《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》45・暴かれた真実

「ただいま戻りました!」

私達は森のり口まで戻り、そこにいた騎士団の人達に聲をかけた。

もちろんそこにはドグラスの姿もある。

「おお、もう片付いたのか」

私達を見かけるなり、ドグラスがそう手を振った。

ドグラスの近くには巨大なベヒモスが橫たわっている。

一瞬気圧されてしまうが、どうやらもう息絶えているようである。こちらも無事に済んだということだろう。

「ええ。そういうあなたも早いではありませんか」

「我か? 言っただろう。こんな豚もどき、我の敵ではないと。ほんのし期待していたが、遊びにもならなかったよ」

ドグラスは不敵な笑みを浮かべる。

「アドルフ、どうだった?」

今度はナイジェルがアドルフさんに答えを求めた。

ドグラスだけでは、どうしても説明不足ですからね。

「あ、ああ。まさかこの男、ドラゴンとは思わなかった。急にドラゴンの姿になった時は驚いたが、一瞬でベヒモスをやっちまった。ナイジェル、まさかドラゴンを味方に付けていたとは……」

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「あれ? 言ってなかったっけ」

そうナイジェルは微笑む。

またナイジェルの悪い癖が出ましたね。

「もう人の姿に戻っていますのね」

せっかくだから、ドラゴン形態のドグラスの姿を見てみたかったと思わないでもないが……。

「他の者共がビビりよるからな。仕方なく人の姿に戻ったのだ。しかし最初は嫌だったものの、慣れてみると人の姿も良いものだな」

「それはなによりです」

他の騎士達も、ドグラスの正がドラゴンだったことに驚きを隠せないようであった。

しかしそれは戸っているだけだ。

を見るに、恐怖よりも憧れのようなの方が強いようにじた。

共通の敵であるベヒモスを、ドグラスが撃退してくれたことが大きいのだろう。

これだったらドグラスもみんなにれられ、今後もリンチギハムで一緒に暮らせそうだ。

「まあ今はそれよりも……」

私は視線をアルベルトに向ける。

アルベルトの剣——そして彼にかけられていた呪いを解除した後、縄でぐるぐる巻きにしてここまで連れてきたのだ。

話を聞かせてもらわなければならないですからね。

「アルベルト。一貴様はなにを考えている? このようなことをして、タダで済むと思ってないよね?」

ナイジェルが優しげな口調ながら、しかし確かな怒りを込めてアルベルトを睨みつける。

だがアルベルトは怯まず、「へっ!」と地面に唾を吐き、

「もうこうなっちまったら、オレもお終いだ。洗いざらい喋ってやる。あのにも良いように利用されて腹が立つからな」

「あの?」

「ああ、レティシアだ。ベルカイム王國にいるレティシアっていうヤツに、この剣を貰ってからオレはおかしくなっちまったんだ」

「レ、レティシア!?」

思わず聞き返してしまう。

彼の傍らに置かれている剣は、戦いの前から赤く濁っていた。

しかし今はあれが噓だったかのように、今はただのサビた剣にしか見えなかった。

「レティシアがどうして……」

「うむ。やはりそうだったか」

私が混している一方、ドグラスは全てを見通したかのように何度か頷く。

「おそらく、こやつにかけられていた呪い。それはレティシアとかいうの仕業であろう」

「なんですって?」

「我が王國に向かった時、レティシアから先ほどと同じようなオーラが発せられていた。レティシアは一流の呪士だ。おそらく呪いをかけた剣をこいつに持たせ、今回のような兇行を引き起こさせたのだろう」

レティシア——。

クロード王子の現婚約者で、自分こそが真の聖であるとうそぶいた悪だ。

格は悪いと思っていたけど……まさか呪師だなんて、不覚にも王國にいる頃は見抜けなかった。

「まあ汝がいた頃は、貓を被っていたのだろうな。決して呪の力を表に出さなかった。汝が気付かぬのも仕方がない」

落ち込んでいる私を、ドグラスが優しくめてくれた。

「ふむふむ。どうやら國と國との問題に発展しそうな問題だね。アルベルトからはまだ話を聞き出さなければならないようだ」

ナイジェルが疲れたように溜息を吐く。

「へっへ。お利口な王子殿下なこった」

アルベルトが嫌らしい笑みを浮かべる。

アルベルトがわざわざこのことを喋った理由も——レティシア、そして王國なんてどうなってもいいという考えもあると思うが——一番は自分が生き長らえるためであろう。

即刻、処刑になってもおかしくないでしょうからね。

しかしこれでアルベルトから報を引き出すまで、彼を殺すことが出來ない。そういう強かな計算が出來る男なのだろう。

とはいえ。

「おい、アルベルト。リンチギハムを舐めるんじゃねえぞ?」

アドルフさんがアルベルトに近付き、前髪をつかんで顔を上げさせる。

「てめえから話を聞き出すには、オレが直接やってやる。てめえには個人的に恨みもあるからな。覚悟しておけ」

「……ちっ」

アルベルトが舌打ちする。

おお、怖い怖い。

これからどれだけ怖いことが彼に待ちけているんでしょうね。

アドルフさんに任せておいて心配なさそうだ。

「だけど……まだ分からないことばかりだけど、そのレティシアっていう子は許せないね」

「我も同だ」

ナイジェルとドグラスの表からは、靜かな怒りをじ取れた。

「今すぐ我が王國にひとっ飛びして、レティシアにだけでも斷罪を下そうか?」

「それは悩みどころだね」

二人は意気投合しているみたいだ。

だけどわざわざそんなことをしなくてもいい。

「ナイジェル、ドグラス。大丈夫ですわ。今回、私達はレティシアの呪いを完璧に跳ね返しましたからね。放っておいても、レティシアには斷罪が下るはずです」

「どういうことだい?」

ナイジェルが目を丸くする。

「弱い呪いならともかく、今回の呪いは今までとは比にならないくらい強いものでした。そういう呪いは解除したら、者に返(・)る(・)のですわよ」

私は口元に指をつけ、こう続けた。

「人を呪うためには、二人分のを掘る必要がある——という言葉もありますわ。一つは呪いをかけられた人を埋めるためのを。そしてもう一つはその呪いをか(・)け(・)た(・)人のものをね」

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