《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》42

「ナ、ナタリー!父さんが代わりに行くからっ、ナタリーは行かずとも…!」

「あなたっ!それなら、私でも大丈夫なはずよ…!」

「旦那様っ!?奧様っ!?こ、このミーナが、いきます…!」

ナタリーの言葉に反応した三人は、ナタリーが危険に遭うかもしれないと心配をして。ナタリーではなく、自分がっ!とを乗り出してアピールしてくる。

(私は周りに…本當に恵まれているわ)

自分のよりもナタリーを案じてくれる両親とミーナ。彼らが、心配して代わりに行きたいと思う気持ちはありがたいが…。

「お父様、お母様…涙草の場所はご存知ないですよね?」

「うっ…それは…」

「……そうね」

お父様は、急に分が悪そうな顔をしながらも…「でもっ!」と譲れない気持ちを出す中。地図なんて読み慣れてないお母様は、しゅんとして暗い表になる。

そうした顔をさせてしまうことに、悪いなと思うが――次に、ミーナを見て。

「…ミーナ」

「は、はいっ!」

「どうやら、魔法が使えないと…」

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「知ってます…!魔法が使えない私は、命が危ないかもしれないってことはっ!」

ミーナもまた、譲れない部分があるのか。ナタリーを説得するように。「自分が行きます!」と言い募ってくる。

大好きな、大切な人たちから言葉を貰って。ナタリーは思ってくれて嬉しさをじながらも…決心したように、顔を彼らに向ければ。

「私は、お父様、お母様…そしてミーナを危険に遭わせたら、そんな自分が許せませんわ…」

「そ、それは…同じ…」

「ペティグリューは、癒しの魔法をつかさどる…そして、命を脅かす危険なくする。そうでしたよね?お父様」

「うっ」

骨に、苦し気な表に変わるお父様。それを聞き――さらに、強く言い出せなくなったお母様とミーナ。そう、ペティグリューは困っている人…とりわけ死にそうな人がいたら放っておけない。

そんなお節介さを、い頃から學ぶ。

それは、屋敷の使用人を越えて――領民たちにも浸しているのだ。だからこそ、彼らもナタリーがエドワードと共に行くのが、一番…命を落とす危険ないと分かりつつも。

ナタリーを一人にさせて大変な目に遭わせたくない…と。彼らの優しさが、生まれてしまって。

「…うっ、分かった」

「お父様…」

「ナタリーが案するのは仕方ない…」

「あ、あなた」

ナタリーの言葉に、しぶしぶ引き下がるお父様の姿が見える。お母様が、心配で仕方ないと悲しそうにしていて。父の表を見ると、ナタリーは心が苦しくなった…その瞬間。

「だけどっ!父さんも一緒に行くからねっ!」

お父様が、宣言するように高らかと言い放った。お母様もミーナも…もちろんナタリーも。お父様に視線を向ける。いい案が思い浮かんだとばかりに、お父様は笑顔で。

「ナタリーだけでは、護衛が足りないだろう…!幸い、父さんは魔法が使えるから…心配は無用だっ!」

「………へ?」

「殿下、一人くらい増えても瞬間移の魔法は大丈夫でしょうか?」

「あ、ああ…」

「よしっ!それなら、父さんが必ずナタリーを守って…一緒に帰ってくるからな…!もう何度も経験しているから…これなら、君もミーナも…安心だろう!」

しの沈黙が続き。エドワードが、「こちらでも、護衛はしっかりとするので、ナタリーのお父上は…」と言葉を続けようとすれば。

「あ~~ちょっと耳が遠くなってまして…歳かもしれませんなあ」

「だから…」

「やだぁ~~ナタリィ~、父さん、絶対護衛するからっ…じゃないと…」

「え…?」

お父様が、いつぞやの駄々をこねるような姿勢…床に這いつくばろうとしている気配をじ。ナタリーはすぐさま。

「お父様っ!」

「な、なんだ…」

「何も起こらないかもしれませんが…無茶はしないって約束できますか…?」

「うんっ!」

「ナ、ナタリー?」

エドワードが、驚いたように聲をかけてくる。…それも、そうだろう。ナタリーとお父様の會話を聞いていると。二人の立場が逆転したようにじてしまい。

(床で駄々をこね始めたら…もう止められないから…)

ナタリーは、護衛を許可されて。嬉しそうにはしゃぐお父様を…遠い目で見ながら、自分を納得させていた。

床で醜態を曬して提案をけるより、きっとれたほうが。何とは言わないが、ダメージがない気がする。恥心…いやこれ以上は考えてはいけない。

「その、申し訳ありませんが…エドワード様…お父様も共に…」

「あ、ああ…ペティグリューの総意であれば、僕から異論はないよ」

「ありがとうございます」

エドワードの了承を得て。その言葉に、満足そうにお父様は頷いていた。そして、お母様に「家のことは、代わりに頼むぞ」と言い。お母様も、お父様のワガママに慣れてしまっているのか。

極めて冷靜に、「決して、殿下に…ナタリーに迷をかけてはいけませんからね…」と話しながらも。ナタリーが一人で行くことにならなくて、本當に良かったと…安心しているようだった。

「怪我の心配は、ぬぐえませんが…殿下、そして二人を信じておりますからね」

お母様の言葉に、ナタリーとお父様は頷いて。エドワード王子も、しっかりとけ止めているようだった。

「では、明日の朝…迎えに來るので。僕は、王城に帰るとしよう」

「エドワード様、來ていただいて…その心に謝しますわ」

エドワードは、ペティグリュー家に見送られる形で。また玄関へと戻り。そこで手をかざし始めた。

「魔法で帰るので…無作法だけど、許してほしい」

「え、ええ。構いませんわ」

周りが見守る中、エドワードは床に手をかざし。何かをつぶやく。すると…床を覆う形で大きな黃金の魔法陣が現れた。それを確認したのち。

「では、失禮する…また明日もよろしくね」

そう言って、彼はパチンと指を鳴らす。その瞬間、突風がビュンと室に吹き込んできて――思わず。その場にいた面々は、目をつぶることになる。風が収まり、最後に聞こえたのは。

「ああ、伝え忘れたけど…明日も魔法で來るね」

そう楽し気に、話すエドワードの聲だった。

そんなエドワードを見送った後。山へ向かうことが決まったナタリーとお父様は、明日に備え。傷薬から、を保護する服まで。萬全な準備をした。

そして力も必要だと。早めに就寢することになったのだ――。

◆◇◆

小鳥のさえずりが聞こえる朝。

エドワードが來るし前に――ミーナが、慌てたように走る音が聞こえてきた。

「お、お嬢様ぁぁぁあ!」

バタンと…いつものように。ナタリーの部屋の扉を、勢いよく開けてきて。

「どうしたの…?」

「そ、それが…」

ミーナの手元には、朝の新聞が握られている。なんだか、嫌な予がしながらも…ミーナから渡された新聞を見れば。

王家直屬騎士が発見!不審死の謎!?

大きな見出しにそう書かれていたのだ。どうやら、ペティグリュー領から出た崖に、その死はあったらしく。騎士が到著したころには、からを抜かれたように…干からびていたとのことで。記事の近くには、報を求むと記載されていた。

なにより、その人の似顔絵があって――。

「こ、この人、昨日お話した…報告が遅れていた…採取班の人ですっ!」

悲痛なミーナの聲に…ナタリーは頭からの気が引く覚を覚えた。

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