《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》35・デート(?)

ドグラスはのドラゴンになると言っていたが、なにをするつもりなんだろう?

しかし私の疑問は、意外にもすぐに解消するのであった。

「エリアーヌ」

王城の廊下を歩いていると。

不意に後ろからナイジェルに聲をかけられた。

「あ、ナイジェル……どうしたんですか? この時間にこんなところで會うなんて珍しいですわね」

「ああ。君に聞きたいことがあってね」

聞きたいこと?

私が首をかしげると、ナイジェルは真剣な顔をしてこう告げた。

「よかったら明日、市に遊びに行かないかい?」

……え?

「今なんと?」

「聞こえなかったかな。明日、二人で市に遊びに行かないかなと言ったんだけど……」

…………。

え、えーっ!

遊びに行く? しかも二人で?

どうして一國の王子様が私にそんなことを!?

「きゅ、急にどうしてですか?」

「はは。ちょっと前にドグラスに怒られてね。エリアーヌみたいなしくて年頃のを、王城に閉じ込めておくのは怪しからん。たまには遊びにでも連れて行ってやれ……って」

別に閉じ込められているわけではないんですが!?

それに料理の材料を買うために、市にはよく買いに出かけたりしている。

王城の生活に不満なんて、一切ないんだけど……。

「そ、そんなお心遣い結構ですわ。私は満足していますので……」

「それだけじゃないさ。僕個人としても、エリアーヌともっと仲良くなりたいと思っていたからね」

ナイジェルの顔をよく見るが、とても冗談を言っているようには見えなかった。

それにしても、ドグラス……まさかこんなに早く行を起こすなんて。

のドラゴンになるって言ってたし、きっと今回のことも彼が裏で暗躍しているのだろう。

「頑張ってこいよ」とばかりにウィンクしているドグラスの顔が頭に思い浮かんだ。

「明日に一日休日を作るために、仕事も前倒しで終わらせてきたんだ。どうだろう? エリアーヌ。君の一日、僕にくれないかい?」

手を差し出すナイジェル。

ここまで言われたら答えは一つだけだ。

「つ、謹んでおけいたしますわ。私でよければ」

「良かった!」

私が承諾すると、ナイジェルはぱっと表を明るくした。

「じゃあ明日十時、中庭に集合しよう。せっかくだから明日一日は、ゆっくりリンチギハムを案するよ」

「楽しみにしていますわ」

「こちらこそ」

ナイジェルはイケメンスマイルを浮かべた。

「じゃあ明日の君とのデート、心待ちにしているからね」

最後にナイジェルはそう言い殘して、私の前から去っていった。

「ふう……まさかあんなことを言われるなんて」

だけどナイジェルも、ドグラスに言われて仕方なく私に付き合ってくれるだけだろう。

彼は形男子だ。

の子とこうしてい出かけることも、珍しくないはず……いや王子様なんだし、気安くそんなことは出來ないか? そういえば婚約者もいなかったはず……。

なんてことが頭の中でぐるぐる渦巻いていると、ふと先ほど彼が最後に言った言葉を思い出した。

『明日の君とのデート』

……デ、デート!?

「そ、そういうのじゃありませんわよね? 二人で出かけるだけなんですし……」

いや、男二人が市に遊びに行くとなったら、立派にデートと呼べるだろうか?

しかし相手は王子様。

デートなんて言われても、いまいちぴんとこなかった。

「いけません! 取りあえず、明日のお出かけの準備をすぐにしなくっちゃ!」

ドグラスを追及するのは、またあとです! 今はそんなことをしている場合ではありません!

私はすぐに自分の部屋に戻って、明日の準備を始めた。

ちなみに……アビーさんにこのことを相談すると「デートですね」と斷言されたのは、また別の話だ。

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