《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》101・魔族達の企み

そこは真夜中よりも暗い場所。

天井も床もなく、円卓がぽっかりと宙に浮かんでいた。

本來ならば、平衡覚も危うくなってくる空間だ。

そんなところで……四の魔族が円卓を囲んでいた。

「バルトゥルがやられた」

の中でも一際魔力が禍々しい魔族が、議論の口火を切った。

「仕方ない」

「ヤツは早急にことを進めすぎたのだ」

「もうし慎重に進めるべきだったのよ」

の魔族の言葉に、殘りの三もそう賛した。

しかし。

「確かに、ヤツは計畫を早く進めようとしすぎた。魔王様復活の準備も整っておらぬのに……しかしあの地が危機に陥り、好機であったことも確かであった。そのことは他のものも気付いているだろう?」

禍々しい魔力の魔族に、他の三は反論出來ない。

バルトゥルには『穏健派』と蔑まれていた。

それは確実にことを功させるために、各々が最善を盡くした結果である。

だが長年、魔族の中に染み付いてきた「どうせまた上手くいかない」という気持ちが先んじてしまったのも否めない。

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バルトゥルはそれを負け犬の考えだと切り捨てていた。

殘った魔族達はそのことを薄々自覚しているからこそ、バルトゥルの行を本気で止めようとしなかったのだ。

「しかし現にバルトゥルはやられた」

の魔族が口を開く。

「ヤツの魔族軍も全滅だと聞く。バルトゥルに賛同し、あのまま協力していたら我等も破滅だっただろう。それなのにペウィズ宰相はバルトゥルの行は間違っていなかった、と言うつもりか?」

「無論、そこまでは言うつもりはない。しかし次にこのような好機がいつやってくるかも分からない」

ペウィズ宰相——そう呼ばれた魔族が話を続ける。

「始まりの聖に比べて、最近の聖の力は弱まっている。始まりの聖は世界全域に強力な結界を張れたのに対し、當代の聖は一地域だけだ。それに……優しすぎる。そこにつけ込む隙がある」

「ペウィズ宰相はなにを考えているの? まどろっこしいのは嫌いよ」

の魔族がイライラしたように言う。

「確かに、々まどろっこしかったな。私の考えは一つのみ——この好機に王都に侵攻し、魔王様を復活させる」

ペウィズ宰相は人差し指を突き上げ、そう高々と宣言する。

「當代の聖が弱(・)い(・)とはいえ、王都に時限式の結界を張られてしまった。しかしノロノロやっていては、當代の聖の力がさらに増すのかもしれない。これ以上決斷を先延ばしにするのは愚策である」

「その考えは賛だ。いい加減、オレ達もこんな狹っ苦しいところで我慢するのも飽きた。そろそろ暴れたい」

魔族が言ったことに、ペウィズ宰相は満足そうに笑みを浮かべた。

「時限式の結界が消滅するのは、二週間後。その時に魔族全軍で総攻撃を仕掛ける。そのことに不満を持つものは?」

ペウィズ宰相が質問する。

しかし他の魔族はそれを否定しなかった。

大なり小なり、皆もバルトゥルと同じような考えだったのだ。

魔族のような高尚な種族が、これ以上負け犬のように尾を振り、おとなしくしているのは耐えられない……と。

「しかしペウィズ宰相。結界がなくなる二週間後に総攻撃を仕掛けるのは、し愚直すぎるのでは? それくらい、聖陣営も読んでいると思うが……」

「無論だ。それについては考えがある。それに……仮にあちらが準備をしていようとも、バルトゥル一でてこずっていた人間共ではなにも出來んよ。どちらにせよ魔王様を復活させてしまえば、それでチェックメイトだ」

「つまり……魔王様復活を優先すべきだと? 他の種族共を殺すことより」

「うむ」

ペウィズ宰相は頷く。

「勝利は私達に約束されている。しかし……一つ危懼すべきことがあるなら……」

「危懼?」

「いや、私の考え過ぎだ。そんなことは有り得ないのだからな。萬が一、それが起こったとしても、當代の聖だ(・)け(・)では力を十全に引き出すことは不可能であるがゆえ」

「……?」

——勝負は二週間後。

戦爭が始まろうとしていた。

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