《妹と兄、ぷらすあるふぁ》コーヒーカップ
今日はお兄ちゃんの様子がどこかおかしいです。いつもにましてぼーっとしています。
「あーにぃどうしたの?」
心配に思ったので聞いてみます。
「どうしたって何がだ? 妹よ」
お兄ちゃんは自分自気がついていないのでしょうか?
でも、聞き返してきた聲はやはり元気がないじです。
「あーにぃ、今日元気ないかなって思って……」
「あー……」と、お兄ちゃんは力のない聲で言った後、何か思い當たる事があるのか続けます。
「いつもあるものが無くなるとどうにも落ち著かなくてな」
「自覚すると、何かがゴッソリ持って行かれるかのような喪失がな……」そう言ってお兄ちゃんはソファの上で寢転がりました。
あたしは初め何を言っているのかわかりませんでしたが、直ぐに一つ思い出しました。
「あーにぃ、昨日コーヒーカップ割ってたよね?」
確かお兄ちゃんが昔から使っていたコーヒーカップだったはずです。
それを昨日落としてしまうのをあたしは見ていました。
その時にお兄ちゃんは、危ないからと冷靜に対応していましたが、本當は悲しかったのかもしれません。
どうにも、予想は當たっていたらしく、お兄ちゃんの表は見る間に暗くなるのがわかりました。
あたしは何を言っていいのか解りませんでしたが、何とか口を開きます。
「あーにぃ、新しいコーヒーカップ、買いに行こ?」
「そうだな……」
そう言ってお兄ちゃんは立ち上がりましたが、終始どこか元気が無さそうでした。
コーヒーカップ……割れちゃいました……
何年も使っていた奴を……
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