《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》67

「そん、な――」

「真実をすぐに言わなかったのは、本當に悪かった。しかし、公爵様の魔力は國を滅ぼしてしまうほどのものだ。ナタリーも、宰相様の一件でみたのだろう?」

「それは……そう、ですが、そうだとしてもっ!」

「そんな魔力に近づくのは、危険だ――思いは分かるが……、ナタリーを危険な目に遭わせることを、父さんは、許可できない」

聞こえてきた言葉には、お父様の気持ちが吐されていた。切羽詰まるように、一言一句話していて――ナタリーを思いやる気持ちがひしひしと伝わってきたのだ。

しかし、ナタリーは……それで素直に引き下がる――なんてできない。

(地下墓地に囚われた私を、なにより剣舞祭で助けてくれた時も、魔力をたくさん使っていたわ。閣下は――閣下自を犠牲にしていたというのに、私が、私だけが見ないふりなんて)

頭によぎるのは、いつだってナタリーを助けてくれたユリウスの姿だ。もちろん、昔は冷たい眼差しだってあったが――今の彼は、ずっと自分を、家族を助けてくれて。溫かい彼の心を、よく知っているのだ。

Advertisement

「それなら、お父様の許可はいりませんわ!私が、一人で――」

「ナタリー……。誰か!來てくれないか!」

「は、はいっ…旦那様、いかがなさいましたか?」

「お父様…?」

ナタリーが言葉を言い切る前に、お父様は大きな聲を出し。執事や使用人たちを呼びつけ――。

「ナタリーを自室へ連れていきなさい」

「え?」

「そこから、何人たりとも……ナタリーを出すことは許さない。いいか、これはペティグリュー家當主としての命令だ」

「お父様……っ!?」

そして、周りの使用人たちが一瞬――お父様の雰囲気に驚いたものの。「當主としての命令」の容を聞き、即座にナタリーを拘束するようにき始める。

ナタリーの抵抗も空しく、すぐさまつかまってしまい。お父様の部屋から連れ出される直前。

「……ナタリー、頼むから、父さんの言うことを聞いてくれ。そして頭を冷やすように」

「お父様っ!お父様っ!」

ナタリーは必死に、お父様を呼び掛けていたが――その聲は屆かず。

そんな中。ミーナだけが、お父様とナタリーの間で、行ったり來たりをし、おろおろと戸っているのであった。

◆◇◆

使用人に丁重ながらもこうそくされ、自室へと閉じ込められてしまった。ナタリーが、中にり切れば。外からは、鍵をかける音が響いて――ナタリーがドアノブを回そうとしても。

「あか、ないわ……」

ナタリーの力ではうんともすんとも言わない扉があるだけで。よろよろとその場にへたり込んでしまった。

(やっぱり、もう……閣下とは、會えないの……?)

彼は魔力暴走のこと、ファングレー家の事を、どうして何も言わなかったのだろうか。もちろん、今のナタリーとユリウスは夫婦ではなく……赤の他人で。なんなら前世では、酷いことを言われ…憎しみを抱いていたのだ。

ユリウスがナタリーに事を言う――そしてナタリーがそれを聞く義務や義理なんてなくて。

それなのに……頭に埋め盡くすほど、反対の気持ちでいっぱいになっていく。同時に、目頭も熱くなっていって――ぽろぽろと、滴が流れていった。

どうして自分は、こんなに泣いてしまうのだろうか。ユリウスが言ってくれなかったから――それもある。でもそれ以上に、彼の優しさにれて……。

彼をもっと知りたいと思った。

あのころとは変わった彼と話をしたいと思った。

意外と、甘いのが苦手だったり、子供に微笑む彼を見て……目が離せなかった。

もう、ユリウスと話せないという現実を考えたことがなくて。自分は彼の優しさに何かを返せたのだろうか。

(返す――いえ、そんな義務じゃなくて)

ナタリーは涙が溢れてくる瞳を大きく開け。

(私――閣下と離れるのが嫌なんだわ……優しい彼ともう會えないなんて……でも、それは――)

自分の心をよくよく頭で理解をしようと思った矢先。

――コン。

軽いノック音が、目の前の扉から響き。

「可いナタリー、るわよ……あら、用心深いわね。私がったら、鍵を閉めていいわよ」

優しく、聞きなれたその聲は、間違いなくお母様で。きっとそばには、使用人もいるためか。他に向けての聲も聞こえてきて。

ナタリーがく前にガチャっと目の前の扉が開き。お母様が部屋の中にってきて、ナタリーと目が合う。すると、お母様はナタリーよりも大きく目を見開き。

「まあっ!まあ、まあまあ……っ!ナタリー、大丈夫っ!?」

「おかあ、さ、ま」

「可い顔が、涙を流していると――私も悲しくなるわ」

お母様は、ナタリーにすぐさま近づき。視線を合わせるように、しゃがみ込む。そして。

「……でも、そうした、ナタリーが泣いてしまう思いがあるのも。事実なのよね……ずっと床で座り続けるのは、に良くないわ。さあ、一回ソファに座って――」

ナタリーは相変わらず、涙が止まらぬまま。お母様にうながされる形で、自室のソファに腰かけていく。そしてお母様は、ナタリーの隣に座り――ナタリーの頭をゆっくりとでながら。

「ナタリー、いったいどんなことがあったの……私に話してくれないかしら……?」

「……っ」

「あら、あら、急すぎたかしらね」

「い、いえ……」

「ふふっ、言いたいことを言うのも大切だし……あくまで私の獨り言だけど。お父様にはのお話とかもステキよね……?」

お母様は、ナタリーの目元にハンカチを優しくあて。溢れて流れる滴を、拭いながら――チャーミングにウィンクをする。その笑みは、ずっと不安で埋め盡くされていたナタリーに安心をもたらしてくれて。

「う…っうぅ。おかあさま…っ」

「はい、はい……ナタリーのことが大好きな母ですよ」

余計に涙が、止まらなくなりながらも。勢いのまま、お母様に抱き著き――お母様もそれにこたえるように。ゆっくりと背中をさすりながら、聲をかけてくれるのであった――。

お読みくださりありがとうございます!

⭐︎の評価を下さると、勵みになります。

よろしくお願いします!

    人が読んでいる<【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください