《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》44

赤い瞳と視線が合い。

時間が止まったと思うほどに、頭が真っ白になった。

――どうして閣下がここに。

「おや…?ファングレー公爵が、ここにいらっしゃるなんて。なんて偶然なのでしょう」

沈黙を破ったのは。エドワードの言葉だった。彼は、ユリウスに不敵な笑みを浮かべながら…探るように、見つめる。すると、エドワードの言葉にハッとしたユリウスが。

「…殿下。お久しぶりでございます…今日は、所用があってここに來たのですが…」

「ほう…?」

「おそらく、殿下の用事とは別件でしょう。その…急を要していたので…。ペティグリュー家にも、此度の用事で…朝に、伺いを立ててから來たのですが…」

ユリウスが言うには。ナタリーたちが、出発した後に屋敷へと訪れていたようで。手には、お母様が書いたであろう…領地の滯在許可証があった。

「そうなのですか…僕は全くあずかり知らぬことでしたから。警戒をしてしまい…申し訳ございません」

「い、いえ…」

同盟國の公爵といえど、エドワードは遠慮をしない。ユリウスが來た目的を、早く知りたいのか。「それで、公爵は…どのような用件で――」と話し始めた時。ユリウスの後ろから。

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「ふぅ…それは、俺の方から説明しましょう。うちの団長は口下手ですから…」

「マルク…」

「やっと追いついたと思ったら、なにやら殿下と――あっ!麗しのご令嬢~!」

ユリウスに睨まれながらも、マルクは飄々と言葉を紡ぐ。急いで歩いたようで、首元には汗が滴っていたが――それをものともせず、ナタリーに手を振ってきて。

「マルク様も…いらしたのですね」

「うん~!ご令嬢の家の山…すごく、歩きがいがあって…鍛えられましたっ!」

「そ、そうですか」

マルクの聲によって、ようやっと…ナタリーも。ユリウスがこの場にいることに、理解が追い付いてきた。そして、ナタリーに対して聲をかけたマルクを…エドワードは鋭い瞳で抜き。

し目を見開いて。

「おや…副団長殿……」

「…殿下。熱い視線、ありがとうございますっ」

「いや、貴殿は…」

「あっ!そうそう!漆黒の騎士団が、どうしてここにいるかってことですよね?」

「あ、ああ」

なにやら、言葉をごまかすような態度だったが。マルクのそんな態度を、エドワードは気にしていないようで。むしろ、楽し気に…ふふっと笑っていた。

そしてマルクが。本題にり――ここに赴いた理由を話し始める。彼が言うには…。

ユリウスの母親が、ファングレーから除名され。隠居していたにも関わらず。隠居先から忽然として、姿が消えてしまった事件を追って。ここまでやってきた…ということだった。

ナタリーにとっては、元義母にあたるあの人が。どうして――それよりも、除名されたとは。

聞きたいにも、聞く理由がなく。伺うように、マルクを見つめていたら…急に。「うっ、ご令嬢の麗しい上目遣いがっ、俺の心臓に…っ」と、よく分からないことを話し。

ユリウスが…すかさず肘をマルクのれ。「ぐふっ」と言葉が詰まっている様子が分かった。そして、マルクは息を整えて。

「そのまあ、ユリウスの母上は、他國で暮らしていたところ…」

「え、ええ」

「急に行方不明になりまして。その消息を追ったら…まあ不思議!魔力の痕跡が…ご令嬢の領地。ここから出ていると、分かったんですよ!」

マルクの話した容に。ナタリーは大きく目を見開き。宰相の一件もそうだが、普段では起きない“奇妙さ”が生まれているとじた。

軽薄な聲を出すマルクが話すには。魔力の検知を用いて、痕跡を辿るように向かったら。ここに到著した…とのことだった。

「ユリウスの母上から事を聞くべく…漆黒の騎士団が來たってわけです」

「俺は、來なくていいって言ったんだが…」

「もうもうっ!本當は來てほしいって思ってたくせにっ!戦爭も収まったから、騎士団で、暇を持て余してるやつらが多いってことも…知ってるくせにぃ~!」

「………」

マルクに執拗に絡まれ…ユリウスが無言で耐えている姿が見えた。確かに、マルクの言う通り。エドワードが率いる小隊と、同數程の団員がいることが分かった。

おそらく、戦爭の時に見た多くの他の団員は。同盟國で警備などに勤しんでいるのかもしれない。

「なるほど…事態は把握しました」

「聞いてくださり…謝します」

主に、ユリウスの謝は…。マルクの愉快な喋りに、ということなのかもしれない。

真面目な顔つきを崩さないユリウスに対して。エドワードは、おもむろに口を開いた。

「…むしろ、好都合だと思いまして」

エドワードは、マルクからけた説明をもとに。自國の騎士たちでは、到著に遅れが生じ。このままだと機會を逸してしまうかもしれないこと。そして、今いる人員であれば。

ほぼ安全に、跡の中へ行っても問題がないだろうと述べ。漆黒の騎士団――主に、ユリウスを見て。

「魔力反応が、この…の先、地下に多くあると分かりました。おそらく、貴殿らの探し人がいる可能が高いと思います」

「……確かに」

「そこで、提案なのですが。ここから先、共に來てくれませんか?漆黒の騎士団なら…これほどに、心強いものはないので」

エドワードから提案をけたユリウスは…し思案したのち。

「…こちらとしても、魔法の才がある殿下がいるのなら。助かります。この先、共にいきましょう」

ユリウスはそう、エドワードに返事をすれば。他の団員たちに向かって、「団員に告ぐ、今から殿下に続いて…この先を進む」と言葉をかけていた。

一方、ユリウスの対応に満足を示したエドワードは。これなら、大丈夫と…自の騎士たちに。出発の準備を行うように命じていた。

「ああ、加えて――ペティグリューの二人も、來てくれるので…支えでもありながら。護衛も念頭にれていただけたら」

「……っ!」

ユリウスは、ナタリーも共に向かうとは思ってなかったようで。眉間に力をれて、こちらを見ていた。その表からは「本當に、いいのか?」と言っているみたいで。

「ええ、私も行きます」

「そ、そうか」

「お邪魔にはなりませんので…癒しのサポート面を任せてくださいませ」

「…そう、か。頼りにしている」

ナタリーの強い意志を瞳からじ取ったのか。ユリウスは、こくりと頷き――ナタリーには聞こえない小聲で。

「怪我一つ…君には、負わせない」と言っていた。

◆◇◆

順調にへと。ペティグリュー家の跡の地下へと。そこに向かう準備が進む中。

「ナ、ナタリーの周りに、父さんが要チェックしている男ばかり…だ、と!?」

まだ現実に戻りきっていないお父様の…悲痛な獨り言が。そんな時に、出ていたのだとか。

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