《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》107・始まりの聖がいるところ

始まりの聖も、今もまだこの地で眠っている——。

私はそれを聞き、さらに前のめりになって問いを重ねた。

「そ、それはどこに!? 魔王と始まりの聖はどこで眠っているんでしょうか? それを見つければ、私も始まりの聖の力を得られるということですか?」

「……いっ……」

神からの聲はもうほとんど聞こえなくなっている。

だけど重要な報を得ることは出來ました。

「どこ……分からない。あなたが……《道》を得られ……期待しています……」

それを最後に、ナイジェルを包んでいた神々しいがぷっつりと消え、同時に神の聲も完全に聞こえなくなった。

再び夜に靜寂が訪れる。

なんだかふわふわして、私がぼーっとしてしまっていると……。

「う、うーん……」

「ナイジェル。ご無事ですか?」

ナイジェルが瞼を開けた。

彼は頭を押さえ、上半を起こす。

「一なにが……急に意識がなくなって……」

「ええ、実は……」

今、ナイジェルに起こっていたこと。そして始まりの聖は、今もこの地で魔王と眠っている……ということを伝えた。

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「なるほどね……始まりの聖の一(・)部(・)だけでもあれば、力を引き出すことが出來る……と」

「はい。なので私達が當面やることは、魔王が封印されている場所を見つけ出すことだと思います」

「その場所は教えてもらえなかったのかい?」

ナイジェルの言葉に、私は首を橫に振った。

「でも魔王が封印されていることは確かです。そして……バルトゥルはその場所に目星が付いているようでした。でないと、王都を襲撃しようとは思わないでしょうから」

「こうなったら、バルトゥルがいないことが悔やまれるね。せめてその場所だけでも聞き出したかった」

「過ぎてしまったことは仕方ありません。私達は今やれることをやるのみです」

「その通りだね」

ナイジェルが首肯する。

最近は々なことがあって頭がパンクしそう。

でも弱音を吐いている場合ではありません。

その後も私はナイジェルと話し合い、今後の方針を固めたのでした。

◆ ◆

魔王が封印されている場所を探す。

言うのは簡単。だけど場所探しは早くも難航していた。

「誰も知らないみたいですね……」

「だね」

ナイジェルが困ったような顔で言った。

神の聲を聞いた翌日。

私達は早速、魔王が封印されている場所を知ってそうな方々に対して、聞き込みを始めた。

しかし誰もそのことについて知りませんでした。

まあ仕方のないことかもしれません。

そもそも大昔に戦爭があって、この地に封印されていることすら、誰も知らなかったのですから。

そう簡単に見つけられるものとは思いませんが……それでも、時間は無限にあるわけではないので、やっぱり焦ってしまいます。

それから數日が経過したが、一向に見つからず、悶々としたまま日々が過ぎていった。

「ジークハルトさんも知らないみたいですし……どうすればいいでしょうか」

「ジークハルト……エリアーヌの言っていた歴史學者だよね。現狀、一番知ってそうな人だったけど……彼も分からないとなると、正直お手上げだ」

「ですね」

「……そうだ。フィリップならなにか知らないのかな?」

ナイジェルがポンと手を叩き、私にそう質問する。

霊王のフィリップは、大昔の戦爭のことや魔王についても知っていました。

彼ならなにか知っているかもしれません。

だが。

「ダメでした。ドグラスに頼んで、霊の村まで聞きに行ってもらいましたが……フィリップも知らないようです」

「そうだったのか。一筋縄ではいかないってところだよね」

ナイジェルが落膽の表を見せた。

こうしている間にも、魔族達は著々とこの國を攻める準備をしているでしょう。

結界があるうちは大丈夫だと思いますが……油斷は。いつなにを仕掛けてきてもおかしくありませんから。

神の聲もあれから全く聞けないし……」

もちろんこの間、前回と同じ方法を使って神の聲を聞こうとした。

だけど何度やってもダメ。二度と神がナイジェルのを使って、喋ってくれることはありませんでした。

「……私、ドグラスともう一度話をしてみます。彼には王都の警備をお願いしていますから……その時になにか見つけた可能もあると思いますので」

「うん、分かった。僕も付いて行きたいけど……ちょっと、また大臣達との會談があってね。悪いけど……」

「謝る必要はありません。お互い、やるべきことをやりましょう」

「そうだね」

次にすべきことが決まったなら、早速行です。

私は踵を返し、ドグラスのところへ向かおうとした。

しかし。

「エリアーヌ」

「はい?」

ナイジェルに呼びかけられ、振り返る。

するとナイジェルは私を抱き寄せ——そして自分のを私のに軽く押し當てたのです。

へ……ひゃっ!

「……急にごめんね。でもエリアーヌから元気を貰いたかったんだ。もっとエリアーヌと一緒にいたいのに、事がそれを許してくれない。だからせめて……ってね」

「か、構いません。ですが、誰かに見られていたらややこしいですし、あまりこういう場では止めましょう」

この時の私、さぞ顔が真っ赤になっていたでしょう。

周りには誰もいないことは、ナイジェルも確認していたと思う。

だけど……それとは別に、不意打ちでこんなことをされてしまえば……私の心臓がいくつあっても足りません。

ナイジェルが顔を離した後も、私のはドクドクと激しく脈打っていた。

「じゃあ行ってくるよ。エリアーヌも頑張って」

「え、ええ」

そうナイジェルは手を振って、私から離れていった。

……ふう。

お母さんに甘えるような子どもっぽい一面を、たまにナイジェルは見せる時がある。

そういうナイジェルも可いく思った。

「でも……私も元気を貰いました。気合いをれ直して頑張りましょう」

グッと握り拳を作り、私もあらためて歩き出そうとした。

……ん?

「あれ……? そこに誰かいらっしゃいます?」

通路の曲がり角。

妙な気配をじたので話しかけたが、答えは返ってこなかった。

すぐに気配は消えましたし、私の気のせいでしょうか?

先ほどのことを見られたら大問題……というわけでもないですが、説明が面倒臭そうですからね。気のせいならなによりなんですけれど……。

「まあ今はこんなことを気にしている場合ではないですね。すぐにドグラスのところへ向かわないと」

私は気持ちを切り替えて、歩き始めた。

先ほどじた妙な気配のことは、すぐに頭からなくなった。

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