《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》46

「おや…大きな石が道のを覆ってしまったようですね…」

エドワードは、その塊に対して。冷靜に淡々と、呟いた。そして、一方のユリウスは。

「だ、大丈夫か…っ?」

ナタリーのの安否を確認するべく。エドワードに抱きかかえられているナタリーのもとへ、駆け寄ってきた。

「え、ええ。エドワード様のおかげで…」

「そうか…よかった…」

近くで、怪我の有無を確認したのち。ナタリーに傷一つないことが、わかり…ホッと安心した表をしながらも。空いている手で、グッと握りこぶしを作っていた。

(どうしたのかしら…?)

こぶしを作る理由を聞こうと、口を開こうとした。そんな時。

「おーい!大丈夫か…っ!」

「ナッ、ナタリィ~!」

石の塊が覆いつくせなかった…ごくわずかな隙間から。後続の人たちの聲――とりわけ、マルクとお父様の聲が聞こえてきた。

「やっときたようですね?」

エドワードが、ゆったりした足取りで。石のもとへ歩く。そして、ナタリーをお姫様抱っこで抱えながら。

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「あ、あの…エドワード様、おろし――」

「こちらは、どうにか無事だ」

「そのお聲は、殿下…!うちのナタリーは…」

「あっ!お父様、私も無事ですっ!」

エドワードに下ろしてと、催促をするつもりが。機を逃し、変わらず抱えられたまま…話すことになった。

ナタリーの聲を聞いたお父様は、嬉しそうに。「よかった…無事で」と言っていることがわかる。

「どうやら、石の柱が脆くなっていたようだ。それで、ここに落ちてね…」

「うへ~。そんなことが…」

「だが、魔法で吹き飛ばせば…壊せるだろうから」

エドワードは、石の塊越し――後続の面々に。魔法を使うから、し離れておいて…と話し。ナタリーと共に、石から距離をとって。

彼が自の靴を地面にコツコツと、音を鳴らしながら。叩けば――。

ドカンッ…そう、大きな音が石の方から聞こえ。見てみると、そこには。

「…え?」

「ふぅん?」

ナタリーとエドワードの疑問の聲があがる。なぜなら、確かに発は起きたのに。

石の塊が全く壊れていなかったからだ。

「だいぶ、いようだね?」

「え、ええ」

予想を覆した結果に、呆然とする中。傍から見ていたユリウスが「俺が斬ろう…」と、しまっていた剣を再び取り出し。目の前の頑丈な石に、一太刀を浴びせる。

ガキンッと確かに、鋭い音は鳴った…が。

「……斬れない、か」

ユリウスの斬撃をもってしても、その石が壊れることがなかった。石の向こう側にいる、聲が再び聞こえてきて。

「ちょっと、ちょっと~かなり、大きな音が鳴ったけど…この石、全然壊れてないよ…?」

「そうみたいだね…ふふっ」

「すまない…」

「えっ、殿下と…ユリウスも試したのっ!?」

マルクは、それなのに壊れないなんて――ありえないとばかりに。聲を上げていて、「ど、どうすれば…?」と困らしていた。

「どうやら、この石…魔法が効かないみたいだね?」

「そ、そうなのです…か?」

「うん…公爵も、魔法無しで切り伏せることは難しそうだから…どうしようねえ」

エドワードが間近で、楽しそうにしていた。どうやら、この石に興味がわいたようで。「ペティグリューの跡は、面白いものがあるんだね」と明るい聲だった。

そんなエドワードに…石の向こう側から聲がかかる。

「……殿下。おそらく、先に通路が見えますか?」

「ん?あ、ああ、見えるよ」

この事態に、黙っていたお父様が尋ねてきて。エドワードの答えに…「うーん」と聲を出しながら。

「今、我々がいる場所は…おそらく、跡の――り口の真下です」

「…なるほど」

「ですので…先に行けば…。私は見たことがないのですが、建で地下空間があるなら…外に通じる階段などが、あるやもしれません」

「ふむ…」

エドワードは何かを思案しているのか。考え込んでいて。「このまま、とどまっていても…宰相が來ないとは限らないが…」と言い。続けて。

「だが、行くのも――何が待ちけているのか…危険なことには違いないね…」

「……」

悩むエドワードに、なにも言葉をかけることができない。どちらにせよ、危険がある選択に間違いはないのだ。

「…うーん。僕は先に進む方が、良い選択だと思うのだけど…公爵はどうお考えで?」

「……俺は」

エドワードに話を振られ。ユリウスは、視線を合わせて…し考えたのち。

「俺も、先に進む方がいいと考え…ます」

「ふぅん?」

「もちろん進む危険はあった…が。崩れやすいここにいるよりも。地盤が安定している所に、行った方がより安全だ…と」

ユリウスは、「そう考えております」と答えた。確かに、先ほどの奇妙なが出したによってところどころ…脆くなっている部分があった。

「確かに、そうですね。公爵とも意見が一致しましたから…我々は、先に進みましょうか」

エドワードは、後続に聞こえる聲量で。エドワード、ユリウス、ナタリー…そして“影”の面々で進むことを伝える。そんな話を聞いているうちにナタリーは、ふと疑問を抱いた。

――あれ…?そういえば。あの石は、魔法で壊れないのだとしたら…。敵が出していたはいったいどんなエネルギーが…?

「ふふっ、難しい顔をしているね?」

「あ、えっ?」

「そう、この石…僕の得意な魔法まで。外に出るのを邪魔してくるみたいでね…」

そして彼は眉をハの字に下げて。困ったように。「石が外とここを…障壁みたいに隔ててーー地面になければ大丈夫だったのかな?」と言った。

「でも、石を越えなければ…魔法は使えるみたいだから」

そう、エドワードはナタリーを勵ますように笑いかけた。

そして、その言葉を聞いた瞬間。ナタリーは、ハッと気が付く。エドワードの得意な魔法…瞬間移が使えないということは。逃げるにも逃げられない狀況になっていたのだ、と。

「あんなに大口を叩いて、君を逃がすといったのに、ね。ごめんね…」

「い、いえっ!魔法が通じない石があるなんて…誰も予想できませんでしたから」

「ふふ、そう言ってくれると助かるよ…」

エドワードの瞬間移魔法が石を越えて、使えないことを――おそらく、あの石を壊す魔法の時。ユリウスをはじめとして。マルクやお父様は、気づいたのかもしれない。

だから、進むか留まるかの話をし。結果、進むことになったのだ。

「…かといって、こちらも甘んじて待つだけはせず――どうにか、合流できるよう…他の道も考えてみます」

「ああ、よろしくね」

「ナ、ナタリ~ッ!父さん、必ず助けにいくからな…!」

「お、お父様、あまり無理はせず…」

ナタリーの聲が聞こえてなかったのか。お父様は、「うおおおお~!」とやる気を出して…おそらく外に向かって走っていったのだろう。

マルクが、「ま、待って~!」とお父様を追いかけていったようだ。

そうして後続の人員が、外へと足を向け――気配が消えたころ。エドワードとユリウスが率いる先陣もき出そうとした。その時。

「…殿下」

「なんでしょうか?」

「俺が、ご令嬢を抱えましょう」

「へえ?心配でもしてくれたのかな?」

ユリウスが、エドワードに話しかける。その言葉に、ナタリーはまだ自分がエドワードに抱えられている狀況を思い出して。カーッと顔に熱が集まってくる…もちろん、ずっと抱えられてることへの恥心で。

(閣下も、いったい何を言ってるのかしら)

抱きかかえられなくとも、しっかり歩けるのに。そう思って、言葉を出そうとしたら。

「ナタリーは、羽のように軽いから…ずっと僕が運ぼうと思っているんだ」

「ほぅ?…お言葉ですが、殿下の幹では。ご無理なさらない方がいいかと。俺は、日ごろから鍛えておりますので…」

「……へぇ?」

なぜかナタリーを抱っこするのに、火花が散っている。そんな狀況になってしまっていて。自分を抱えたところで、何も利益なんて生まれないのに。この二人はいったい、どうしてしまったのだろうか。

どんどん顔に熱が集まっていき――。

「私はっ!一人で歩けますからっ!下ろしてください!」

ナタリーは、強い意志をもって。そう宣言した。

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