《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》71・仲良しな二人

「あのー……お二人とも、とても仲が良いようですけれど?」

恐る恐る私はナイジェル達に話しかけた。

「ああ。ヴィンスとは親友でね。學院時代にはダンジョン攻略も授業にあったんだけど——ヴィンスとはパーティーを組んでいたんだ」

「また懐かしい話を持ち出すな」

ナイジェルは親しげだが、一方のヴィンスは渋い表をしていた。

だけどナイジェルがヴィンセント様のことを『ヴィンス』と稱で呼んでいるくらいだし、仲が良いことには間違いなさそう。

「懐かしいね。學院時代、生徒の誰もが未踏だった最下層にヴィンスと乗り込んだ時のことを思い出すよ」

「ふっ。もうしお前が慎重にことを進めれば、最下層はもっと早く攻略することが出來ていた。お前は昔から冷靜さを欠く場面が多い」

「ははは、ヴィンスは辛口だね」

思い出話に花を咲かせる二人。

「え、えーっと……」

當の私は置いてけぼりで、二人の會話に割ってることが出來なかった。

本當に私、ここにいてもよかったんですか!?

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「あっ、そうそう」

そんな私の気持ちを察したのか、ナイジェルがヴィンセント様に回していた肩を離して。

「ヴィンス、紹介するよ。彼がエリアーヌ。手紙で何度かやり取りしていたから知っていると思うけど、會うのは初めてだろ?」

「ほほお……彼が噂の」

ヴィンセント様の視線がこちらを向く。

うっ……!

彼に見つめられると息が詰まるような思いをする。まるで蛇に睨まれているようだった。

それにヴィンセント様は、男なのにとてもしい。

見ていたら、そのまま吸い込まれてしまいそうな……そんな不思議な気が漂っていた。

「初めまして。私はヴィンセント。お前のことはナイジェルからよ(・)く(・)聞いている」

「は、初めまして……」

ヴィンセント様が手を差し出してきたので、私はそれを握る。

本當なら今すぐにでも逃げ出したかったけれど、まさか握手に応えないわけにはいかない。

「どうして震えている?」

「い、いや……っ。そ、そうですか!?」

怖いからです!

「うむ……なかなか面(・)白(・)い(・)だな、ナイジェル」

「気にってくれたかい?」

「ああ。興(・)味(・)深(・)い(・)」

ヴィンセント様が手を離す。

すーはー、すーはー!

深呼吸!

エリアーヌ! 落ち著きなさい! ——と自分に言い聞かせた。

それにしても「面白い」だとか「興味深い」とか、どういう意味なんでしょうか?

ヴィンセント様に見られていると、なんだか心のが見かされてしまいそう。

正直……し彼に対して、嫌な印象を抱く。

警戒は怠ってはいけませんね。

「そういえばナイジェル。王國のことを知っているか?」

「うん。聞いている」

一転。

ナイジェルとヴィンセント様は真剣味を帯びた表をして、こう話を続けた。

「どうやら王都に魔族が攻めったという話は本當みたいだ」

「そうだね。王都が落とされたという話も」

「外からは、はっきりしないんだがな。なんにせよ、魔族共が本気を出せばいくら王都でも持ち堪えることは出來ないだろう」

「リンチギハムも含め、他國にも救助要請がきてなかったみたいだね」

「おそらく要請する前に、魔族に王都を落とされたんだろうな。まあどちらにせよ、利害抜きにしてあの國を助けるところはないと思うが」

王都——王國の中心だ。

そんな都が……魔族に討ち滅ぼされた?

いやこれは分かっていたこと。

今まで私が結界を張り、近くにドグラス——ドラゴンがいたから魔族が攻めってこなかったけれど、それがなくなってしまえば彼等を塞き止めるものはなにもなくなる。

今更気にする必要はない……だけどなんでしょう。こののもやもやは。

「今回は王都だけだったが、これがここにも及ぶ可能がある。より一層気を引き締めなければならないぞ」

「同だね」

「そのためには軍事力に予算を割くべきだ。この國は規模の割には、軍事にお金を使わなすぎる」

「うーん、それは分かっているんだけどね……まあ今回はそのことについても話しにきたんだよね」

ヴィンセント様が頷く。

「エリアーヌ」

「ええ、分かっています。あとはお二人でどうぞ」

「悪いね」

これからは大事な話になる。私がここにいる必要もないし、いても二人が話しにくいだろう。

……というのは表向きの理由。

本當は……やっとこの空間から逃げられる! ヴィンセント様と同じ空間にいることは、もう息が詰まって耐えられない! ……と私は心喜んでいた。

「失禮いたします」

気持ちを悟られないように私は俯き加減で、部屋から出て行った。

◆ ◆

その夜。

「ナイジェル、話はもう済んだんですか?」

私はナイジェルと言葉をわしていた。

「うん。ちょっと白熱しちゃってね。こんな時間になってしまった」

彼は苦笑する。

今はヴィンセント様も、もういない。

しかし王宮にある部屋でくつろいでいるそうなので、油斷は出來ない。

「あの……ヴィンセント様って、その……なんだか怖い方ですね?」

本當は「あの方、なんだか苦手です」と率直に伝えたかったが、そういうわけにもいかない。

「はは。誤解されやすい格なんだよ。良いヤツだよ? ヴィンセントは」

「ですが……氷の公爵とあまりよろしくない呼ばれ方もされているそうですし」

「まあ他人が勝手に言っていることだしね。それに『氷』ってなんだかカッコよくないかい?」

冗談を言っているつもりなのか、ナイジェルはおかしそうに笑った。

どこが笑いどころだったのかよく分かりません。

他人を寄せ付けない雰囲気。冷酷無比な格。

そのようなことから『氷』と稱されているのでしょう……これは私の推測だけれど。

「まあそんなに気にしなくても大丈夫だよ。エリアーヌも直に分かるから」

ポンと軽く私の肩を叩くナイジェル。

ナイジェルはそう言っているけれど……私にはどうしてもそう思えなかった。

まあ私と彼が話すことも、ほとんどないでしょうから、あまり気にしすぎなのもよくないでしょうか?

そうです。あの方がこれからもずっとここにいるわけでもないですし、もっと気楽にいきましょう。

しかし私はこの時分かっていなかった。

彼が『氷の公爵』たる所以(ゆえん)を。

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