《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》17
「どうしましたの?フランツ様」
「…その、わしも聞いたばかりだから、噂程度の話として聞いてほしいんじゃが…」
「え、ええ」
暗い表のフランツにつられて、ナタリーの表もくなる。
「わしは僻地におるからの…んな話が聞こえてくるんじゃが…どうやら、ここの領地に近い國が攻め込む準備をしておるって話がの…」
「そ、それ、は」
同盟國はこちらに侵攻しないだろう。とするなら…ナタリーが以前に見た戦爭の――敵國が準備をしているのか。
「…ああ、本當なら旦那様にお話しすべきなのじゃが、まだ今日會ったばかりのわしの話を耳にれるのもどうかと思っての…まあ、あとは…」
フランツは微妙な顔をする。おそらく、さっきの部屋で見た父と母のやり取りを見て――この話をするのを遠慮していたのかもしれない。
「えーっと、頼りになるときはなるお父様ですので…」
「そ、そうか!いや、なにそんな心配はしとらんかったがの…いや~、ほっほっほ」
笑顔でごまかしているが、ナタリーも強く否定しづらい。お母様は周りから見て、良くないレッテルをられるから…口を酸っぱくお父様に「威厳を」と言うが――。
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(…うーん、あれがお父様のいいところでもあるし…)
ありのままの…表も裏もない姿は、安心するというか。これもあくまで、家族のひいき目になってしまうのかもしれないが。
「フランツ様…ご忠告、謝いたしますわ」
「ほっほっほ。いいのじゃよ、戦爭なんて起きん方がいいんじゃがのう…」
それは、ナタリーも強く同意する。確かに以前も戦爭は起きたが――こんなに早く準備しているものなのだろうか。まだ、一年ほど猶予があると思っていたのに。
(なんだか…嫌な予がするわ)
◆◇◆
お母様の診察が終わり、ひとしきり家族でお禮を言い。フランツが帰った後。ナタリーはお父様の部屋へ向かう。ちょうど部屋に著いた瞬間、ばったりお父様と出會う。
「ナタリーじゃないか…!どうしたんだ…父さんの子守唄を、ついにっ」
「お父様、ちゃんとしたお話がございます」
「あっ…はい」
お父様はどこか寂し気な表をしながら、ナタリーを部屋の中に招きれる。ソファで対面する形で座り――「戦爭に備えて、兵をきちんと集めたほうがいいと思いますの」と話を切り出した。
「え、ええ!?」
「突然のことで驚くのかもしれませんが、ここは他の國に近いため…攻め込まれる危険が高いと思いませんか」
「…う、ううむ」
お父様は今まで見たことのない程の難しい顔をする。それもそうだろう、ペティグリュー家の領地は今まで戦火に巻き込まれたことがない。だからこそ、兵力だってなく――ナタリーの知る未來では、ひどい慘劇に陥った。
「…お願いします。お父様、領地の守りを増やしてくださいませ」
「…ふむ」
お父様が、渋るのもわかる。守りを増やすということは金がかかることだ。ナタリーの一存ですんなりと決められない。きっと説得するのも難航するはずだ――と思っていたのだが。
「…わかった」
「え?」
「…ナタリー、父さんは戦力を強くしようと思う」
「…お、お父様、その…本當にいいのですか?」
お父様はすんなりとけれてくれた。自分で言っておいてあれだが、つい心配になり――聞き返してしまう。そうすると、優しい笑顔を向けてくれて。
「どうしたんだい?ナタリーが言ったこと――まあ、確かに急に頷いたのは、気になるか」
「…え、ええ」
「父さんは、今回…母さんの件で、ナタリーにとても謝しているんだ」
お父様は、ナタリーの瞳をきちんと見つめてくる。そして深く頷き。
「なにより、父さんじゃ見えなかったことを…ナタリーが気づいていると、理解したんだ」
「……」
「本當に、父さんの目は節だな…まさか最の人を亡くしてしまったかも…なんて」
「それはっ、お父様のせいじゃ」
ナタリーの言葉をけ止め、どこか満足そうに――そして確かめるようにお父様はまぶたを閉じる。
「ナタリーは優しい子に育ったな。だからこそ、なんだ」
「…?」
ゆっくりとまぶたを開いて、ナタリーを視界に映すと――真剣な面持ちで。
「父さんたちのことを考えてくれる…ナタリーの言葉を信じられないのなら――これから先、何も信じられなくなるだろう」
會話の中に、確かな溫かさをじる。その言葉は、ナタリーのに響き。
「お父様…」
「おや、父さんも泣き蟲だが――ナタリーも父さんに似ているな」
「も、もう…っ!」
ナタリーは、気づけば目に涙を浮かべていたようで。それを見たお父様は、ゆっくりと席を移し…ナタリーの隣へ。
そして娘をぎゅっと抱きしめる。い頃以來かもしれない、いや死ぬ前を合わせるとかなりの期間ぶりになるだろう。
(お父様は…こんなにも思ってくれてたんだわ)
いつもは、父に対して冷靜な態度のナタリーだったが。本當はなんだかんだ…甘えたかったのかもしれないと気づく。
「お父様、ありがとうございます」
「ううん。いつだって、父さんを…そして母さんも頼っていいんだからな」
「ふふ…、そうしますわ。あ…」
お父様の機の上に置いてある紙を見つけて――いたずらな笑みが思わず浮かぶ。
「どうしたんだい?ナタリー」
「お母様へ贈る、新しいドレス…緒にしておきますわね」
「えっ!どうして…あああ、依頼書が見えていたか…サプライズだから…な?」
「ええ、お母様もきっと喜びますわ」
完日は、來年――ナタリーが知る戦爭後の日付だった。
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