《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》8

確かエドワード王子は、ナタリーより4つ年上であった。その年の差は、ユリウスとも同じで。しかし去り際に見た、彼の表は無邪気で…年のようにも見えた。

「ほんとうに…騒がしい子ども…じゃろう?」

「…い、いえ」

「しかも、わしにも言わずに…あんな大層な騎士が護衛におったなんてのう…まったく困った奴じゃ」

あんなに守りが堅くても、私が知っていた未來では…彼は亡くなってしまっていた。の病気、毒には騎士の守りで太刀打ちできなかったのだろう。そしてあの変な咳の原因が、毒ということは。公爵家にいたナタリーもまた「毒」をどこからか摂取して――?

そんな恐ろしい想像に、首元にあった飾りをって…不安を紛らわせる。そういえば、いったい何をつけられたのか――ナタリーは確認をしようと首元に付いているソレを外した。ひし形の金…その中央には意匠を凝らした獅子の絵柄が彫り込まれていて。王族の証明たるペンダントであることに間違いがなかった。

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「ほうほう…そんなものを、ナタリー嬢にのぅ…」

「フランツ様、ど、どうしましょう」

「いや~わしには、どうにもできんが…まあ、利用価値があるかもしれんからのう!」

「そ、そうでしょうか」

フランツは、やれやれといった表を浮かべながら…通行や質屋など、好きなように使ってやれ、と自由に言うが。ナタリーには気が重かった。自由に使ったあと、何が待ちけているのか…想像しただけでも怖さがある。

「まあ…そんなけったいなものを、寄越すほど…あやつにとっては、嬉しかったんだろうよ…」

「そ、そうですか…」

「わしには、ナタリー嬢を逃がすまいとする首…おっと、なんじゃろうのう…こう友好の証じゃろうか?」

「フランツ様…今なんと…」

フランツは「ほっほ」と笑ってごまかそうとしているが、完全に不穏な言葉が耳にってきている。いったいこのペンダントにどんな意味があるのか…。參加予定である王家主催の舞踏會で返せば大丈夫…とひとまずの見通しをつけた。

「しかし、ナタリー嬢の魔法でもってして…癒しの魔法がないと解毒できんとはのう…。王家は相當居心地が悪い場所のようじゃな」

「……そう、かもしれませんわね」

「あまり不用意なことは言えんが…ナタリー嬢も気を付けてくだされな」

その言葉にこくりと素直にうなずけば、嬉しそうにフランツは「うむうむ」と納得した。また話しながら…ペンダントは、腕に掛けてあるポーチにれて保管することに。

「遅くなったが…エドワード様を助けてくれて謝するぞ。わしも手を盡くしておったんじゃが…もうどうしようもないところまで、來ていてのう」

「そこまでひどく…。本當に、治療できて…お役に立てて良かったですわ」

「うむうむ。…まあ一見は、あやつが調が悪いなんて気づかんじゃろうがのう…。やせ我慢で、どこまでもくからに…」

「……」

「もうかれこれ5年くらいかのぅ…わしが勝手に思うてることじゃが…孫が元気になった気分ってやつじゃな…」

彼の表は、エドワードのことを気遣う家族のそれで。ナタリーのこともそうだが、フランツは弱っている人を放ってはおけない質なのだろう。きっとそれが醫者の本分なのかもしれないが。

「長い話をしてしもうたのぅ。歳をとるとこれだから…すまないのう」

「いえ…フランツ様がエドワード様を思う気持ち…素敵だと思いますわ」

「ほっ、そう言われると…照れてしまうわい。…ああ、そうじゃ、涙草が屆き次第、薬を作るからのう」

「…ありがとうございます」

「いいんじゃ、やっと一人、患者が良くなったからのう…ちょうど時間も空いたわい」

ナタリーはフランツにお禮を述べ、帰宅の準備をする。肩の荷が下りたのか、フランツも明るい笑顔で玄関まで送ってくれた。

◇◆◇

「お、お嬢様!大丈夫でしたか?」

「え?私は無事ですが…どうかしましたの」

馬車でナタリーの帰りを待っていた者が、慌てた様子で聲をかけてきた。彼が言うには、フランツの家の扉から目が開けられないほどの突風が吹き荒れたらしく。馬も自分もびっくりしたのだという。

「あら…そうでしたのね、むしろ何も怪我がなくて安心したわ」

「わたくしめのことより、お嬢様の無事の方が…なによりです!今日は、ご用事は済んだのでしょうか」

「ええ、屋敷までお願いするわね」

「はい!承知しました!」

ペティグリューの家紋が描かれた――いつもの馬車に乗り、両親が待つ家へと走っていく。

◇◆◇

ガコンッと、突然馬車が止まる。馬たちの警戒がこめられた嘶きも耳元に屆き。馬車の部にある――者と話せる小窓をし開け、「どうかしたの」と聞けば。

「お嬢様…どうやら、盜賊に囲まれたようです…」

「……そんな」

気づけば夕闇の時刻になり、辺りはうすぼんやりとした暗さに包まれていた。ペティグリュー家までは、まだし遠く…外の景が見える窓からは、松明の火がぽつぽつと見えてくる。

「…へっへへ、今日はツイてるぜ!こんなお貴族様の馬車がノロノロと現れたからなあ!」

「カシラァ!どうやら、この馬車の中にはお貴族様のがいるようですぜぇ」

「そいつぁはいい!貴族のは奴隷オークションで高く売れるからなあ!」

「へへ、上玉だったらオイラたちにも、味見させてくれねえですかい」

大きな聲で聞こえるのは、おぞましい容ばかり。ナタリーはどうすればこの危機を出できるか考える…が、フランツの所に戻ろうにも距離が遠すぎるし。――もうすでに囲まれてしまっているので、絶的なのだ。

盜賊のリーダーらしき男が、「かかれ!」と周りに命じたのをきっかけに…男達の雄びが響いてくる。者は小窓越しに、「お嬢様っ、どうしましょう」とパニック狀態だ。

(――このままではいけない…まだ死ぬと確定してないのだから…)

せめて馬車から自分が下りることで…者や馬たちを救えるかもしれない。なんなら、襲い掛かってくるのを止められたりも。そんな…甘いかもしれない考えだが、やるしかないと馬車の扉を開けようとした。その瞬間。

「…危ないから、開けるな」

ナタリーの前にある扉が、再び閉まるのと同時に――聞きなれた低い聲が耳にる。夕闇よりも暗い漆黒を纏う…その姿。瞬きをするのも忘れ、その姿を目に焼き付ける。ルビーがはめ込まれたかのような紅い瞳が、獲に向き…黒の大きな馬と共に走り出す。

そこにいたのは紛れもない――漆黒の騎士ユリウス・ファングレーであった。

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