《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》43

ミーナが報告した男が謎の死を遂げた。

つまり、ナタリーが知らなくとも…何かしらの“危険”が生まれているのは必至で。それが、宰相の一件が関わっているからなのか。すべてがわかるわけではないが。

――たまたま、事故死…なんてことはないわよね。

本日向かうことになった、ペティグリューの山に向けて。ナタリーは、背中に嫌な汗を流しながらも。エドワードの到著を待った。

◆◇◆

新聞の一件から、し時間が経った頃。

お父様と共に、玄関で待っていれば。昨日と同様に、魔法陣が輝きだした。そして、優雅な足取りでエドワードがその真ん中に立っていたのだ。

「おはよう…朝から、出迎えてくれてありがとうね」

「い、いえ…。おはようございます」

続けて。「お越しくださり、ありがとうございます」とエドワードに謝を言った。そうして屋敷に來た彼に、視線をやれば。

魔法陣から現れたのが、エドワードだけであると気が付く。“影”が背後にいるのだとしても、他に護衛がいなくて大丈夫なのか――そう思い。きょろきょろと辺りを見ていると。

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「ああ。他の騎士たちは…屋敷の外に待機させているよ」

「まあ…そうだったのですね」

ナタリーの疑問に、エドワードが回答をし。「一緒に、移することもできたのだけど…さすがに、大勢で玄関にいたら、邪魔になるかと思ってね」と、ウィンクをしながら。彼は、笑っていた。

その笑みに、頼もしさと。こんな大掛かりな魔法をいともたやすくできてしまう…エドワードの底なしの強さにしぞっとしたナタリーだった。

「ナタリーのお父上も…準備ができているみたいだね…。では行こうか」

「殿下、この度はよろしくお願いします…!」

エドワードの合図と共に。ナタリーとお父様は、屋敷に別れの挨拶をして。お父様の熱いリクエストのもと…一緒に馬に乗り。山へと向かった。

エドワードが率いている騎士たちはざっと1小隊ほどで。戦爭でもないだから。宰相1人に対して過分なほどの人員だった。

ただ、いつもゆったりとした時間が流れるペティグリューの街には…し不釣り合いなじを殘しつつも。山のふもとまで、問題なく進むことができた。

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「さて…この辺りからなのだけど。地図で見るとり組んでいてね」

「そうですわね…」

山のふもとで、馬から降り。一行は、歩きで該當の場所までやってきていた。お父様とナタリーは、景を見に來たりなど。ここの山へは、それなりに知っている。

また、ナタリーに限っては。小さな頃から、涙草を使用して花冠を作ったりしたので。特に地形を把握している。そうした思い出が、今に活かせるなんて思いもしなかったが。

「涙草の採取をお願いしたのは…こちら、ですわね」

記憶を頼りに、そして依頼した時に自分で描いた地図を思い出すように。エドワードに聲をかけながら、その場所へと歩みだす。ふもとに著いてから、それほど時間が経たないうちに。その場所にたどり著いた。

そこは、一面が白い花弁で覆われた――花畑にも似た風景があって。きっと今回のことがなければ、心を癒してくれる素敵な時間になったことだろう。

「ここが、お伝えしていた――涙草の場所ですわ。近くには、ペティグリュー家の跡もありますので…景観は崩れにくいのです」

「案をありがとう…なるほど。綺麗な場所だね」

周りは木々に囲まれている中。ぽっかりとしだけ空いた、花々の景を見渡し。エドワードは早速騎士たちに命じながら、辺りをくまなく調査し始める。

「ナタリー、疲れてない?…父さんが持って來た水を飲むかい?」

「お父様…お気遣い、ありがとうございます。でも大丈夫ですわ」

「それならいいけれども。なにかあったら、父さんに言ってねっ!」

「え、ええ」

ふもとから、現在の場所まで。を引き締めてやってきたものの、いつも通りの平穏な風景が見えていたので。お父様もナタリーも、し拍子抜けしていた。

何かあらぬ敵などに襲撃されるかもと…考えすぎたせいかもしれないが。ナタリーとお父様も、周りを見るべく歩き出そうとしたその時。

「で、殿下っ!ここに」

一人の騎士が、何かを見つけたらしく。大きな聲を上げていたのだ。それにつられて、人が集まれば。

「…、かなり大きなものだね」

「はい…しかし、どうやら元宰相の魔力と…他にも多量の魔力エネルギーがあるようです」

「そうか…」

赴いた先にあったのは。涙草に隠されるように…草木が多い茂る土壁だった。その壁に、今回の人員などすっぽりってしまう程の大きながあったのだ。

「このは、元からあったのかい?」

「い、いえ…私は初めて見ますわ。お父様は…?」

「父さんも、見たことないな。こんなは…」

「……なるほど」

今まで見逃していたのが、ウソみたいな。大きなの存在。そして、エドワードがため息を吐きながら。「どうやら、ここは…隠匿の魔法がかかっていたようだ」と眉をひそめていた。

彼が言うには、今回持ってきた魔力を測るが無かったら。見逃すほどのものらしく。

「まったく…無駄に、才能があるね」

そう愚癡をこぼすエドワードの瞳はとても鋭かった。

「このの方向を見るに。あの跡の下に続いているようなんだが…跡には地下などがあったりするのかい?」

「地下…そういったものは、私は知りませんが…」

ナタリーが困した顔で答え。そして黙っているお父様を見れば。お父様は、険しい表になっていた。

「お父様…?」

「あ、ああ。父さんも伝え聞いたぐらいなんだが…」

「ほう…?」

お父様は、言いづらそうにも。口をゆっくりと開いて。

「その跡の地下には…ペティグリューのご先祖様の…があるとされているんだ」

ナタリーもエドワードもピンとこず。お父様の言葉に、考える表を見せる。そんな二人の表から、お父様は説明を続けるように。

「まあ、ただの品ならいいんだが…その、父さんが聞いたところ…なにやら、古代兵にも似た…化けがいるんだと言われていて…な」

「……っ!」

「いや、あくまで噂なんだがな!その夜更かしする子どもをなだめるための、方便というか…は、はは」

お父様は、「自分がい時に廃れた噂だったから…今、ふと思い出してね」と。苦笑いを浮かべながら、話した。その話を聞いたのち。エドワードは、深く考え込んでしまっていて。

ナタリーも、そんな噂があるとはにも思わず。ただの伝承であれば…と願う。

「つかぬことを聞くけど…この跡は、一本道かい?」

「いえ、迷宮としても機能していましたので…簡単に深部へは行けぬと思いますが…」

「……そう、か」

お父様がエドワードに、跡が迷路のように分岐していることを伝える。そして。「ただ、ペティグリューの魔法があれば。迷うことはそうそうございませんが」と話した。

「そうでしたのね」

「あ、ああ。跡なんて管理するくらいで…中にる機會なんて、普段はないからな」

ナタリーは、家の跡について。知らないことばかりだった。おそらく、お父様が知っているのも…領主ゆえだからこそなのかもしれない。

「殿下…」

「どうした?」

「どうやら、下の座標ほど…魔力量が多いようです」

「ふむ…」

部下から、そのように伝えられたエドワードは、先ほどから何かを悩んでいる様子だった。彼を窺うように、視線を向ければ。

「ああ、ごめんね。ちょっと、悩ましくてね」

「そうなのですね…」

「この部隊で、行くべきかどうかを…ね」

エドワードが悩んでいるのは、この人員で跡の迷宮に行っていいかどうかの判斷だった。なにより、ペティグリューの魔法が必要ということで…また巻き込む形になってしまうことを危懼しているようで。

「エドワード様…」

「分かっているんだ。癒しの魔法を使える人員が二人いれば…なんとかなるかもしれない、と考えてしまってね」

「……それは」

苦蟲を噛み潰すように。エドワードは、「この部隊には、癒しの魔法を扱えるものがいなくて、ね…もし、部隊を分けて移するときにでも…二人いればまかなうと思ってしまったんだ」と。

「僕は…君たちを巻き込まないと言いながらも…すまない」

「殿下…いえ…」

お父様も、その考えは戦略的に理解できるところがあるようで。ナタリーを巻き込むことに、嫌な顔をしながらも。を噛んで耐え忍んでいるようだった。

「…エドワード様、ここまで來ましたもの。私、行きますわ」

「ナタリー…」

「ほら、エドワード様もご存知でしょう?私は、お節介焼きだって」

「……ふ、ふふ。そうだね…ありがとう」

お父様は、親としての気持ちと國に仕えなければいけない部分がせめぎあっているようで。複雑な顔になっている。

「お父様っ!」

「…なんだい?」

「私が行きたくて、同行しているのですもの!お父様に責任はございませんわ」

「ナッ、ナタリ~!」

今すぐにでも、屋敷に帰りたそうな態度だったお父様は。ナタリーの言葉で、改めて姿勢を正し。「よしっ!父さんが、必ず守るからな!」とナタリーをぎゅうぎゅうと、抱きしめてくる。

「ふふ、頼もしいですわ」

「頑張るよ~~ううっ」

お父様の振る舞いに。エドワードもだいぶ慣れてきたようで…特に、眉をしかめることもなく。

「二人ともありがとう。では、他に近くにいる騎士たちで…來られるものがいないか。連絡を取ってみるね」

そうエドワードが聲をかけてきた。気づけば、朝から時間が経ち。晝過ぎに差し掛かっていた頃。お父様の抱擁から、解放されたナタリーは。後ろから聞こえてきた聲に――耳を奪われた。

「ご令嬢…?」

聞きなれたその聲に。

「えっ」

そう、思わず反的にバッと振り返れば。そこには。

「閣下…?」

団員を率いているユリウスが…こちらに向かって歩いてきていたのだった――。

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