《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》70
ミーナの案のもと、ナタリーは部屋から廊下へ……裏口へと向かう。現在は夜更けなため、使用人の気配もあまりない。おそらく、ナタリーの自室前の見張り以外は、みな寢ているのだろう。
使用人に見つかることなく――すんなりと目的の場所へ辿り著けた。
「お嬢様、この馬車です……!」
「わかったわ!ありがとう、ミーナ」
「いえっ!その……」
ナタリーが馬車の方へ視線を向けたのち。ミーナはなにやらもごもごと、口をかす。
「その……ミーナは、お嬢様がしたいことは分かっておりませんが……それでもっ、応援しておりますっ!」
「ミーナ……」
「なにより、旦那様も……最初はああいっておりましたが、その後ずっと……考え込んだり、部屋の中を歩きまわっておられました」
「そう、なのね……」
使用人に連れられて行ったあとのことについては。お父様がどんな様子だったのか、知らなかったのだが。やはり自分のことを、心配していたのかもしれない。ミーナの言葉に、ナタリーの瞳に影が宿る。
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「でもっ!」
「え……?」
「あくまで、私の想像なのですが……旦那様がそうしていたってことは……お嬢様の行すべてを否定したいとは思っていないんじゃないかって……」
そうしたミーナの言葉にナタリーの心は救われる。ずっと、お父様を一方的に悲しませてしまったのではないかと……罪悪を持っていたのも理由なのかもしれないのだが。
(決めたと思っても、どこかでもやもやするものよね)
ナタリーのもやついた心が、ミーナの言葉で前へ……と。し明るくなった気がする。
「ミーナ、ありがとう」
「お嬢様……」
「私が帰ってきたら、久しぶりに……ケーキパーティーを一緒に開きましょう?」
「はいっ!たくさん、試食をして取り揃えておきますので……っ!」
ナタリーはミーナに笑みを向けながら、者に聲をかけて。馬車の中へと乗り込んでいく。そして馬車の窓から、顔をだして。
「いってくるわね!」
「お気をつけて……!いってらっしゃいませ……!」
ミーナは挨拶をすると深々とお辭儀をして、ナタリーの馬車が見えなくなるまで見つめ続けた。そして窓からナタリーの様子や、馬車の姿が見えなくなったのち。
ミーナの周りに、他の使用人たちがぞろぞろと近寄ってきた。
「お嬢様は、行かれたか?」
「はいっ!」
「そうか、それじゃあ、我々は旦那様を宥めるべく……頑張るか」
「そうねえ……今日は、忙しくなりそうよねえ」
「だなあ……ミーナは――今日、休みなんだっけ?」
「ええ、ですが、お嬢様のためになら休日返上しますので……っ!」
執事や使用人といった、ペティグリュー家に仕える者たちが明るく話し合う中。ミーナの言葉に、周りは「さすが、お嬢様の一番だな」と聲があがる。
「もちろんですともっ!ミーナは、できる侍なのですからっ!」
そんな自慢気なミーナの様子に、周囲は優しく微笑んでいたのだとか――。
◆◇◆
「お嬢様、ここで合ってますでしょうか?」
ナタリーを乗せた馬車は、危険な道を避けながら。スムーズにフランツがいる僻地へとたどり著くことができた。それもこれも、以前一度通ったことがある道であることと。ユリウスから教えられた道を全力で覚えた者の賜なのだろう。
馬車が止まる音とともに、聲をかけられたナタリーは窓に視線をやる。そうすると、見かけたことがある――お母様の薬のために赴いた時と全く同じ家があった。
「ええ、ここよ……しばらく、待っていてもらっても大丈夫かしら?」
「はいっ!かしこまりました」
そうして、者に聲をかけたのち。ナタリーは慣れた足取りで、馬車から降り。目の前の家へと近づく――夜更けともあって辺り一面は暗いものの。家の窓からは、明かりがれていて。中の人が起きている証拠がうかがえた。
ナタリーは、きゅっと手に力をいれてから。ドアノッカーへ手をかけ、軽い音を鳴らした。
「ごめんくださいませ、ナタリーです」
そう聲をかけると、中からドタバタと焦った音がきこえてきて。
「ほっ!ナタリー嬢なのか……っ?」
ドアの向こうから、フランツの聲が聞こえたかと思った瞬間。素早く目の前の扉は、開き。驚き目を見開くお醫者様――フランツが出迎えてくれた。
「いやぁ、珍しい時間の訪問じゃのぅ……ほっほっほ」
「夜分遅くに申し訳ございません……その……」
「いいんじゃ、ナタリー嬢のためなら年中無休で開けるからのう……まあ、中へおりなされ」
「ふふ、ありがとうございます」
フランツのお茶目な言葉に笑みをこぼしつつも、彼の案に従うように。中へとナタリーは、足を踏みれたのであった。
◆◇◆
家の中にれば、そこは相変わらず薬品の匂い。そして収納は整頓され、カーテンで仕切られている――清潔に保たれた室が見えてきた。
「ううむ……あまり、おもてなしのものがなくてのぅ……すまない」
「いえ、お気になさらずに」
そして促されるまま、フランツの対面に著席すれば。フランツもまた、椅子にこしかけて。
「ふむ……歓談をしにきたってわけでもなさそうじゃのう……」
「……ええ、そ、その」
「公爵様のこと、かのう……?」
「……っ!は、はい」
フランツが口に出した容に、の鼓が早鐘を打つ。思わず彼の顔を見れば、厳しそうな雰囲気が有って。なにより、眉間に力がっているのか――難しい表だった。
「フランツ様……閣下のこと、彼のご質のこと……ご存知なのですよね?」
「……そう、じゃな」
ナタリーから質問をけ、フランツは「ふぅ」と息をついてから。
「わしは、公爵様の“魔力暴走”について知っている」
「……っ!その、私も閣下のご質について知って――どうにかする方法がないのかと……」
「そうか……」
相変わらず、フランツは暗い表のままで。その様子に、ナタリーもまた張が増していく。その重い空気の中、フランツがゆっくりと口を開く。
「どうにかする――方法は“ある” ……んじゃが……」
「 ……っ!そうなのですね!それなら、教えてくださいませんか……っ!」
ナタリーの必死な聲に、押されてか――フランツは、をこわばらせた。
「……それが、ナタリー嬢のに悪影響――危険が起きるかもしれないと知ってもかのぅ……?」
「――え?」
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