《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》69
「さて、そうしたら。今の狀況を伝えないとね」
「お母様、ありがとうございます」
「いいのよ。ただ、今は結構……迫しているようなのは確かよ。公爵様のいる――王城のお話は、伝え聞いた限りだと。人の城を制限しているそうよ」
「そ、そんな……」
王城へ人の出りを制限するのは、戦時や災害時のはずで。ナタリーはお母様の話を聞いて、ごくりとを鳴らす。
「どうやら、王族や王城に仕える者以外――貴族すらも立ち寄れないのだとか」
「……でも、その制限が続いているということは」
「そうね。まだ、王城に閣下は“生きている”可能は高いと……思うわ」
お母様は、ナタリーの肩をポンと優しく叩いて。
「きっと何か、打開できるはずよ」
「は、はい」
「いい顔になったわね。ふふ……あ、そういえば。閣下のご病気、ご質は……あのお醫者様では、治らなかったのかしら……」
ふと、お母様が疑問を口に出す。それは、ナタリーも考えていて……というより。前世では、フランツがユリウスのを治したと思っていたのだが。
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(フランツ様は長年……閣下のを診てきたのだから、何も知らないことはないはず)
ナタリーは地下墓地で、魔力暴走があることはよくわかったが。それに対して、自分の魔法で治すことができるのかはあいまいだ。
(一時的な治療はできたのだけれども――結局閣下は、再発して……)
思い浮かぶのは、ペティグリュー家の跡で見た――苦痛の表をするユリウスの顔だ。自分の知識だけでは、限界かもしれない。しかし。
黒點病のこともしかり、様々な病に通しているフランツなら。そして、ファングレー家の擔當醫としても。彼に會えば、何かがわかるかもしれないのだ。
「お母様、私。フランツ様の所へ行こうと思います」
「そう。決めたのね?」
「はい……!」
力強くお母様に返事をすれば、お母様はにこりと微笑み。
「そうしたら、家から出なければいけないわね……」
その言葉を聞き、ナタリーは暗い表になった。現在、自分はお父様から見張り――外出をじられているのだ。決めたはいいものの、そう簡単に出ることなど――。
ナタリーの考えこむ様子とは、対照的に。お母様は、すぐさま立ち上がって……ナタリーの部屋の扉を開ける。
「奧様、お話は終わりましたか?」
「ええ、ああ……そういえば、そろそろあなた代の時間じゃなかったかしら?」
「あっ、確かに……そろそろですね」
どうやら、お母様は扉の外にいる見張りの使用人と話しているようだった。
「ずっと立ちながらいるのも、辛いでしょう?」
「い、いえ……お心遣い痛みります」
「そうねえ、あら……ミーナじゃない!」
「奧様……!ミーナでございます!」
使用人の聲とは別に、聞きなれたミーナの聲が聞こえてきて。
「そろそろ、働きすぎなミーナに休暇を與えようと思ってね」
「えっ!あ、ありがとうございますっ!」
「ええ、明日はゆっくり休んでいいから……最後に、今日の……この方の見張り代のお仕事を任せてもいいかしら?」
「もちろんですっ!」
「お、奧様……っ!」
ミーナの明るい聲と、使用人の極まった聲が同時に聞こえたのち。お母様は、使用人に下がるよう命じて――再びナタリーのいる部屋にミーナと一緒に戻ってきた。
「お嬢様っ!おは大丈夫ですか…?」
「ミーナ、大丈夫よ……それよりも……」
ナタリーは、ほほ笑むお母様に、ミーナがってきた理由に疑問の視線を向ける。だって、ミーナは代わりの見張り役として――。
「奧様っ!うまくいきましたね……っ!」
「ええ、ばっちりよ!」
「え?……えっ?」
なにやら、二人の中では特に齟齬はないようで。ニコニコと笑うミーナに、お母様はウィンクをしている。一方のナタリーは、二人の顔をキョロキョロとみて。
「ふふ……ミーナには、手伝ってもらったのよ。屋敷からの出計畫ってところかしら?」
「はいっ!私、旦那様も、奧様も大好きですが……お嬢様の侍で、お嬢様のお役に立てることがなによりの誇りなんですっ!」
「ミーナ……」
「へへ、い頃からずっと一緒なのもありますけどね」
照れ笑いもったミーナは、ナタリーを嬉しそうに見つめた。そう、ミーナはペティグリュー家に仕える使用人の子どもで。い頃からずっと一緒だった。
「ふふ、いい侍をもったわね。ナタリー」
「はい……!ありがとう、ミーナ」
ナタリーがお禮をいえば、ミーナはまたさらに。嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「じゃあ、馬車を用意しているから……荷を持って裏口へ、ミーナ。案してあげてね」
「はいっ!お任せを……!」
お母様にそう言われ、荷を持っていこうとポーチに手をかけ。他に持っていくものがないか、引き出しなどもあけて確認する。
(……エドワード様からいただいた……ペンダント)
目にったのは、ずっと返しそびれていた……獅子の紋様がっているペンダント。王城のことを話していたこともあり、彼の顔が浮かび――。ポーチの中へ、無意識にれていた。
「荷を持ちましたわ」
ナタリーの聲を聞いたお母様は、こくりと頷き。ミーナに視線を向け――。
「それじゃあ、ミーナ。お願いね……屋敷の中での、お父様のことは私に任せておきなさい」
「お母様……っ」
「いい?後悔をしない気持ちを大切にしなさいね」
「はい……!」
「良い顔よ。それじゃあ、いってらっしゃい」
お母様から勵ましの言葉をけ。目をしっかりと開いて、お母様と視線を合わせた。そして。
「いってきます!」
お母様に背中を押されるように、ナタリーは部屋から廊下へと出て行った。お母様を殘して、扉が閉まったのち。
「本當に、お父様にそっくりね……ふふ」
部屋に殘されたお母様の、楽し気な聲が響いていたのだった――。
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