《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》84・私のことを甘く見過ぎです

し時は遡る。

「ん……ここは?」

鈍い頭痛。

意識が覚醒し、私はゆっくりと目を開けた。

『エリアーヌ。気がついたか』

傍らにはラルフちゃん。

どうやら私、ラルフちゃんを枕にして眠っていたみたい。

いや……この場合は気を失っていたと言った方が正しいんでしょうか。

「ラルフちゃん。一なにが起こっているんですか?」

『見ての通りだ。ラルフ達は謎の集団に囚われ、ここに連れてこられた。くっ……ラルフがいてこのざまとは。あのドラゴン男には言い訳が出來んな』

しょぼんと落ち込んだ様子のラルフちゃん。

私は「あなたは悪くありませんよ」とめながら、ラルフちゃんの背中をでてあげた。

「うぅ……お姉ちゃん、ごめんなさい。全部ボクが悪いんだ……」

「この子は悪くありません! 責めるならどうか私を!」

同じ部屋の中には、先ほどの子どもとそのお母さんらしきの姿もあった。

二人とも怯えて、謝罪を繰り返していた。

「あなた達は悪くありませんよ。それにあなた達が無事なようで私も嬉しいです」

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怖がらせないように、にっこりと微笑む。

とはいえ。

「どうやら罠だったみたいですね……」

油斷した。

現在、私達は牢屋のような場所に閉じ込められている。

鉄格子の扉に手をかけ、試しに開けてみようとしたがビクともしない。さらに扉には魔法で施錠がかけられており、力づくで開けることも不可能そう。

「へっへ、やっと目を覚ましやがったか」

そうこうしていると、見回りらしき者が私に近付いてきた。

背中から翼を生やし、頭には二本の角がある。

その異形の姿から、私達をここに閉じ込めた者はなくとも人間ではなさそうだ。

「あなたは……魔族?」

「よく分かってるじゃねえか」

魔族がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。

魔族——本來ならなかなか人前に姿を現さない存在のはず。

この魔族だけではなく、他の場所から複數の別の聲が聞こえる。

ここがどこか分からないけれど、中にいるのは一だけではなさそうです。

「こんな小さな子どもを使ってまで、どうしてあなた達は私をこんなところに?」

あまり期待せずに問いかけたが、

「お前等は人質だ」

と答えが返ってきた。

おそらく勝利を確信して、気が緩んでいるんでしょう。愚かです。

「人質?」

「我等の主であるバルドゥル様とその部下達が、今頃霊達のところに行っている。バルドゥル様は強いお方だが、真正面から霊に立ち向かうのは分が悪い。そこでお前を人質にして、霊共に渉を仕掛けているというわけさ」

「——!」

聞き捨てならないことを言われ、思わず私は言葉を失ってしまう。

困っている子どもに私が話しかけている隙に、後ろから魔族が私を気絶させたということ。

彼の言う霊……というのはフィリップ達のことでしょう。

最初から仕組まれていたということですか。

「ここから出しなさい。すぐに私を霊達のもとに連れて行きなさい」

「はっ! こんな狀況であっても、そんな目をしやがるのか……ダメに決まっているだろうが! 一つ言っておくが、出なんてことは考えるなよ? そもそもお前じゃこの扉は開けられないし、仮にその部屋から出られたとしてもオレ以外にもここにはたくさんの魔族がいる。果たして足手まとい付きのお前等が、ここから出出來るかな?」

愉快そうに魔族は言って、近くの椅子に腰かけた。

分かっていたことですけれど、簡単に出す気はないということですね。

「お姉ちゃん……ボク達なら大丈夫だよ?」

「あなたに迷はかけていられません。でも……私はどうなってもいいから、この子だけでも救ってくれませんか?」

後ろを向くと、子どもとそのお母さんが不安そうに口にした。

だが。

「大丈夫ですよ。お二人とも助けますので」

二人とも見捨てるつもりはない。もちろんラルフちゃんも。

そう言う私のことを魔族がせせら笑っていた。

だけど私一人で出するならともかく、この人達の命も守らなければならない。

悪い言い方になるかもしれないが、足かせだ。

これを計算したからこそ、魔族はこの二人をまだ殺していないんでしょう。

卑劣な手段に腹が立ってくる。

『エリアーヌ、どうするつもりだ。待っていれば、ナイジェルやドラゴン男が助けにくるかもしれないが、あまり悠長なことをしている暇はないぞ』

「ええ、分かっています」

こうしている間にもフィリップ達がどうなっているか分からない。

しかしここにいる魔族のみなさん、々私のことを舐めすぎているようです。

私は念話を使い、街にいるとある者と信を始めた。

『……ん? どうした、エリアーヌ。念話をしてくるとは珍しいではないか』

ドグラスの聲。

良かった。どうやらあまり街からは離れていないみたいですね。

念話を阻害する魔力もあったが、これくらいなら無問題。もしくは念話されても、どうしようもないと思っているんでしょうか。

『ドグラス。時間がないので、手短かに伝えます。どうやら私、魔族に柄を拘束されてしまったみたいです』

『な、なんだと!?』

ドグラスの聲にが走る。

私は聲に出さず、頭の中だけでドグラスと念話を続けた。

『すぐにナイジェルにお伝えくださいますか?』

『分かった……しかしお前が捕まっているとなると、ナイジェルもあまり派手にけないぞ。そこから一人で出出來るか?』

『うーん、閉じ込められている部屋からは出られそうです。でも見張りの魔族もたくさんいるみたいで、そこからは一人で難しいです』

『そうか……しかしこうやって念話出來るということは、その魔族共も汝を甘く見ているんだろうな』

『その通りです』

報がちゃんと伝わっていないからだろうか、所々で詰めが甘い。

こんなところに閉じ込めて、私がおとなしくしているとでもお思いなんでしょうか?

私を王子様の助けを待つお姫様とでもお思いに?

でも……殘念でした。

ろくに持(・)ち(・)(・)検(・)査(・)もしなかったことが、魔族達の致命的な失態。

『なのでドグラス。私はこうしますので、あなたは——』

計畫を伝える。

するとドグラスは『分かった』と言い、そのまま念話を切った。

よーし。

獄開始です!

「それにしてもこの、なかなか上玉だな。バルドゥル様が來る前にちょっと手を出してみてもいいか?」

「止めとけ。そのはバルドゥル様が言うに、儀式の大事な鍵にするらしい。傷つけたらタダじゃ済まねえぞ」

「ちっ……つまんねえ。こんなひょろひょろのの子守りだなんてな。だがバルドゥル様に逆らうなんて許されるはずがない……」

気付けば、牢屋の前に他の魔族が現れ、私達の処遇について話していた。

まあ何人集まろうと関係ない。

「あのー、すみません」

私は二の魔族に聲をかける。

し……お手洗いに行きたいのですが、どこですれば?」

「ああん? そんなのはねえよ。そこらへんでしておきな。ちゃーんと見てやるからよ」

「あ、あのー……私もですから、それは恥ずかしいです。後ろを向いててくれませんか?」

「はっ! 誰がお前の命令を……と言いたいところだが、変に扱えばバルドゥル様にあとで怒られるかもしれねえからな。最後の慈悲だ。三秒だけ後ろを向いてやる。それで済ませな」

「はっは! お前、三秒での子のトイレが終わるわけねえだろうが!」

ゲラゲラ笑いながら、二の魔族が私から視線を逸らした。

でも……三秒あれば十分。

「えい」

私はすぐさま牢屋の扉に手をかけ、魔法を発する。

……魔力の作は、ロベールさんに教わって上手になったのです!

一秒未満で牢屋の鍵が理的、そして魔法的にも外れ、カチャッという音を立てて開いた。

「ああん?」

しかし魔族もそれにすぐに気付く。

「おい、お前……一どんな手を!」

「ドグラス!」

魔族が襲いかかってくるよりも早く、私は著ている服に隠しておいたとあるものを掲げる。

それは——ドグラスから貰った寶玉。

寶玉に魔力を流し込むと、辺りを神々しいが包んだ。

そしてがなくなった頃には……。

「エリアーヌをさらうとは、魔族共もなかなか良い度をしているではないか。こいつが誰(・)の(・)か分かっていて、そんな真似をしたのか?」

不遜な態度で腕を組む男が、私の前に姿を現した。

ドグラス、召喚です。

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