《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》51
あわてんぼうなミーナの案で。嬉しそうなお母様と共に…屋敷の玄関へと向かう。すると、そこには。いつぞやに見た禮服姿の使者様がいて。
「お待たせいたしました」
「いえ、お越しくださりありがとうございます」
恭しく挨拶をわせば。使者は早速といった形で、所持していた巻を手に取り。話し始め…たのだが。
「コホンッ。此度は…」
「…は、はい」
お母様と共に。使者の口元を凝視する。何を言うのか構えれば。どこかもごもごと口を濁している様子なのが分かった。
「え、えっと。使者様?」
「はい」
「お父様に用があったのでしょうか?」
お母様とナタリーには言えないから、話せないのではと思い。そう切り出せば。使者は首を振り、「いや、違うんだ」と言ってくる。
(“違うんだ”…?)
急にフランクな喋り方になった…そう、じるのと同時に。
「いや…やっぱり。だますのは、良くないよね」
「え?」
使者が指をパチンと鳴らした、その瞬間。彼の周りに、風が吹きこみ。あまりの風力に、周りにいた全員が、思わず目を閉じてしまう。
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そして再び目を開ければ。
「まあ!まあ!」
「ふふ、ごきげんよう」
「エ、エドワード様…!」
お母様が、明るい悲鳴を上げる中。使者だと思っていた男の姿形が変貌し。そこに立っていたのは、エドワード本人だったのだ。服裝すらも、彼がいつも著ている…王族の服で。
「ふふっ。驚いたかい?早く、ナタリーに會いたくて…來てしまったよ」
「まあ~ナタリー。いいじゃない…」
「お、お母様…」
娘よりも、顔を赤く火照らせ…喜ぶお母様。しかしナタリーとしては、エドワードが直々に來なければならないのかと。用件の重要さに、気をとられていて。
「ナタリーの母上のように…君も、もっと照れてくれた方が…僕も嬉しいんだけどね」
「きゃ~!母上!だなんてっ!」
お母様との使用人たちが、歓喜の聲を出す。エドワードの発言に、彼の真意はいったいどこにあるのか分からないものの。「ご、ご冗談を…ほ、ほほほ」と、軽く流すことにした。
「冗談じゃないのだけれど…まあ、ナタリーとしては。きっと本題の方が気になるだろうからね…」
「……ほ、ほほ」
姿勢を直したエドワードは。ナタリーに向き合ったかと思うと。口をおもむろに開いて。
「早速だけど…僕と共に。王城へ來てほしいんだ」
「……へ?」
「まあ…!」
彼は、ウィンクをしながら。ナタリーにそう言ってきて。また、ナタリーにゆっくりと近づきながら。
「ど、どういうこと…」
「ふふっ、もちろん。私的に呼びたいということもあるのだけど…」
ナタリーは、近づいてくるエドワードに。張してしまい…が固まってしまう。そんな様子のナタリーにますます笑みを深くするエドワードは。さらに、ナタリーの近く…耳元に口を近づけたかと思うと。
「跡で宰相と出會った當人たちで…報を共有したくて、ね」
「…っ!そ、それは」
ナタリーがハッとしたように、エドワードの顔を見れば。彼はまるで緒話をするように…人差し指を口元に近づけて。シーっと言っている。
(宰相について…経緯が分かったってことかしら)
おそらく、宰相に関して恐怖を広めたくないのか。新聞に載るのも、彼の表立った報のみだ。跡で口にしていた「実験」や「魔法の才」などは詳しく報道されていないのが現狀で。
ナタリーは、神妙な顔つきになって。「お、お役に立てるのであれば…!」と言った。きっと王城で集めている報の方が、なのだろうけど。
それでも、宰相に関する報提供や元義母について話せるのかもしれないと意気込んだ。そして、ナタリーがそう返事をすれば。エドワードは嬉しそうにほほ笑んで。
「そうか、ありがとう」
「え、ええ!」
「なら、善は急げ…だね」
「え、ええ…?」
彼の言葉の意味が分からなくなり。そう聞き返せば。
「ちょうど…今日、會合の場を用意したんだ」
「…へ?」
「ナタリーの母上、彼を城へ連れて行っても…よろしいでしょうか?」
「まあぁ!やだ~!もちろんですわっ!」
「……へっ?」
ナタリーの知らないところで。話が素早くまとまっている気がする。あれ?あれ?と、気にしていれば。エドワードが、「お母上から、許可もいただいたことだし。行こうか…ナタリー」と手を差しべてくる。
「えっ、お、お母様?」
「ナタリー、いってらっしゃい。お父様にはうまく、言っておきますから!」
「え、ええ?」
「ふふっ、ちゃんと夕方までには…お送りしますので」
「あらぁ!」
宰相に関しての會合は必要だ。確かに、必要なのだけど。この現狀、お母様に誤解されていないだろうか。そう思いつつも。エドワードに「ほら」と催促されて、手を重ねることになれば。
お母様に送られる形で。何度も験した視界の歪みと共に。ナタリーは目をつむることになった。
◆◇◆
視界が歪んで、浮遊をじたのち。
まだ足が地面に著かない覚があった。なんだか、瞬間移の時間が長いような…と思っていれば。
「もう、著いたよ。ナタリー」
「え…?」
驚いてパチッと目を開けば。確かに、そこは王城の応接間にいて。
(あら?エドワード様が近いような…)
「殿下は…無禮という言葉を、ご存知ないのでしょうか?」
「ふぅん?」
「えっ!」
橫から、覚えのある――低い聲が聞こえてきて。思わず、視線をやれば。そこには、黒い裝いをしたユリウスが立っていたのだ。
「ナタリーが勢を崩しそうだったので…咄嗟に、支えたのは…普通のことだと思いますがね。心外な言い方ですね?」
「……その割には、下心が隠せていないように見えますが」
「……言いますね?」
バチバチと二人の視線の間で。火花が散っているこの景は…。と思い自分の狀況を確認してみれば。
「エ、エドワード様っ!」
「ふふっ、どうしたんだい?」
そこで気が付いたのだ。ナタリーの今の姿勢が…エドワードにぴったりと寄り添うような姿勢であること。そしてエドワードの片腕が、ナタリーの腰を支えてくれるようにあって。
いつもは魔法を使っている彼が。思いもよらぬほどに、逞しい腕であったことにも気づくほどで。なにより、そのせいで――ナタリーのが、エドワードに重がかかる形で…浮いてしまっている狀況に。やっとナタリーの理解は追いついたのだ。
「も、もう一人で立てますからっ。その、お気遣いは謝しますわっ」
「…ん?もう、いいのかい?」
「………」
ナタリーが焦ったように、解放を願えば。すんなり手をゆっくりと放してくれて。その後、エドワードは冗談めかして…ユリウスに言葉を放った。
「ふっ、漆黒の騎士殿。目が怖いですよ?」
そうなのかと。ナタリーは、彼の顔を窺えば…いつも通りの、真顔なユリウスがいるだけで。
(怖いかしら…?)
エドワードは、いったい何を言ったのかと視線を向ければ。おかしそうに笑っていて。「用なものだ」となぜか賞賛していた。
「まあ、これで揃ったから…始めるとしようか」
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