《【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】》72
「うちの怠け者がいることに、気づいてのう……、確か騎士団の副団長をやっておったはずじゃからの。馬を扱うのは得意じゃろうて」
「え?っえ?」
「じいちゃん、いったい何を……」
マルクもナタリーも、フランツの真意が分からず。オドオドとしていれば、フランツは妙案を思い付いたとばかりに。
「ナタリー嬢、馬車の馬を一頭かしてもらって――マルクが王城まで、ひいては中まで案しましょう」
「じ、じいちゃんっ!?」
「なんじゃ、そんな驚いた顔をしよって。布団で貍寢りでもして、聞いておったんじゃろう?」
「ぎ、ぎくぅ」
「マルク様……?」
フランツの言葉に、あからさまな反応を示したマルクを見れば。申し訳なさそうに、眉を八の字にしていて。「き、聞くつもりはなかったんだけどね……その、つい。ごめんね?」と茶目っ気のある瞳で懇願してきたのだった。ナタリーも、引きながら笑いつつ「い、いえ」と返事をした。
「まあ、そうはいっても。使える奴ですからのう」
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「え、えっと?」
「馬の件は、ナタリー嬢。大丈夫ですかの?」
「え、ええそれは……もちろん」
「ふむ。マルク……」
ナタリーから、言葉を貰ったフランツは。マルクの方を向き。
「な、なに?じいちゃん」
「公爵様――ユリウス団長におぬし……何度指導してもらったことか……いいのかのう?」
「うっ」
「たしか酒場では、どこかのバカが起こした――を巡る闘をおさめてくれ」
「う、ううっ」
「最近でも――」
「あっ、あ~~~!じいちゃんに言われなくても、行くつもりだったよっ!」
いつも飄々としたマルクとは違い。祖父の前ともあってか、だいぶ取りした様子になっている。
(まさか、マルク様のおじい様だっただなんて――)
ナタリーは、意外な二人の関係を知りつつ。確かに目元や髪がよく似ているとじた。あとは――好きなところとか。
「さて、この孫も快諾してくれたようですからの」
「……ぅん」
「ナタリー嬢、準備はできたかのぅ?」
「フランツ様……」
マルクは相変わらず、フランツにぶうたれているが。明確な拒否はしないようで、ナタリーの様子を窺っている。
「ええ、もちろんですわ!……マルク様、どうぞよろしくお願いいたします」
「へっ!あ、ま、任せてよ~!」
マルクの反応に、フランツは「はあ」とため息を吐きつつも。「こやつなら、力がありますからな……心配は無用ですぞ」と太鼓判をおしていて。早速といいつつ、外へ続く扉を開き。マルクに、馬を手配するように――そして者には、ナタリーと共に軽く説明をする。
者は、「え?っえ?」とどこか理解しきれていないようだったが。主人であるナタリーの命令もあって、素直に従っていた。そして馬の準備など、もろもろが整ったのち。
「い、今だけれるけど……その、他意はっあいてっ!」
「はよせんかい……」
「うう……」
「は、はは」
ナタリーを馬に乗せる際に、マルクが手を貸してくれた。そしてナタリーを前部に、マルクがナタリーを支えるように後部で馬にまたがれば。馬も準備萬端といった様子で、嘶いていた。
「ふむ、大丈夫そうじゃの」
「ばっちりだね!」
「ああ、それと……ナタリー嬢、もう一つお願いになるんじゃが……」
「え?な、なんでしょうか?」
もうあとは走るだけになった段階で、何か不味いことでもと。心配そうな顔になれば、フランツは「ああ、そんな障害なことではないぞ」と言い。
「そのな、ここに馬車が殘るからのう……よければ、貸してほしいんじゃ」
「え?そ、それは」
「あ、ちゃんと返すからのう……どうじゃろうか?」
「いえ、そこは問題ありませんわ。確かに、ここに止まっていますと――ご迷をお掛けしますものね」
ナタリーとしても、ナタリーがいない馬車を返して。ペティグリューのみんなを心配させてしまうんじゃないかと不安があったのだ。
「迷なんてことはないのう、じゃが。貸してくれるのは助かるのう」
「ふ~~ん」
「なんじゃ?うるさい孫よ」
「なんでもないよ、そうしたら。俺たちは行こうか、ナタリー様」
「え、ええ」
何かフランツに対して思うところがあるのか。マルクがおどけた聲を出したようにも思ったのだが、すぐに話が切り替わったので。
「二人とも、気を付けていってくるのだぞ」
「はいっ!ありがとうございます!」
「もちろんっ!まかせてね」
「マ、マルク様、ありがとうございますわ!」
フランツに別れの挨拶をして、マルクからは調子のいい聲が飛んできた。ずっと暗く、差し迫った空気の中でも、二人のおかげで確かに前へと道が切り開かれたようにじた。
「では、いってまいります!」
ナタリーが聲を出せば、それに合わせてマルクが「はっ」と聲を出し馬を走らせ始める。フランツも見えなくなるまで、手を振ってくれていて。
(――閣下……!)
馬が走り出し、景が変わっていく中。逸るナタリーの気持ちがそこに確かにあった。
◆◇◆
マルクとナタリーがいなくなったのち。
者とフランツが外に取り殘されていた。一頭いなくなったとしても、馬車としては十分機能しており。者は、フランツの方を見ながら「わ、私はいったいどうすれば――」と聲を出すと。
「ほっほっほ。そんな大したことではないよ。――いるかの?」
「え?」
フランツが建のに聲をかけた様子に、思わず者は疑問の聲を上げた。誰もいないと思っていた建のから――。
「お呼びでしょうか、上皇陛下」
「あ~相変わらず堅いのう……」
「も、申し訳ございません」
「まあ、よい」
者が、「えっ」と驚いているうちに見えたのは。逞しいつきの騎士で。その騎士が、フランツに膝をついていたのだ。
「さて、者殿……」
「は、はひ……」
「セントシュバルツ城まで、お願いできるかの?」
フランツに聲をかけられた者は、自分の目の前にいる人に合點がいって頭からの気が無くなっていく。もちろん、口では「はい」というのだが。
目の前の優しいお爺ちゃんもとい――同盟國・セントシュバルツの先代の王。フランツ・セントシュバルツであるということが、者のに激震を走らせていた。
きびきびとしたきで、馬車の扉を開ける。フランツはその様子に、「ありがとう」と笑みをこぼしながら。
「――若いもんが、頑張っているからのう……この爺も――自國のことなら頑張らないと、のう」
そう楽しそうにつぶやきながら。フランツは、馬車の中へ――騎士と共に乗り込んでいったのであった。
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