《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》63
「ねえ、宰相様…ユリウスのを治す…薬は――」
「ええ、もうすぐ…できそうですよぉ。だから、奧様の心配には及びません」
安心させるように言葉を吐き、目の前のテーブルに手をばしたかと思うと。酒瓶を手に持ち――元義母のグラスへと注ぐ。彼は、その様子に満足しているようで…そのまま、グラスを手に持ち。
中を飲み干していく。
「ああ、そういえば、奧様…ご子息の薬もそうなのですが…奧様の健康にも。この薬はいかがでしょうかぁ?」
「あら…あたくしのくすり?」
「ええ、ええ。の張などをほぐしてくれる…畫期的な薬なのですよぉ」
「まぁ…」
彼らの話が、盛り上がりを見せ終わった頃。元義母が「ユリウスが魔力暴走をしないで済む…化けにならずに済むことが知れて――良かったですわぁ…謝します」と口に出した。
「いえいえ、お力になれたのであれば…幸いですよぉ」
「宰相様は、謙虛な方ねぇ…いつも通り、ご支援を…執事から送りますので…」
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「ありがとうございます」
そうして不敵に笑いあった彼らは、元義母の案のもと。裏の出口から消えていくのであった。
(――そんな…こんなおかしなことが、公爵家で…?しかも、魔力暴走って――)
ハッと脳裏によぎった言葉を証明するように。元義母と宰相がいなくなった瞬間、ぱちりと見えるものが切り替わった。そこに映っているのは、ベッドで寢ているユリウスで。
「か…っか…」
ナタリーの口が無意識にユリウスを呼び掛けてしまう。それほどに、目に映る彼の姿は――悲慘だった。
ベッドで寢ているユリウスは、きながらも。何かにおさえるように…自の腕へ爪を立てている様子が分かった。そして、苦しむユリウスの枕元にも…はっきりと青白い人間たち――ファングレー家の先祖が立っていた。
彼らは口々に、「化け」、「発」、「終わり」と呟き。ユリウスが、その言葉を振り払うように…そして耐えるように。自のに負荷をかけることで、意識を保っているようだったのだ。
「あまりにも…これは…」
「かっか…閣下…っ」
「……むごい、な」
エドワードが言葉をらし。ナタリーもまた、言わずとも酷い狀況に…を乗り出して近づこうとした…まさにその時だった。
「おや、おやぁ…まったく、すごい音がしたと思ったら…観劇をしていらしたんですねぇ」
久方ぶりに聞く――粘著質な聲が背後から聞こえたのと同時に。目の前の景も、まるでストップがかけられたように…パッと消えてしまって。
ナタリーはすぐさま、聲のした方へ顔を向けた。するとそこには、予想通り――。
「先ほどぶり…ですかな?…おや、そんな怖い顔をしないでくださいよぉ」
おどけて話かけてくる宰相が、そこにいたのであった。
◆◇◆
「まったく、公爵家はすごいですよねぇ…死してなお、魔力が多いあまりに霊としても存在し続けるなんて…おそろしいですねえ」
「……お前と談笑なんてする暇などないんだがね」
「はあ…やはり、第二王子はせっかちで嫌ですねえ。そうは言いながらも、霊たちが見せたものに目を奪われたのでしょう…?時も忘れて」
宰相は心を見かすように、ナタリーとエドワードにニヤリと笑いかけた。居心地が悪いのか…エドワードは鋭く宰相を睨みつけている。
「あれは…」
「おや、ご令嬢も見て思うことが…?私も初めて見た時は、驚きましたからねえ。わかりますよ…お気持ち」
「あれは、あなたが…あなたの先祖がしたことは…まことなのですか…?」
「ふ…本當にただの演劇をしているだけなら、良かったんですがねえ」
ナタリーの疑問へ、ひどく拍子抜けした表を浮かべながら。
「すべて本當のことですよ…私が聞き及んでいるものも…わざわざ、霊たちは映してくれるようで」
そう、宰相は答えた。そして。
「ファングレーという家は、だいぶ特殊でしてね。父親の魔力ほとんどが子に伝わるんですよ…しかも魔力を使用すればするほど、耗もしてしまって…。だから可哀そうに、子が耐えられる容なら大丈夫ですが。無理になれば…」
「…魔力が暴走する、のですか?」
「ええ、ええ。まさしく。そんな時に王家打倒を掲げる…私の家が目をつけましてね。力にもなるし…研究しがいもありますからねえ」
謎を解明するのが、そこまで楽しいのか。彼は、誰かに聞いてくれと言わんばかりに…気に喋りだす。
「本當に、研究のし甲斐がありましてね。彼らの質を改善する方法は全くなく…まあ興味もありませんから…いえ、それよりも彼らね。なんと…伝する時にし魔力をこぼすんですよ」
「こぼ…す?」
「そうっ!まあ完璧にまるっと伝なんて、普通の人間でも無理ですからね…當たり前ではありますが…ただこぼれた魔力は、あの屋敷にずっと殘っていたようで…」
「え……」
そこまで言うと宰相は、を震わせながら。「本當に幽霊みたいでしょう?しかも、あの映像のように…子孫の枕もとにまでやってくるんですから…おそろしいですねえ」と。
「まあ、そこを初めて発見したのが、私の一族なのでね…!すごいでしょう!稱えられてしかるべきですよね…本當に」
「戯言を…」
「おや?信じたくありませんか?…しょうがありませんね、公爵家にあった王族の手紙をあげますから…お読みになればいい」
「な…」
敵意むき出しのエドワードに対して、宰相は懐から紙を取り出すと。彼に向って放り投げる――その紙に構え、視線を向ければ。確かに、紙の側に唯一無二の王家の紋章が描かれていて。
その紋章を目にしたエドワードは、さっとその紙を拾い上げ読み始める様子がわかった。読み進めるエドワードの姿に、宰相はにんまりと気を良くして。
「私、ウソはつきませんので。ゆっくり読んでくださいねえ」
「どうして…」
「ん?」
「才をお持ちなのに、どうしてまだ復讐なんて…」
ナタリーがそういえば。宰相は、その言葉を鼻で笑い――その後。
「ペティグリューはいつもそうだ…何も、悪いことが起きない」
「え?」
「あなた方が、畫期的な発明を公表しようとしていたこと…私の先祖も知っていましたよ?」
宰相はナタリーに対して暗くよどんだ聲を出すと。
「なのに…同じく発明を先に世に出した――私たちが弾圧されるのを見て。手のひらを返して闇の中へ、地下跡に隠してしまうなんて」
「そ、それは」
「別に、これに関して復讐どうこうはありませんが…不平等ですよね?私たちは沒落し、憂き目にあって。あなた方はのうのうと…」
そして怒りを込めるように、ナタリーを睨み。
「八つ當たりをしたっていいと…思いませんか?」
「…え」
「良かったじゃないですか、私たちという実験臺を経て。あなた方は、無茶せずに済んだ…そして、今となれば…あなた方が隠した発明を有効活用してあげている」
(彼は…何を言っているの?)
ナタリーは宰相の言い分に絶句した。だって、あんまりにも理不盡な理由で。
「ああ、言い忘れていましたが…この提供された実験場で発見だけに終わっておりませんからね?」
「なにを…」
「先ほど言った…公爵家のこぼれた魔力を集める発明をしまして…!」
嬉しそうにはしゃぐ宰相は。じゃじゃーんと言わんばかりに、小さな箱を取り出し…こちらに見せてくる。
「何世代にもわたる魔力を別室で出していましてね…もうすぐ終わりそうなんです」
兇悪な笑みを浮かべた宰相は続けて。
「簡易的な魔力暴走裝置を…あの國に落としたら…どうなるんでしょうねえ?」
(しの魔力暴走で、地面が揺れるほどの衝撃を起こしたのだから…)
ナタリーがその威力を想像し、絶した表を浮かべれば。宰相は、それに追い打ちをかけるように。
「この箱が、その裝置を発する――スイッチなんです」
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