《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》76・実技試験で聖水を作りました
筆記試験が終わり、今度は実技試験。
実技試験は何人かで研究室にり、そこで各々自由にポーション等の薬を作ることが試験容らしい。
「実技試験の方が気が楽ですね」
十人くらいのグループで研究室に室。
さすがに魔法研究所に比べれば狹く、そして材も揃っていないが……これだけあれば十分。
それに慣れない筆記試験より、実技試験の方が上手くいく気がする。油斷は大敵ですけれどね。
いざ薬作に取りかかろうとすると、
「どうしよう……」
グループが一緒の験生のの子の不安そうな聲が聞こえた。
「どうしましたか?」
それがあまりにも見てられなかったので、気付けば私はその子に聲をかけていた。
「今年の筆記試験は難しかったし……この実技試験で遅れを取り戻さないと。わたし……本當に合格出來るのかなあ?」
「あら、そんなことを気にしていたんですか」
「え?」
「全力を出せば、自ずと結果は付いてきます。張していては力を出し切ることが出來ません」
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「あなたはあんまり張していないんだね?」
私?
そう見えるかもしれないけれど、もちろん私だって張している。
だけどここまできたら後戻りは出來ない。
もっと勉強しておけばよかった……なんて思って後悔しても、時既に遅しなのです。
「まあ張するなと言われて、リラックス出來るなら苦労はしませんよね……」
なにか良い手はないでしょうか……。
あっ、そうです!
「こう……手の平に『人』と書いて三回飲み込んでみましょう」
「そんなことで張が取れるの?」
「ええ。しはマシになると思います。さあ、騙されたと思って。私もやりますので」
半信半疑といったじで、その子は手の平に『人』と書いて、それを口元に持っていった。
これは一種のおまじない。
本來は『人』と書いて飲み込むことによって、周囲の人達よりも優位に立つという言葉遊び。
だけどこうすれば冷靜を保てる——と自分で自分に言い聞かせることによって、本當に張が解れてしまう。
そういう効果がある……と昔聞いたことがある。
信じるものは救われるのです。
……一気に胡散臭くなりましたが、現に不安そうにしていた彼は笑顔になって。
「うん、ありがとっ! ちょっとは張もマシになったみたい!」
「でしょう?」
「あなたも頑張ってね。二人で合格しよっ!」
「ええ、もちろんです」
そう言って、の子は自分の薬作を始めた。
この子も謂わば資格試験のライバル。
しかしこの試験は相対評価ではなく、點數が一定以上なら何人でも合格するらしいし、たとえそうでなくてもわざわざ直接的に蹴落とすような真似をする必要もないでしょう。
全員を私の力で合格させることなんて出來ない。
けれどせめて目にる人達くらいは、合格してしいなと私は思った。
「さあて、私も始めましょうか!」
両頬を軽く叩いて気合いをれ直す。
ちなみにこの試験では、一つだけ薬素材の持ち込みが許されている。
それを使って、自分にとって一番得意の薬を作るという段取り。
もちろん、私が持ち込んだのは……。
「霊の水——これを使って聖水を作りましょうか」
瓶にった霊の水を機の上に置く。
うーん、よくよく考えたら資格試験に聖水だなんて、オーバーキルな気もしますが、自分にとって一番得意なものと言われたからには手を抜くわけにはいきません。
立派な聖水を作って、試験の方々をビックリさせましょう。
私は早速霊の水を使って、聖水作りに取りかかるのでした。
【SIDE 試験】
筆記試験で聖水の作り方を完璧に記した験生が現れた。
そのことにより試験の間で戦慄が走っていたが、なにはともあれ実技試験。
(エリアーヌという子は、筆記試験は文句なしの満點。実技試験でよほどのことをやらかさない限りは合格だが……果たして一なにを作るのだか)
バートは別室で実技試験が終わるのを待っていた。
こんなに心が躍っているのは何年ぶりだろうか。
昔は未知なる薬に憧れ、研究に沒頭していた。
今でも『聖水』という人類の悲願に打ち込んでいたが、最近では研究も頭打ちでなかなか前に進まなかった。
そのせいか……いつの間にか年のようなドキドキも忘れ、ただ惰的に研究を続けていた。
(しかし……何故だろうか。エリアーヌという子の記述を見た時、久しぶりに昔の気持ちを思い出した。くくく……謝するよ。まさかまだ薬師ですらない子に教わるとは)
そんな彼は一なにを作るのだろうか?
もうしで実技試験も終わりのはずだ。
バートはまだかまだかと終わりを待ちわびていたが、やがて……。
「た、大変です!」
試験の一人がバートがいる別室に飛び込んできた。
「どうした? そろそろ実技試験が終わっているはずだが……」
「ええ、ついさっき終わりました。なので験生が作った薬を回収したのですが……」
試験が瓶にったそ(・)れ(・)をバートの前に置く。
それを見た瞬間、バートは目を疑った。
「この輝き……付與されているのは聖魔法……ま、まさか!」
「ええ! 聖水です! 験生がたった一人で聖水を作ってしまいました!」
「な、なんだと!? 聖水をたった一人でだとお!? お、おい。その験生の名前は——」
「エ、エリアーヌです! 筆記試験で満點を取ったあの子です!」
「あやつはどれだけ規格外なのだ!」
すごいものを作るであろうことは予想していたが、まさか聖水を作ってしまうなんて……!
目の前にある聖水を見て、バートはただただ唖然とするしかないのであった。
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