《真の聖である私は追放されました。だからこの國はもう終わりです【書籍化】》108・男同士の友

「やはりここにいましたか。ドグラス」

この街の時計塔。

王城の次に高い建で、ここからだったら王都全を見渡すことが出來る場所。

そこの最上階にドグラスはいました。

ふちに腰掛けて空を眺めるドグラスに、私は話しかけた。

「どうした? 魔王が封印されている場所を、無事見つけ出すことは出來たのか?」

ドグラスは私の方へ振り返って、そう問いかけてきた。

「いえ……全く分からずじまいです。だからドグラスともう一度話がしたくって」

私はドグラスの隣に腰を下ろす。

「我か? 殘念だが、我も知らないぞ。大昔の戦爭とやらは我が生まれる前だった。我には封印場所など見當付かん」

「それでも……です。こうして言葉をわしていたら、なにか閃くかもしれないでしょう?」

「ガハハ。まあそうかもしれぬな。しかしそうなら、念話を飛ばしてくれればすぐに汝のところに向かったというのに。わざわざここまで來てくれたのか」

「ええ。ドグラスの手を煩わせるのも悪い気がしましたし、私もここから街の風景を眺めてみたかったので」

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「我は別に——まあ汝がそう言うなら問題ないが」

とドグラスは前を向いた。

「風が気持ちいいですね」

「うむ。隨分涼しくなってきたしな。王都で見つけた、我のお気にりの場所だ」

ドグラスがそう言うのも頷ける。

こうして王都を一するのは、何年ぶりのことでしょうか?

なくとも聖になってからは一度もありませんでした。

街は魔族に躙された爪痕が、未だに殘っている。人々の不安も拭えない。

しかし……それでも、國民は力強く復興しようとしている。

潰されかけても、何度でも立ち上がろうとするのが人間の良いところかもしれませんね。

この風景を見て、なんとなくそうじた。

「あら、ドグラスの肩に鳥が……?」

橫を向くと、ドグラスの肩に小鳥がとまっていた。

その小鳥の口にドグラスは指を近付ける。

「ここで休憩していると、よく來るのだ。くすぐったいったら、ありゃしない」

ドグラスはそう口では言うものの、ちっとも不快そうにはしていなかった。

それどころ、口元にはうっすらと笑みが浮かんでいるくらい。

小鳥も安心しきっているのか、ドグラスが指を近付けても逃げようとすらしていなかった。

「ふふ。きっとあなたのことを信頼しているんですよ。あなたなら、害を與えないって」

「そうか? 鳥も休憩したかっただけだろう。こいつにとって都合が良かっただけだ」

照れているんでしょうか。

ドグラスが頬を掻いて、そう答えた。

私は小鳥ではない。鳥視點のことは分からない。

でも……こうして鳥達の気持ちを考えると、私の意見もドグラスのものも間違いではない気がした。

鳥は喋ってくれないから分かりませんけれどね。

……ん?

待てよ……。

「鳥視點……?」

「どうした、エリアーヌ」

考え込む私の顔を、ドグラスが覗き込む。

「……今まで私は視野が狹くなっていたかもしれません。自分達のことしか考えられませんでした」

それは二週間というタイムリミットのせいかもしれません。

しかしこうして王都を一し、鳥達の気持ちを考えることによって、私に別の視點が生まれていた。

「魔(・)族(・)視(・)點(・)で考えたら?」

「なにをぶつぶつ言っているのだ」

ピンときていないのか、ドグラスが首をひねる。

「クロードから聞いたんです。上級魔族のバルトゥルは、本來國王陛下が座っていた玉座に座り、あまりそこから離れようとしなかった……と」

フィリップ達のところへ攻撃を仕掛ける前は……ね。

「それがなんなのだ? ただ支配者ぶりたかっただけだろう、ヤツ等は」

「その通りかもしれません。しかし……もしなにか理由があるなら? そこから離れようとしなかった理由があるなら?」

それは小さな小さな引っ掛かりだったかもしれません。

バルトゥルはこの世界を支配しようとしていました。それは狹い魔族界ではなく、もっと広い世界をしたからに違いありません。

それなのに、わざわざそんなに広くない玉座の間に閉じこもる必要がどこに?

「うむ……もしかしたら、バルトゥルはなにかを怖がっていたかもしれぬな。そこになにかがあって、それを守ろうと……あ」

「ドグラスも気付きましたか」

ドグラスもハッとした表になる。

「玉(・)座(・)になにかがある……と」

「ええ。まだ分かりませんが、調べてみる価値はありそうです」

私はその場からゆっくりと腰を上げる。

「調査も行き詰まっていたところです。クロードにも言って、今から玉座を調べてみます」

「ふむ、それが良いかもな。エリアーヌ、我は行かなくていいのか? そこにもしなにかあるなら、危険に……」

「いえ、ドグラスは引き続き王都の警備をお願いします。なにかあればすぐに念話を飛ばしてください。結界はまだあるものの、時間が経って効力が薄れています。魔族が攻めってこないとも限りませんから」

「分かった。上手くいくように祈っているぞ」

そう言って、ドグラスは拳を突き出した。

一瞬なんのことか分からなかったが、私も拳を作って彼のものとカチンと合わせた。

「お任せください。ドグラスも頼みましたよ」

「ああ」

こうしていたら、心と心が深く繋がった気がした。

男同士の友……ってこんなじなんでしょうかね?

ドグラスと一旦別れ、私は再び王城に戻った。

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