屋から出て行ってしまった。

「ではエリアーヌ様。ご主人様から話は聞いております。まずはを清めましょうか」

アビーさんがそう言って、手を差し出す。

「よ、よろしくお願いします」

まだ事態の急展開に付いていけない最中。

私はアビーさんに言われるがまま、彼の後をついていくのであった。

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