《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》65

ナタリーの瞳は、しっかりとユリウスを視界に捉えた。またそれは、彼も同じだったようで――ナタリーのに怪我がない様子を見て。ホッと安心しているようだった。そして彼が手に持つ、鋭い剣が。

――パキンッ

大きな音を立てて、崩れ落ちた。おそらく、剣を何度も使いすぎたせいなのかもしれない。また様子を見たのは、ユリウスやナタリーだけでなく。

「く…この化けめ…っ!よくもっ、よくもっ!」

「……っ!」

衝撃で吹き飛ばされていた宰相が、を起こし。ユリウスに対して、憎しみを込めた視線を投げていた。その聲に、ユリウスは構え――剣がないながらも。宰相を捕らえようとするが…宰相がそれよりも素早く。

懐にしまっていた箱を取り出し、そのままスイッチを起しようとした。

まさにその時。

「ぐぅっ」

「まったく…やってくれたね」

「エ、エドワード様っ!」

ナタリーの背後から、強風が吹いたかと思えば。宰相のもとへ、瞬間移でエドワードは向かったようだった。そして、宰相の不意をつくように――彼の手元から箱を奪いあげたのだ。

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「ナタリーのおかげで、回復するのが早かったよ…ありがとう」

「いえ…お役に立てたのなら…」

石の効力が無くなり、自由に魔法が使えるようになったエドワードは。あっという間に、宰相を拘束し。ユリウスと共に、やってきたであろう“影”たちに引き渡していた。

(これで、もう…大丈夫)

その様子を見たナタリーは、張り詰めていた力が抜け。

「王都は…國は、無事なのですね…?」

「ああ、魔法で無事だと報告がきているよ」

「よか…った…」

エドワードからそう伝えられ、ずっと気力だけで支えていたが地面へと倒れこもうとする――その前。

「ご令嬢…君は、よくやった」

「かっか」

ふわりとナタリーのを両腕で、け止める力をじる。魔力の使い過ぎで、貧が起きているせいか…思うようにかせなくなっていた。しかし、側にいるユリウスの存在に気が付き…彼を見れば。

(ボロボロだわ…)

剣舞祭で會った時よりも、服も顔も…なによりところどころ怪我をしていて。

「魔力の使い過ぎで、疲れが出ているようだな…しっかり休めば、治るだろう。君に怪我がなくて…本當に…」

「か……っか?」

ナタリーはそっと地面に下ろされた…それと同時に、ユリウスの聲がか細くなっているようにじる。目はかろうじて開けてられるが、休息を求めるが――ナタリーの意識を薄めてくる中。

それは突然に起きた。

「よか…った…ぐっ…ぁ」

「公爵っ!?どうしたんだい!?」

(待って…いったい何が――…)

エドワードの焦った聲が響く。それと同時に、ナタリーの近くでどさっと…誰かが倒れた音がした。確認して助けてあげたいのに、力がらない。思うように、くことができない。

「おいっ!救護班はまだかっ!急いで伝令を――」

大聲で、エドワードの指示が飛ぶ。

「暴走が始まってしまうだなんて…僕は…」

(暴走――…?ま…って、閣下を…たすけ…まだ、はなしも…)

エドワードが口にした言葉が、耳にり。自分のくよう指示を送っているのに、それに反してどんどん視界がぼやけていく。したいことがたくさんあるのに――そんなナタリーの意志を自は聞いてくれず。

(か…っか…)

――ぷつりと。

ナタリーは目を閉じ、意識を飛ばしてしまうのだった。

◆◇◆

――パチ。

ナタリーが再びまぶたを開ければ。

(見慣れた――裝…私の部屋)

良く知っているカーテンや家が見えてきて。それと同時に――…。

気を失い、たくさん寢たためか。すこぶるが軽い。ためしに片手をあげてみれば…グーパーグーパーと力をれることもできる。そんな確認をしていると。

「お、お嬢様ぁぁああ!」

「ミー、ナ?」

「お目覚めになられたのですね…!急いで旦那様と奧様を…っ!」

そう聲が聞こえたかと思えば。バタバタと大きな足音と共に、「旦那様―!奧様―!お嬢様がっ!」と大聲が響き渡っていた。その數秒後。すぐさま、両親とミーナが駆け寄ってきて…涙を流しながら。

「ナタリー!よかったぁ…よかったぁぁぁ」

「本當に、本當に…良かったわっ…」

両親の表を見て、やっと家に戻ってきた実がわいた。そして、だんだんと意識もはっきりしてきて。

「私――…あれから…」

そう、疑問を口に出せば。

「フランツ様がいらっしゃって、診てくださったわ…短期的な魔力不足だったそうよ。でも休めば治るっておしゃってたから…本當によかったわ!」

「フランツ様が…」

「ええ、あらやだ!話すのに集中してしまって――しっかりと話すためにも、食事をとらなきゃいけないわね」

「お母様――…」

「ふふ、もうまる二日も寢ていたんだから。や魔力は休まっても、お腹が空いているでしょう?」

目元に涙を浮かべながらも、お母様は「胃に優しいものを持ってきてちょうだい!」と使用人に命じる。そしてお父様は、ナタリーの意識が戻ったことでいっぱいなのか。

ベッドの側で、およおよと涙を流すばかりだったのであった。

◆◇◆

らかく煮込んだ野菜スープを食べ、一息ついたあと。

ナタリーは側にいる、両親に向き直り。拉致された騒の顛末を聞けば――。

「元宰相殿は、殿下によって捕縛され…今度こそ逃亡が無いように、と。事を一通り聞いたのち、公爵様のお母上と共に――すぐに刑が執行されたとのことだ」

「そう、なのですね」

「何かしらの事があったにしろ…彼の行いは罰されて當然だわ」

両親がナタリーの側で、知っている事実を教えてくれた。宰相には思うところがあるものの――やはり、彼が行ったことは人道の道を外れすぎている。そして、元義母の話も出たので。

「そ、そういえば、閣下は…ご無事でしょうか…?私、あの時に助けられましたの…ぜひお禮を…」

「こ、公爵様か…」

「まあ…」

ユリウスの話題を出した途端。両親がなにやら気まずそうに、二人で視線を合わせ――頷いている。

(…え?お父様?お母様?)

「い、いやぁ…そんなことがあったのだな…父さんもお禮を言わねば、ならんな」

「お父様も一緒に來てくださるのですね!それで…閣下は…」

「えっ、あ~、公爵様は、そのな…」

なにやら、お父様は口をもごもごとさせたあと。口早に。

「いやあ、元宰相様の一件で王家側がな…こう…疲れを癒すためにも好待遇で、城の滯在をすすめているようでな」

「まあ…そうでしたのね」

「ああ、そりゃあ…今回の件は、公爵様の功績が大きいからな…今頃、豪華な食事とか…娯楽とか…癒しとかのもてなしをけているのかもしれないな…」

「まあ!そうでしたのね!」

お父様からそう言われ、ナタリーはしの違和を覚えつつも。ユリウスにとって、良い処遇が行われているのなら――それに越したことはないと思ったのだ。

「それなら、王城に行けば…閣下に會えますのね…!」

「えっ、あっ…そ、そうだな…」

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