《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》56・霊さん達の村
「ここが村のり口だ」
フィリップの後をついていくと、なんのヘンテツもない草むらの前で彼は立ち止まった。
「なにもないみたいだけど?」
ナイジェルが首をかしげる。
しかし。
「……ここだけ空間が歪んでいますわね」
私がそう言うと、フィリップは驚いた表で、
「さすが聖。分かるか?」
と口にした。
「はい。とはいえ、かなり注意しなければ分かりませんし、そもそも言われなければ気付かないでしょうけど」
「霊の村には決して人間を立ち寄らせてはいけないからな。何重にも厳重に結界を張っているんだ」
「そうなんですか。でも本當に私達を招待しても?」
「君達恩人はまた別だ」
そう言って、フィリップは草むらに向かって手をかざした。
すると……。
「む、村のり口が!?」
ナイジェルが聲を上げる。
目の前の空間がぐにゃぐにゃと歪み出し、しばらくしたら木製の門が現れたのだ。
そしてフィリップが振り返り、私達にこう言う。
「ようこそ。霊の村へ」
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歩き出すフィリップの後についていき、私達は門を潛る。
「キレイな場所ですね」
「エリアーヌが瘴気を払ってくれたおかげだ。し前までは、植も枯れ果て悲慘な狀況だったからな」
歩を進めながら、辺りを眺める。
先ほどの小さな霊が村中を飛び回っている。
そのおかげで薄暗いはずの森が、電気が燈されているかのように明るく見えた。
『王だー』『王だー』『王だー』
『せいじょー』『せいじょー』『せいじょー』
大人數の——霊がそう言いながら、私達に近寄ってくる。
ふわふわと周囲を飛び回っていた。
「わあ! 可い霊! いっぱいいますね」
「ああ——だが、森を救ってくれた聖になんという言葉遣いだ。後で教育しなければ……」
「そ、そんなことしなくても大丈夫ですので! だってこんなに可らしいですから」
「そ、そうか。君がそう言うなら止めておこう」
フィリップが溜め息を吐く。
良い霊なんでしょうけど、やっぱりしだけ真面目すぎる……ずぼらなドグラスを見習ってしいところだ。
「こんな幻想的な村が存在したんだね。僕はエリアーヌのただの付き添いなのに、招待してくれてありがとう」
「良い。ナイジェルにも話があるからな。それに國の民であるエリアーヌを貸してくれたんだ。謝しかない」
ぶっきらぼうな口調でフィリップは答えるが、謝していることが確かにじ取れた。
「あの木の上にある建は?」
「俺達の住居だな。霊は木の上に住むところを作る」
なんて素敵なことでしょうか!
ベルカイム王國やリンチギハムには、煉瓦や石造りの建が多い。そちらの方が燃えにくいし、壊れにくいからだ。
だから木製の建が立ち並んでいる霊の家を見ていると、まるでお伽噺(とぎばなし)の世界にり込んだみたいで心躍った。
「野菜も植えているんですね」
至る所に菜園が広がっていた。
「ああ」
「そういえば霊さんも、ものを食べるんですね。魔力だけを供給しているイメージがありましたが……」
「もちろん、そういう霊もいる。しかしやはり食べから栄養を摂取した方が楽しいし、の調子もいい。最近の霊はなにかを食べて生きるのが一般的だな」
「そうなんですか。あら……水もキレイです」
「何度も言うが、それもこれも君のおかげだ。瘴気に満ちていた頃は、とてもじゃないが口に出來なかった」
浄化魔法を森全に使うことによって、水や植に染みていた瘴気もすっかり消え去った。
だからだろう。
元通りに再生して、植や野菜は瑞々しい葉っぱのをして、水は明なくらいき通っている。
新鮮な景に、ついつい視線が迷子になってしまった。
「きゃっ!」
「おっと」
そのせいで石につまずき、転んでしまいそうになる。
しかしナイジェルがさっと私のを支えてくれた。
ふわっと彼のらかい手の平のが伝わってくる。
「はは、エリアーヌ。危ないよ。そんなよそ見しながら歩いてちゃ」
「す、すみません」
「でも君がそうなるのも頷ける。だってこんなに素晴らしい場所なんだからね」
とナイジェルが笑って、さり気なく私から手を離した。
んー……ナイジェルは婚約者だとはいえ、不意にこういうことをされるとドキドキしてしまいますわね。
今更だが本當に私、彼の婚約者でいいのかしら!
ドキドキしすぎて、いつか死んじゃわないでしょうか!
「歩き疲れただろう? この上で話そう」
やがて一本の大木の前で、フィリップは立ち止まった。
お、大きい……!
木の天辺がここからでは見えないくらいだ。
これまた太い木の枝に、無數の住居が建てられているのも見えた。
「この上とは?」
「最上階だ」
フィリップはなんでもなさそうに言う。
大木には梯子(はしご)のようなものも取り付けられている。
しかし……この天辺に行くには、どれだけ時間がかかるのだろうか。
高くて怖い……。
そう戸っていると、彼は私の心のを読んだかのように、
「心配ない。すぐに著く」
とパチンッと指を鳴らした。
次の瞬間、私とナイジェルの両足がふわっと地面から離れた。
「このまま最上階まで行こう」
そのままがどんどんと上昇していき、やがて地面が見えなくなる。
た、高い!
確かに高いですけど、これはさすがに怖い!
「ナ、ナイジェル!」
「さすがにこれは僕でも怖いね」
ナイジェルはそう口では言っていたものの、どこか楽しげであった。
私はナイジェルのにしがみつき、最上階に辿り著くまで目を瞑って必死に耐えるのであった。
◆ ◆
「怖かった……」
私達はフィリップの家に招かれ、テーブルの前に座っていた。
「すまない。そういえば人間は、これほど高いところに慣れていなかったのだな」
「全くです。今度からは、こうする前にちゃんと言ってくださいね」
「すま……」
「謝るのは止ですー! 怒っているわけではありませんから!」
と私は口にして、フィリップの口元に手を當てた。
「う、うむ……」
フィリップはそれにちょっと頬を赤らめていたが、どうしてだろう?
『お茶どうぞですー』
そうこうしていると、小人サイズの霊がお盆にお茶を載せて運んできてくれた。
どうやら村にたくさんいた小さなサイズの霊は人間でいう四歳くらいまで。
八歳くらいになると、今お茶を運んでくれた霊のようにしずつ人のような形になっていくらしい。
とはいえ霊は人間とは壽命が違う。
こうしてテーブルにお茶を並べる霊も、小人のように見えるけど百年以上は生きているのだとか。
人間とはあまりにも常識が違いすぎて、戸うことばかりだ。
「さて……と」
お茶に口を付ける前に、フィリップはこう話を切り出した。
「今回の件は本當に助かった。そのお返しとして、リンチギハムは俺達になにをむ?」
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